ワシントンで開かれた先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)は、経済の見通しは引き続き弱いものの、経済活動は二〇〇九年中に回復を始めるとした共同声明を採択し、閉幕した。世界経済の明るい兆しに言及したのは、金融危機が深刻化した昨年秋以降、初めてだ。
今回のG7は、二月にローマで開かれて以来。今月初めにロンドンで二十カ国・地域(G20)の首脳による金融サミットが行われて三週間後とあって、金融サミットで合意した財政刺激や金融システム安定化などの危機克服策で協調を続けていくことを再確認する場となった。
声明は、雇用と成長の回復、危機の再発防止に向け、財政出動や金融安定で「あらゆる行動」を協調して取っていくことを明確にした。国際通貨基金(IMF)の改革では、途上国支援のために資金規模を拡大することとし、中国などの新興国を含めたG20と歩調を合わせていく姿勢を示した。
金融規制の強化では、金融サミットの合意を迅速に実施する決意を表明し、あらゆる機関、市場、商品を規制の対象にすることなどをあらためて示した。租税回避地(タックスヘイブン)など規制に非協力的な国・地域については、特定したうえで具体的な対抗措置を取っていくことを関係機関に求めた。
声明が、経済活動の年内回復に言及したのは、最近の経済指標の一部に悪化ペースが鈍化する傾向が背景にあったからだ。景気の下降が急激だっただけに、市場などで回復への期待が高まるのも無理のないところだ。萎縮(いしゅく)してしまった企業や消費者の心理を転換させる好機ととらえたのかもしれない。
一方で、「下振れリスクは継続している」として、危機対応への強い姿勢を崩そうとはしなかった。当然だろう。先にIMFが発表した世界経済見通しは、〇九年の世界全体の国内総生産(GDP)成長率をマイナス1・3%と予測した。一月時点の0・5%増という見通しを大幅に下方修正する厳しい判断だった。
G7終了後の記者会見で、ガイトナー米財務長官は「景気や貿易の悪化ペースが緩和した兆候には勇気づけられるが、(経済が)著しい困難から抜け出したと結論づけるのは早過ぎる」との認識を示した。現状では本物の景気回復につながるとは、とても思えない。声明に盛り込まれた政策を各国がどう具体化し、着実に実行していくかがカギとなる。
政府の地方分権改革推進委員会の丹羽宇一郎委員長が、道路やダムなど国の直轄公共事業費の一部を地元自治体が負担する制度に関し、維持管理費の負担金廃止などを求める意見書を鳩山邦夫総務相に提出した。
総務相はこれを受け、来年度から維持管理費の地方負担を廃止する意向を示した。
国土交通省は、維持管理費を地方が持たないのは受益者負担の原則に反するなどと分権委の求めに反発している。だが、総務相が維持管理費負担金の廃止に言及したことは心強い。国交省は地方の不満を受け止め、前向きに対応すべきだ。
岡山市の国交省岡山国道事務所移転でも経費の三分の一近くを岡山県が負担していた。請求の名目は道路の維持修繕や改築で、県土木部は移転経費とは知らされていなかったという。積算根拠や内訳が明示されない点も直轄事業負担金の大きな難点とされる。意見書は情報開示についても徹底を求めた。やはり早急な改善が求められる。
事業実施に関する自治体との事前協議のルール化、負担金見直しに関しての国と地方の定期的な協議といった点についても同様である。今回の意見書提出を、負担金に絡む一連の問題点是正の契機にしたい。
しかし、直轄事業負担金問題の根底には、深く根付いた国と地方の上下関係がある。意見書は負担金全体の約八割を占める整備費負担金については今後の検討課題にとどめた。地方の側には、負担金問題で強弁すれば補助事業の配分などで国から不利な扱いを受けかねないといった懸念がつきまとう。
国と地方が真に対等の関係を築くには、制度や税財源の配分をより広く見直す必要がある。負担金問題を、分権改革加速の呼び水とする視点も大切だ。
(2009年4月26日掲載)