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 談論風発 :  「派遣村」で考えたこと 自己責任を越えた連帯を
島根大学准教授 関耕平

 昨年末から今年の年始、私は東京・霞ケ関、日比谷公園の「年越し派遣村」に参加した。役所やハローワークが休業している六日間、「派遣切り」に遭った人々が「生き抜く」場所として、年越し派遣村は開村し、そこへ五百人もの人が身を寄せ、参加ボランティアは千五百人を超えた。そこで目にしたのは、およそ先進国とは思えない「貧困の現場」だった。

 派遣村に着くと民放テレビのディレクターに「身の上話を聞かせてほしい」と声を掛けられた。慌てて「ボランティアで来た」と返す。無精ひげもそのままの普段のだらしない私の姿を知る人ならば、思わず噴き出してしまうであろうこのエピソードも、事態の深刻さを物語っている。つまり、年末年始を野宿に近い状態で過ごさざるを得ない、派遣切りに遭った人々は、ボランティアの私よりもこぎれいな格好をした「普通の若い人」である。「普通の人」があっという間に路上生活を余儀なくされる貧困の実態が目の前にあった。

 派遣村入村者を「考えが甘い」と「自己責任」で切り捨てることは簡単であるが、問題解決にはつながらない。彼らは貯金もできない厳しい労働条件で働いてきたのだし、さらに言えば、誰よりも自己責任を強く感じ、自らを責めている。体をこわし所持金もない入村者が、「生活保護なんか受けない」「年末年始をしのいだあとは何とか自力でやるからほっておいてくれ」と言う姿を、私は何度も目にした。なんともやるせない。彼らに自己責任を説教したところで、問題解決には一切役立たないのだ。

 一方で、派遣村に二千万円もの寄付が集まるなど、同情的な意見も多かった。しかし、日本における貧困は、「一過性の同情」だけでは対応できないほど広く深く進行している。では何が必要か。そのヒントも派遣村にあった。それは少々古臭い言葉ではあるが「連帯」である。

 派遣村の体験の中で私がもっとも印象に残ったのは、炊き出し用の野菜やお米を全国から集めてくれた全国農民連という農民組織の活動である。なぜ食材提供・支援を申し出たのか、農民連の代表は次のように述べていた。

 「今回の支援は、決して同情からではない。自分たちは米価の下落に悩まされてきた。下落した米価に基づいて時給に換算してみたら、二百円を切る額にしかならなかった。米作りへの誇りはズタズタだ。米価切り下げで直面している私たち農民の境遇と、派遣切りに遭っている人の姿は重なる。決して人ごととは思えない。いてもたってもいられなくなって、全国の仲間から食材提供の輪が広がった。いまの社会の流れを変えるための、『連帯』の証として支援させてもらった」

 派遣切りも含め、この三月末までに解雇された人は、厚生労働省が把握しているだけで十九万二千人といわれている。こうした雇用情勢が正社員にまでおよぶのは必至である。派遣切りとその後の困窮は、都市に限らない。本紙一月一日付記事「雇用漂流」が示したとおり、島根県内でも川辺で夜を明かした元派遣労働者がいた。「人ごと」ではない。思えば、この山陰地域に住む私たちも、米価低落に限らず、不便なところに住むほうが悪いといわんばかりの「改革」のため、多くの困難に見舞われているのである。

 いまや程度の差こそあれ、ほとんどの人が「切られる」側にいる。私たちが「一過性の同情」を越え、派遣切りに遭った人々と連帯してこそ、貧困の拡大に対抗できる。農民連が示したような「人ごとではない」という『連帯』によって、自己責任論を乗り越え、生存権保障のための政策を求めていくことが必要ではないか。これが年越し派遣村への参加を通じて私が感じたことである。

……………………………………

 せき・こうへい 一九七八年、秋田県生まれ。二〇〇五年、島根大学法文学部講師、〇八年、同准教授。地方財政論・財政学担当。

('09/04/27 無断転載禁止)


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