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以下は、一般論です。

 少年法は、否認事件を想定した手続になっていません。
 平成12年にかなり改正されましたが、抜本的な解決はほとんどなされていないと思います。
 少年法が規定する審判手続は、根は正直な少年たち、という少年像を前提にしているようです。

 しかし、少年法の予定する少年像は理論的に見ても現実的に見てもそうではないと考えます。

 少年事件を論じる場合、よく「少年は可塑性に富む」という言葉が使われます。

 一見札付きの不良少年であっても、きっかけがあれば容易に更生する、という文脈で使われます。
 その理由または根拠として、少年は心身共に未成熟であり、規範意識も倫理観も発達途上であるからきちんと教育すれば正しく成長する、という考え方があるのだろうと思います。

 しかし、上記の考え方のうちで客観的事実と言えるものは、「少年は心身共に未成熟であり、規範意識も倫理観も発達途上である」という部分だけであり、「正しく成長する」、というのは、「きちんと教育すれば」という条件付です。

 その逆もありうるわけです。
 
 規範意識も倫理観も未発達であるということは、少年は容易に第三者に影響されて嘘をつく可能性が高いということを意味します。
 そしてその第三者というのは、取調官に限らないのです。
 
 少年事件の弁護に熱心な弁護士さんたちは、少年たちが取調官による誘導、威迫等によって虚偽自白をさせられやすいことを強調されます。

 私も、それは否定しません。
 年少者の取調べは、それが被疑者の場合も、被害者の場合も、目撃者の場合も細心の注意を払って最も慎重になされなければなりません。

 しかし、少年たちが誘導や威迫を受けて虚偽供述をする場合は、何も取調官による取調べだけではありません。

 友達との口裏合わせ、先輩からの脅しなどによっても容易に嘘の供述をします。
 口裏合わせや脅しがなくても影響を受けることは十分考えられます。
 最も影響力の大きい存在は、年齢にもよりますが特に年少者のについては家族である場合があります。
 たとえば、本当は悪いことをした少年であったとしても、父親から「お前が悪いことをするはずがない、お父さんは信じてるぞ。」などと言われたら、その少年はどう考えるでしょうか。
 また数人で悪いことをした場合に、ほかの共犯者がやっていないと言った場合に、自分一人だけ「やりました。」とは言えない少年だっていることでしょう。

 私が言いたいことは、少年の供述の信用性の判断というものは、大人の供述以上に難しいということです。

 身柄を拘束して取調べをすれば、捜査官による誘導が疑われ、在宅のまま取調べをすれば、家族や友人の影響を無視できない。深刻なジレンマです。

 少年事件は本質的に難しい事件だと思います。

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コメント(8)

言ってること分かるよ。
よく本当は主犯格じゃない奴が事前に本当の主犯格に「おまえが命令したことにしろよ」とか
言われて本当にそのとおりに供述したりするからヤバイ。

検事は大嫌いだけど、仕事離れるとマトモなんだよね。

で、オレが後悔してることはヤクザとケンカしたときに殴ってきた奴と蹴ってきた奴がいた。

だけど、警察には蹴られた箇所も全部殴った奴がやったことにした。

そいつは検事にも全部自分がやったと供述していた。

そいつは結局、10ヶ月刑務所に入れられました。

供述なんて証拠能力ないですよ。

zenkaマンさん
 コメントありがと
 「ごまいます」というのが似合わないみたいだから(^^;

>検事は大嫌いだけど、仕事離れるとマトモなんだよね。

 ほんとはそうじゃいけないと思うけどね。

>供述なんて証拠能力ないですよ。

 法律用語としては正確じゃないけど、そのとおり。
 とりあえず疑わなきゃだめ。
 でも誰かの話を信じないと仕事にならない。
 問題は誰の話を信じるか。
 誰もほんとのことを言ってない場合も珍しくない。

同意してくれてありがとうございます。
オレも何回もつかまってるけど、留置場に入れられて昔のこと何回も何回も問い詰められているうちに検事のこと言ってることが正しいと思い込んでしまうことがよくあった。逆に必死になって反論すると、重く求刑されるんじゃないかと恐れて、なかなか思うように言い返せない。
どう考えても被疑者が不利だと思う。それで後で死ぬほど悔しい思いをする。だけど、再審なんてやる勇気も金もない。まだ警察の方が常識があるんじゃないかと思うこともよくありました。監視する第三者が必要だと思うけど、難しいのかな。弁護士とか間に入れないんですか。アメリカの映画なんかで被疑者の取調べ中にバリっとしたスーツで取調べ室に駆け込んでくる弁護士なんか見かけるのですが・・・

zenkaマンさん
 お返事が遅くなってすいません。

>オレも何回もつかまってるけど、留置場に入れられて昔のこと何回も何回も問い詰められているうちに検事のこと言ってることが正しいと思い込んでしまうことがよくあった。逆に必死になって反論すると、重く求刑されるんじゃないかと恐れて、なかなか思うように言い返せない。

 これが取調べの怖いところ。
 被疑者側の問題ではない。
 取り調べる側の検事がその危険性を十分認識していなければいけません。

>まだ警察の方が常識があるんじゃないかと思うこともよくありました。

 私も非常識な検事を知っています。
 でも、非常識な警察官もいます。
 もちろん、弁護士にも裁判官にも。
 そして、親にも。

>監視する第三者が必要だと思うけど、難しいのかな。

 これがいわゆる取調べの可視化につながる問題です。
 今は、取調べに弁護士が立ち会うことは認められていません。

被疑者の問題じゃないんですか、そういう人がいるとうれしいなぁ。どうせ、「おまえの意思が弱いのが原因だ」なんて言われると思った。さすがプロですね。

あの検事っていうのは、若い検事ほど、犯罪者に対する憎悪っていうか敵意がある感じですね。「オレは若いけど、舐められねえよ。起訴してやるよ、有罪にしてやるよ、そんで出世してやるよ」っていうオーラが出まくってるんです。

やっぱ身分が高い低い関係なく慣れててバランスの取れているベテランの方が信用できるなぁなんて思いました。

あの東京地検特捜部長の人の就任コメント聞いたら、誰だって「ヤバイんじゃないのこの人って思うと思ったです。


弁護士の方がずっと給料がいいから、無理しなくてもいいのに。

親はもうこういう世の中だから仕方ないとして、検事の非常識なのには我慢できない。だって、誰も注意できないんだから。警官なら他にいくらでも見てる人がいるから大丈夫だけど。
留置場の監視警官に「あいつ頭おかしいですよ」って言ったら途端にマトモな取調べになったのが笑えました。

あと、オレみたいな低脳にまともに相手にしてくれてありがとうございました。うれしかったです。犯罪者とヤメ検弁護士が語り合うなんて
ネットって怖いですね。

zenkaマンさん、こんばんは

>若い検事のオーラ

(^^;
これあるんですよね。
特に、若い女性検事に多かったりして。
男なんかに負けるか、っていうオーラが加わっちゃいますからね。
もっと肩の力を抜けばいいと思うんですけどね。

>バランスの取れているベテラン

要するに、法律家なんていうのは職人なんですよ。
本質的には大工さんと変わらないんです。
経験がものすごくものをいう世界です。

>弁護士の方がずっと給料がいいから、無理しなくてもいいのに。

いや、そういうわけでもない。
弁護士は水商売だから、金につまると危ない。

>検事の非常識なのには我慢できない。

うん、OBとしてかなり心配なところがあります。

あと、zenkaマンさんは決して「低脳」じゃないですよ。
ブログ読みましたけど面白い。
面白い文章を書く人に「低脳」はいません。

>ネットって怖いですね。

いや、とても面白い(^^)

また、コメント待ってます。

女性検事に当たったことはないのですが、綺麗な人多そうですね。こないだ、読売新聞に
茶髪でハーフの凄く綺麗な子が出てて驚きました。警察官に黒木瞳に似ている綺麗な人がいると聞いたことがあります。

美人の女性検事って男としてみれば堪らないものがあるんですけど、エロすぎですか。

>経験がものを言う

そうなんですか、やっぱりなんでもそうなんですね〜。弁護士さんに「東大卒だと弁護士は有利ですか」って聞いたら、即座に「全然関係ないよ、実力のみ」って聞いて驚いたことがあります。考えてみればあたりまえですよね。
検事の場合は、きちんと事実を見極めることが出来る人に偉くなって欲しい。少なくとも「汗水たらして働いている人が憤慨するような事件を
解決していきたい」なんて私情を仕事に挟む人が上層部に居ることは公益に反すると思う。

>弁護士は水商売だから金につまると危ない

そうなんですか。平均年収2000万って聞いたけど、弁護士とて安全じゃないんだ。
法律相談とかあるから、少なくとも食っていくことは簡単だと思ってました。まぁ、普通の会社員よりは遥かにましだと思いますが・・・

あと、モトケンさんの文章って新書みたいで面白いです、マジで。少年犯罪について朝生で討論して欲しいです。

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