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社説

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100兆円予算―こんなに借りて大丈夫か

 政府は総額15兆円余りの「経済危機対策」を盛り込んだ09年度補正予算案を、国会へ提出した。補正後の09年度予算の規模は102兆円を超え、初めて100兆円を突破する。

 世界的な危機で景気が急激に落ち込んでおり、財政出動はその衝撃を緩和するのが目的だ。だが、20兆〜40兆円ともいわれる需要不足のすべてを政府が埋め続けることはできない。

 心配なのは、その財源の多くが借金でまかなわれることだ。今年度に発行する新規の国債は44兆円と過去最悪の規模になり、税収と肩を並べる。もはや、小泉政権での「30兆円枠」に収める目標どころではない。

 政府の借金は、いずれは国民がみずから負担していかなければならないものだ。だから、将来の国民が困らないように財政規律がある。その規律が大きく揺らぎ、財政運営はかなりの危険水域に入ってきたのではないか。

 それでも政財界には、危機の克服には「もっと巨額の財政出動が必要」という意見もある。国債の買い手の多くが国内の投資家であることから「家庭内で貸し借りしているようなもの。心配はいらない」との声もある。

 その種の楽観に楽観を重ねた期待や分析は危険だ。政府と自治体の債務残高は800兆円にのぼる。市場から財政運営が信用されなくなったり、景気が回復してきたりすれば長期金利は上昇する。もし債務の平均金利が1%上がれば、それだけで年間8兆円も国民負担が増えてしまう勘定だ。

 世界の各国も巨額の景気対策をしており、「みんなで渡れば怖くない」という空気もある。しかし、日本の債務残高の国内総生産(GDP)比は170%にも達しており、主要国で最悪だ。60〜80%の米国やドイツ、フランス、英国などとは出発点が違う。

 まだ状態のよい欧州が財政悪化に警戒感を強めているのに比べて、日本の楽観ムードは際立っている。

 過剰に膨れあがった歳出額はいずれ減らさねばならず、そのときは景気にマイナスに働く。高齢社会で年金や医療、介護の需要は高まるのに、歳出削減で必要な予算を組めなくなるかもしれない。子や孫の世代が割を食わないよう、いまのうちから出口戦略を描いておかなければいけない。

 政府には、借金の元利払いを除く基礎的財政収支を2011年度に黒字化する財政再建目標がある。もはや実現は不可能として新目標を検討しているが、わかりやすく国際的な比較が可能なものにすべきだ。欧州連合(EU)が設けている「毎年度の赤字額のGDP比」のような数値目標である。

 与謝野財務相は景気対策に際して「賢い使い方」を強調した。それ以上に、「借り方」や「借金の返し方」への格段の配慮が必要ではないか。

ソマリア海賊―失敗国家の再建にも目を

 アフリカのソマリア周辺海域に出没する海賊をどうすれば根絶できるのか。日本をはじめ各国が艦艇を派遣して商船を警護しているが、とても手が回らない。結局、ソマリア国内の騒乱を治め、まともな政府をつくって取り締まらせるしかない。国際社会の関心がようやくそこに向いてきた。

 「アフリカの角」と呼ばれる位置にあるソマリアは、スエズ運河で中東、アジアと欧州とを結ぶ重要な航路に面している。冷戦時代、米ソが影響力を競い、隣国エチオピアとの武力対立は米ソの代理戦争でもあった。

 皮肉なことに、米ソ冷戦が終わった後の91年、20年以上続いた軍事政権が崩壊し、氏族ごとに武装した勢力が割拠する無政府状態となった。

 国際社会がまったく手をこまぬいていたわけではない。積極的に平和を創造するのも国連の役割だという、冷戦後の野心的な構想を担って92年、米軍が国連平和維持軍として投入された。

 だが、武装勢力の反撃は激しく、米兵の遺体が無残に引き回される衝撃的な映像が世界に報じられ、撤収に追い込まれた。それ以来、ソマリアは米国だけでなく世界の多くにとって、見捨てられた存在となり、現在に至る。

 海賊問題は、そこの無法状態が海にあふれ出てきた結果である。

 それでも4年前、国連や周辺諸国の仲介で「暫定連邦政府」ができた。反政府勢力の一部と和解し、今年、新しい大統領と首相、内閣が生まれた。

 この政府が支配するのは、首都モガディシオの一部でしかなく、それもアフリカ連合の平和維持部隊の支援を受けての話だ。武装勢力による攻撃や国連職員の誘拐も続き、海賊を取り締まれるような力はない。

 人口の4割にあたる320万人が国連などの食料援助に依存し、国内に130万人の避難民がいる。国外でも40万人の難民が暮らしている。

 暫定政府がまったく頼りなく、小さな芽に過ぎないのは確かだが、それを育てていくしかない。国連主催で今月ソマリア支援国会合が開かれたのは、そんな考え方からだ。日本を含め多数の国々が参加し、警察の育成などで計250億円の支援が約束された。

 国連安保理は6月までに、ソマリア向け国連PKO(平和維持活動)の設置を検討することになっている。

 国際社会はまず、ソマリアの現状にもっと関心を持たねばならない。その点で中曽根外相が先月、ソマリア暫定政府の閣僚と会って意見を交わしたのは意味のある一歩だ。

 海上自衛隊の派遣をめぐる海賊新法の議論は、参院に舞台を移した。武器使用基準や国会承認の詰めなども大事だが、海賊をそもそも出さなくするためのソマリア支援といった大きな構図の論議がもっと必要ではないか。

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