政府は27日朝、豚インフルエンザ対策に関する関係閣僚会合を首相官邸で開き、「当面の政府対処方針」をまとめた。「我が国としても警戒を強化すべき事態」と認定し、水際対策の強化、ワクチン製造の検討などを盛り込んだ。
会合には全閣僚が出席。麻生首相は「日本としても警戒を強化すべき事態にあると認識している。ウイルスの国内侵入を防ぐため水際対策が極めて重要。検疫の強化などの措置に万全を期されたい。日本の危機管理が問われている」と指示した。
対処方針では、(1)情報収集に最大限の努力を払い、国民に迅速かつ的確に情報提供(2)ウイルスの国内侵入防止のため、検疫・入国審査の強化など水際対策を実施(3)ワクチンの製造について早急に検討(4)国内での患者発生に備え、発熱相談センターと発熱外来の設置準備や、電気・ガス・水道・食料品事業者に対する供給体制確認などを実施――とした。
閣僚会合後、河村官房長官は記者会見で、国内での感染者について「現時点では一切(感染者がいるという)報告を受けていない」と述べた。
舛添厚生労働相は記者団に、豚インフルエンザに対応するワクチンの製造について「季節性(インフルエンザのワクチン製造)を一時停止してでも、こちらを優先したい」と述べた。さらに「タミフルは3380万人分備蓄がある。必ず薬が行き渡るような体制を取りたい」と強調した。石破農水相は、米国やメキシコからの輸入豚肉について「出荷段階で滅菌されたもので、全く問題ない。風評被害がないようにしたい」と語った。
【豚インフルエンザ対策に関する関係閣僚会合での麻生首相のあいさつ】
今回の豚インフルエンザのメキシコ及びアメリカにおける発生については、昨日WHO(世界保健機関)が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に該当するとの認識を示しております。日本としても、警戒を強化すべきである、という事態にあるという具合に認識をしております。
このため政府としては各大臣、各省庁が一丸となって政策を講じて、国民の安全安心の確保に万全を尽くさなければならないと存じます。特に今回の豚インフルエンザについては未解明な部分が多い。国際的な連携を密にして、情報収集と国民への情報提供に最大限の努力を払って頂きたいと存じます。
現段階において、ウイルスの国内侵入を防ぐため水際対策が極めて重要。検疫の強化などの措置に万全を期されたいと存じます。その上でウイルスが国内に侵入した場合に備えて、医療体制の確保や国民生活の維持のための措置など、国内対策には遺漏なきよう期されたいと存じます。
みなさんにあっては、豚インフルエンザ対策は、これは国家の危機管理上の重要課題であるとの認識のもと、緊密に連絡し、対策に全力を尽くされたいとお願いしております。
【豚インフルエンザに関する「当面の政府対処方針」】
今回の豚インフルエンザのメキシコ及び米国における発生については、WHO(世界保健機関)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に該当する」との認識を示しており、我が国としても警戒を強化すべき事態であることから、政府としては、当面、次の措置を講ずる。他方、国民各位に対しては、警戒を行いつつ、冷静な対応を行うようお願いする。
一、国際的な連携を密にし、メキシコ等における状況、WHOや諸外国の状況、ウイルスの特徴等に関する情報収集に最大限の努力を払い、国民に迅速かつ的確な情報提供を行う。
二、在外邦人に対し支援を行うこと及びウイルスの国内侵入をできる限り防止することを目的として、以下の水際対策を実施する。
(一)メキシコ等の在外邦人に対する情報提供を含む支援の強化
(二)検疫・入国審査の強化、空港における広報活動の強化
(三)メキシコ等から入国した感染者や感染したおそれのある者に対する適切な医療等の措置
三、ワクチンの製造について早急に検討する。
四、国内における患者の発生に備え、以下の対策を実施する。
(一)保健・医療分野をはじめとするすべての関係者に対する的確な情報提供
(二)発熱相談センターと発熱外来の設置の準備
(三)国内サーベイランスの強化
(四)電気・ガス・水道、食料品・生活必需品等の事業者に対する供給体制の確認や注意喚起