きょうの社説 2009年4月28日

◎静岡便のPR 富山県西部にも目を向けたい
 七月二十三日から一日二便体制で就航することが決まった小松−静岡便の先行きは決し て楽観視できない。搭乗率を安定させるために、石川県は県内に加えて福井県の企業や旅行会社へのPRを強化する構えだが、同県と静岡県の時間距離などを考えれば、それだけでは不足ではないか。高岡市を中心とする富山県西部にも目を向けたい。

 二〇一四年度の北陸新幹線金沢開業を控え、小松空港の定期便が増えるのは歓迎すべき ことだ。ただ、就航のタイミングは最悪に近いと言っても過言ではない。未曾有の不況の影響で、採算性確保のカギを握るとされるビジネス利用の伸び悩みなどが懸念されるからだ。逆風をはねのけて上昇気流に乗せるためにはよほどの覚悟がいる。この際、富山県に対する遠慮は忘れてほしい。

 たとえば、福井市から鉄道で静岡市へ向かう際の所要時間は、最短で三時間を切る。行 き先が浜松市ならば二時間半である。一般的に、航空機と鉄道の競争では、勝敗の分岐点は三時間とされる。鉄道利用の場合は何度か乗り換えが必要であり、単純に所用時間だけで判断するわけにはいかないとはいえ、空路がそれほど有利であるとは考えにくい。

 これに対し、富山県西部―静岡県の移動なら空路が優位に立てる可能性は高まる。小松 空港へのアクセスに時間がかかるという不利を割り引いても、「市場」としては福井県より有望ではないか。富山空港の便との競合も、現時点ではさほど気にする必要はないだろうし、仮に、小松−静岡便を運航するフジドリームエアラインズ(FDA、静岡市)が将来的に富山―静岡便を開設しても、ダイヤを調整するなどして「すみ分け」を図り、共存共栄を目指すこともできよう。

 FDAによる小松―静岡便などの運航は、地方空港同士を小型機で結ぶ「リージョナル 航空」の可能性を探る試みであり、うまくいけば地方空港の在り方を変えるかもしれない。簡単ではないが、成功を期待したい挑戦である。需要を掘り起こすために手を尽くしてもらいたい。

◎豚インフル対策 各国と連携し水際作戦を
 メキシコを中心に死者、感染者数が拡大する豚インフルエンザ対策で、政府が閣僚会議 で、ウイルスの国内侵入を防ぐために、検疫・入国審査の強化など水際対策を講じることや、予防ワクチン製造の早急な検討などを決めたのは当然の措置である。

 世界保健機関(WHO)は「公衆衛生の緊急事態」との声明を発表する一方、一回目の 緊急委員会では新型インフルエンザ流行に対する警戒水準の引き上げを見送った。感染源や感染ルート、ウイルスの毒性の強さなど、まだまだ分からない点が多いが、今の段階では世界的大流行の可能性も視野に入れ、国内対策を万全にしておく必要がある。

 初期対応で何より重要なのは、各国、国際機関と連携した水際でのウイルス阻止である 。ゴールデンウイークを迎え、海外旅行が増えるなか、政府は空港などでのチェック体制を強化し、迅速な情報提供を心掛けてほしい。

 豚インフルエンザはメキシコで死者が百人を超え、感染者も急増している。米国政府も 感染者拡大を受け、緊急事態を宣言した。さらにカナダやスペインで感染者が確認され、米大陸以外でも感染が疑われる例が相次いでいる。

 感染者が拡大するまで具体的な防止策を講じなかったメキシコの対応については疑問も 投げかけられている。陸続きの米国も隣国の異変を察知できなかった。被害拡大を最小限に抑えるには、発生国の実態把握と各国の早い段階での情報共有が不可欠であることが浮き彫りになった。世界的大流行を食い止めるためにも国際社会の緊密な連携が試される局面である。

 政府や都道府県は新型インフルエンザに備えた行動計画をすでに策定している。それが どこまで実効性を持つのか点検する機会でもある。不備があれば早急に見直しを進めてほしい。

 市町村は計画策定が義務づけられていないが、感染者はどこで確認されるか分からない 。市町村は住民に最も近い存在であり、地域への啓発など役割は決して小さくない。計画策定を含め、これを機に対策を強化する必要がある。