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企業内における営業担当の立場は売り上げと利益という数字目標が課せられるのが一般的だ。自動車販売なら一ヶ月どれだけ契約を取ったのかを社内競争させる。契約を1件でも多く取ったものを報酬という形で還元することが社内モチベーション向上と思い込んでいる企業も多いことだろう。
営業担当者の意思高揚のために競争の原理を導入する。一見効果があるように思えるが、それは該当者全員のスタート位置が同じであることが条件となる。実際のところスタート地点が完全に同じであることは少ない。大抵は巡回顧客環境が違ったり、たまたま担当した顧客が優良だったなど、営業努力と数字実績とが比例しないまま比較競争させていることのほうが多いと思われる。
ところで理想な営業形態は前回書いたとおりだが、実際は売り上げ目標といったノルマが毎月課せられているわけだから理想系を追い求めたくても月次売り上げに対する責任を追求されるため、どうしても目先の数字に走るようになる。結果、顧客への営業活動も数字獲得のための自己都合営業へと移ってしまい、顧客側の要望と反する行動へと変わってしまうのである。
気づけば顧客のための営業はどこへやら。営業活動は単なる押し売りに近い状況となってしまうこともあるだろう。そこに競争の原理を導入すると、個人プレーが横行し、会社全体の利益よりも個人目標達成を第一義とした意識が高まる。環境もスタート地点も完全同一下でないまま競争原理を安易に導入することが、悪循環意陥っていることを経営者は気づかないといけない。
本来、目先の数字を作るために数ヶ月先を見越した種まき営業活動も平行して行わなければならない。だが月次目標必達ために目先の数字だけ懸命に追いかけるようになってしまう。しいては次月分を今月数字が不足するから前倒し計上といった事実上の粉飾させてしまうことだってあるだろう。こんな実態を把握せずして企業業績が健全に進むのだろうか。私は大いにこうした実態に疑問を抱いている。
確かに月次数字は重要だ。しかし月次数字は日頃の先を見越した活動の結果でなければならない。目先の数字だけに走るといずれ行き詰る。結果と共に今月は数字にならなかったが、先に数字化する活動をしたかどうかも評価基準として判定しなければならない。もし数字結果のみを求める管理が横行すれば社員は個人プレーに走り、企業全体への貢献意思の喪失に加え、仕事に対するモチベーションも低下するだろう。
経営は数字が命。だがその数字を作り出すプロセスが確かなものがあって良い数字が生まれる。つまり目標数字が未達成であったら、プロセスがどうであったかをきちんと見届けて最終評価を下すことが重要だ。逆に数字が良かったとしても、目先の結果だけを追い求め、先に繋がらない活動をしていることがわかれば、たとえ目標達成していても未達成と同様の評価にするなど、結果とプロセスとのバランスを持った評価基準を採用すべきである。 |
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