2008年09月19日 (金)スタジオパーク「これでいいのか 年金改ざんへの対応」
厚生年金の記録およそ6万9千件が改ざんされている可能性があることがきのう明らかになり、政府は、社会保険庁が組織的に関与していた疑いが強いことを認めました。これまでに判っている改ざんの手口や、社会保険庁の対応の課題について、藤野解説委員に聞きます。
Q1 社会保険庁が、事実上、組織的な関与をやっと認めましたね。
記録の改ざんは違法行為で、年金額が減っている人たちが大勢います。しかも、それに、社会保険庁が組織的に関与していた疑いが極めて強いというわけですから、これまでの不祥事で最も悪質です。それに、改ざんは以前から指摘されていたのに、社会保険庁は、調査を先送りしてきました。社会保険庁は、被害者の救済より、組織的関与の隠ぺいを優先してきたわけです。
Q2 これまでに明らかになった改ざんは、どういう手口で行われているのでしょうか。
大きくわけて2つのパターンがあります。
ひとつは、月給の額が減ったことにされていたケース。もうひとつは、加入していた期間が短縮されていたケースです。
まず月給が減らされていたケースから見ていきますと、
Aさんは、平成6年1月に会社を退職するまで、53万円の月給をもらっていました。
ところが、記録では、平成5年1月から退職まで、月給は20万円に減らされていました。しかも、20万円に訂正する手続きが行われたのは、退職後の平成6年4月。退職後に1年以上前に遡って、月給が引き下げられるという極めて不自然な記録の訂正が行われていたんです。年金額は月給に応じて決まりますから、Aさんの年金額は少なくなっていたわけです。
もうひとつの、加入期間が縮められていたケースです。
Bさんは、昭和52年12月まで、ある工場に勤めていました。
ところが記録は、昭和51年8月に工場が倒産したことになっていて、Bさんもこの時点で厚生年金を脱退したことになっていました。
しかも、昭和51年8月に倒産したという手続きが行われたのは、昭和52年12月下旬。1年4か月も過去にさかのぼって記録が訂正されていました。年金は一定期間加入していないと受け取れないので、加入期間が足りないと、年金が受け取れない可能性も出てくるわけです。
Q3 本来は、社会保険庁が全て確認すべきですが、もう信用できません。私たちは、自衛策として、どうやって改ざんを見つけたらいいのか
現在、保険料を払っている人は、社会保険庁のホームページから確認する方法があります。年金をすでに受け取っている人も、来年度から利用が可能になります。
確認するポイントは、まず「月額変更」の欄です。この右端の月給の記録が、前後と比べてみてこのように大幅に減らされているものは、改ざんの疑いがあります。
また、「喪失」と書いている部分。これは、会社を退職した、会社が倒産したといったことを意味するのですが、この「喪失」の年月日が、このように前倒しされていて、加入期間が減らされているケースが多いので要注意です。
しかし、これだけでは十分ではありません。過去に遡って改ざんされた事例が多いことを考えると、いつ変更手続きが行われたかというのが重要ですが、ここには掲載されていません。
Q4 やはり窓口に行かなければいけないということですか?
そうです。ですから、自分の記録に疑問を感じた人は、社会保険事務所の窓口で、「月給」「加入期間」の記録に加えて、「変更手続きが行われた時期」を確認する必要があります。特に、景気が悪い時期に改ざんが集中しているということですから、勤めていた会社に経営難の時期があった人や、会社が保険料を滞納していたと思われる人は、なるべく早く窓口で記録を確認する必要があります。
このほかに、社会保険庁は、来年から、改ざんされた疑いのある人や、年金受給者全員に通知を送る方針ですが、この期に及んでも、全ての記録を本人に開示することに消極的です。
変更が行われた時期など、記録が訂正された経緯がわかる情報も含めて、全部本人に開示して、一日も早く被害者を救済することが重要だと思いますが、なぜそれができないのか。社会保険庁の対応に強い疑問を感じます。
Q5 改ざんに気づけば、本来の年金が受け取れるのでしょうか
一番難しい問題です。たとえ改ざんに気がついても、証拠になるものがなければ、すぐに記録を回復できません。総務省の第三者委員会でも、明らかに改ざんだとわかるものがなければ、救済されないままです。これだけ被害が広がっているわけですから、そうした人たちをどう救済するのか、再審査を行う機関を設けるなど対応策を検討する必要があります。それから、もうひとつ、社会保険庁の組織全体がこれらの改ざんにどう関与していたのか、捜査当局の力もあわせて徹底した全容解明と責任追及を行う必要があります。
投稿者:藤野 優子 | 投稿時間:10:19