昨年、日本で高視聴率を記録したNHKの大河ドラマ「篤姫」が、台湾で評判を呼んでいる。3月中旬からテレビで中国語字幕付きの放映が始まったところ、「日本の時代劇を初めて面白いと思った」などと、インターネットで話題が沸騰。舞台となった鹿児島県も、台湾で「篤姫の故郷」ツアーのセールスに乗り出した。
「(主役の)宮崎あおいさんはかわいくて演技も素晴らしい」「日本に篤姫を記念した場所はあるの?」。
台湾のケーブルテレビの日本番組専門局、緯来日本台が特設した「篤姫」ウェブサイトの掲示板には、視聴者の感想や質問の書き込みが相次いでいる。サイト内には人物関連図や「大奥」「参勤交代」などの用語コーナーも設け、時代背景を台湾の視聴者に分かりやすく説明している。
「篤姫」は同局で5月下旬まで平日の連夜放映。視聴率は、100チャンネル以上のケーブルテレビが普及している台湾では「かなりのヒット」とされる1%台を維持し、ベストテンに入っている。同局が、劇中に出てくる「島津家のお守り」(鹿児島県観光連盟提供)を視聴者プレゼントとしてネットで受け付けたところ、用意した5セットに対して1万人近い応募があったという。
同局によると、視聴者の中心層は20‐40代の女性。「篤姫の前向きな行動力が、視聴者を勇気づけてくれる」(広報担当)とともに、戦闘シーンが少なく感情移入しやすいストーリーが、古めかしい時代劇のイメージを一新した。
日本国内に続く「篤姫」人気のチャンスを逃すまいと、鹿児島・宮崎両県の観光・ホテル関連18団体は今月23日、台北市内で台湾の旅行会社との観光商談会を開催。昨年就航した宮崎‐台北の定期航空便などを利用し、ドラマの衣装や道具が展示されている「黎明館(れいめいかん)」(鹿児島市)やロケ地となった「仙巌園」(同)などをめぐるツアープランを紹介した。
さらに鹿児島県観光連盟は「篤姫」をタイトルに掲げて県内に1泊以上する20人以上のツアーを実施した台湾の旅行会社、先着10社に各10万円を助成する販促活動を展開。既に数社がツアー商品をつくり、一部は参加者募集も開始した。
台湾での「篤姫」人気について、同連盟の東清貴事務局長は「鹿児島観光を売り込む新たなキーワードができた。これをきっかけに、温泉や料理だけでなく、明治維新関連の史跡や人物にも興味をもってもらえれば」と期待を膨らませている。 (台北・小山田昌生)
=2009/04/27付 西日本新聞夕刊=