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世迷言

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☆★☆★2009年04月26日付

 人気グループSMAPの草なぎ剛さんが、公然わいせつの疑いで逮捕されたのにはビックリ。さぞかしハレンチな行為をしたのだろうと思っていたら、公園で全裸になって騒いでいただけだった▼昔はやった「ストリーカー」というのは確信犯で、全裸になって表通りを疾走するという「手口」は、愉快犯でもある。公序良俗に反することはまちがいないが、動機は単純だからまずはすぐ釈放される。草なぎさんの場合も酔って「ほでなし」(当地方言で正体無し)になっただけだろう▼いわば微罪で、「わいせつ物陳列罪」いや、チン列罪が妥当なところだろうが、公然わいせつときたから、世間が色めき立った。結局は処分保留で釈放されたが、当局の反応も過剰、メディアの騒ぎ方も尋常ではなかった。これが普通のおじさんのやったことだったらどうだったか?有名人は辛い▼口さがない街スズメたちも彼に同情的だった。酔った上とはいえ、決してほめられた行為ではないが、受けた代償はまったく割に合わないものだった。逮捕、自宅捜索、送検と犯罪人扱いされたのはともかく、映画、テレビ、CMなどの自粛による「社会的制裁」の方がはるかに打撃が大きい▼「草食系男子」の代表そのまま、やさしそうでどこか気の弱そうな男の子が、肉食系も三舎を避ける振る舞いをしたところが不思議。よほど辛いことがあったのだろう。酒の上の失敗を重ねている側から見るためか、こちらもつい同情した。

☆★☆★2009年04月25日付

 英語で「ホンダ」と書いてあり、デザインもそっくりだから、誰もがホンダの製品だと思うが、よく見ると「HONGDA]と、間にGが入っている。一字違いのそんな「ホンダ」製バイクが東南アジアでよく売れたことがあった▼偽造大国・中国のしたたかさを物語る実話だが、実際、ブランドの模造、模倣、偽装などは朝飯前。なにせ日本で発売されたばかりのCDが、二三日も経たないうちに海賊版で現地に出回るというのだから、油断も隙もあったものではない。訴えても言を左右にして逃げ回る。かのバイクも逃げ足の速さだけは本物以上だったとか▼上海で開幕したモーターショーに、マツダやロールスロイスそっくりの車が出展されたと昨日の産経にあった。写真を見るとまさに瓜二つでデザイン盗用は明らかだが、元を見たことがなければ海賊版とは気が付かず、独自のデザインと思うだろう。知的財産権などという意識を持たない国ならではのこと▼同じく昨日の読売に、中国政府がIT機密を強制開示させる制度を五月に発足させるとあった。企業が知恵を絞って開発した先端製品の心臓部を公開せよというもので、いわば企業秘密をただで手にいれようということに等しく、当然多くのノウハウを抱えた先進国は猛反発している▼例によってコンピューターウイルスの侵入防止などを理由に掲げているが、金庫の鍵がどこにあって、ダイヤル番号も教えろという要求をする国がどこにあろうか。

☆★☆★2009年04月24日付

 昨日の岩手日報一面トップを見て驚いた県民も多いはず。なんと岩手銀行の永野勝美代表取締役会長が解任されたとある。取締役の過半数が解任に賛成したというので、三越の岡田茂社長が解任された時発した言葉「なぜだ!」を想起してしまった▼昭和五十七年、ワンマンだけでなく公私混同が激しく女性関係にもルーズだった岡田社長が取締役会で解任された「三越事件」は、「岡田天皇」と異名をもつほど権勢を振るった人物でも、取締役会が16対0で解任したように、人心が離れたトップの末路を物語る見本として有名になった。「なぜだ!」は裸の王様の過剰な自信から発せられたものだった▼永野会長の解任がどのような理由によるものか、日報紙は触れていないが速報だったからだろう。しかし解任とは不信任と同義であり、そこにいたるまでには複雑な事情があったことは想像に難くない▼信用を重んじる金融機関が、少なくとも公表が憚られるようなお家事情を抱えていたことを初めて知って小欄は、堅忍不抜に見える組織でも人間関係が複雑になれば進路を誤りかねず、それは一にかかってトップの責任であることを教えられる思いだった。永野会長も裸の王様になっていたのであろうか?▼それにしても県内金融界をリードする岩手銀行の八代目会頭だった同氏が、こんな形で晩節を汚すことになったことは残念である。講演会で自信たっぷりに話していた姿を思い出し、人間とは切ないものだという思いを強くした。

☆★☆★2009年04月23日付

 いつもさんざん世話になりながら、ありがたさを考えたことはなかった。それは当然あってしかるべきという慣れによるものだろう。普段空気の存在を意識することがないのと同じように▼世話になっているその相手とは「弁当」のことである。たかが弁当とお笑い召されるな。されど弁当なのである。「たかが」と笑うのは毎日愛妻弁当を預けられるしあわせなお方。「されど」と深刻な表情を浮かべるのはそのサービスを受けられない気の毒なお方と解釈してよかろう▼「たかが」から「されど」に環境が変化し、自分で作るようになって感じた最大のものは主婦の大変さだが、同時に弁当を作るという行為は愛情のバロメーターではないかという気になった。むろん一概に決め付けられるものではない。家庭の事情というものもある。しかし主婦たちが、夫のために、子どものためにそれだけの労力を捧げるという心の持ちようは尊い▼「愛妻弁当」は手がこんでいる。栄養や彩りを考えて何品も弁当箱にしのばせるのは大変だろう。だが、当方の弁当は前日の残り物を詰めただけか、一品ぐらい調理する程度の不細工なシロモノだ。しかしそれだけでも充実感はある。持たせてくれるだけでありがたいと亭主たちも内心感謝しているだろう▼弁当箱をなくしてしまい、四、五日おにぎり持参となったが、それで十分。ご飯プラス愛情というおかずさえあれば、亭主たちは必ず満足してくれるのである。顔にこそ出さないが。

☆★☆★2009年04月22日付

 今月末から始まるゴールデンウイークの旅行客は国内、海外とも昨年を上回る見込みという。何が不況だろう。まあ、余裕のある方々はこの際大いに消費して景気を浮揚してほしいものだ▼仕事が減って時間的に余力が生まれた企業の中には、この際だから長期休暇にしてしまおうと、十日間以上を休みにしたところもあると聞く。生来が貧乏性だから、こんなに休みがあったら毎日をどう過ごすのだろうと他人事ながら気にかかってしまう。実はひがんでいるのかもしれない▼「働き蜂」とヤユされながら、せっせと生産にいそしんできた勤勉民族は、休みの過ごし方が苦手である。「習い性」というやつだ。仮に一週間の休みがあるとすると、その消化にもってこいなのが旅行だが、この時期どこも混雑するのが玉にキズ。近隣をブラブラするか、家でごろごろしているか、いずれ選択肢は少ない▼ブンヤ稼業は連休を許してくれないので十日はおろか、一週間の休暇も夢また夢である。交代で飛び石休暇を取るぐらいが関の山だが、これが国の基盤に沿った民族性の結果だろうと思う。つまり働かなければ食えない少資源国家の宿命として「遊べない」民族を生んだのだろう▼フランスでは一カ月もバカンスが取れるのに、日本ではなぜできぬのかという素朴な疑問に老爺は答えた。「海外で“荒稼ぎ”して富を蓄えてきた国と、労働が最大の資源である国との差だろう」と。それ以外説明がつかぬではないか。

☆★☆★2009年04月21日付

 三陸鉄道の開業二十五年を祝う式典が宮古市であり、その祝賀会の席上で運輸、文部、財務大臣などを務めた「塩爺」こと塩川正十郎氏と会話をする機会を得た▼八十七歳という高齢を感じさせないかくしゃくぶりで、ダンディかつ大変な健啖家だった。もう引退はしているが政界の内情についてはアンテナを張っているはず。こちらも記者に戻って質問してみた。「今後の政局はどうなりますか?」「うん、七月解散だろうね」この卦がどう出るかは今後のお楽しみ▼選挙の結果については自民、民主おあいこ、いずれにしても過半数はとれまいという占いだったので、政界の再編成は大いにあるかどうかを質すと、「それは大あり」とのご託宣。そして一言「最近の議員はサラリーマン化している。骨がない」と切って捨て「ではさようなら」と愛敬を残して去っていった。枯れたようでまだ生では食えなさそうだ▼式には三鉄ゆかりの沿線各自治体から、引退した元首長たちも出席していて、フィルムのコマを戻したような錯覚にとらわれたが、これら「OB」が語る思い出話を聞いていると、確実に時間が流れていることを痛感させられた。大船渡高校が春の選抜に出場した時から四半世紀が経っているのである▼あの頃の当地はダブルの喜びであふれ、まだ景気も良かったのでみんなが将来に夢を抱いていた。それが今は下りだけの一方通行。早く上りの「ダイヤ」も組んでほしいもの。

☆★☆★2009年04月19日付

 世界のイチロー≠ェ、またやってくれた。日米通算の安打数で、張本勲氏の持つ日本記録を更新する三千八十六安打を放ち、十八日は一般紙もこぞって一面で扱った。もはや超人の域の彼でさえ、先のWBCではあまり打てなかった▼しかし、みな「やってくれるだろう」と信じていた。その通りに、優勝決定戦で決勝の2点タイムリーを打った場面は、記憶に新しい。同じWBC組の松坂投手は、大リーグ開幕から二試合連続KOで故障者リスト入りした▼イチローも、そこからのスタートで記録を塗り替えたわけだが、この二人を考えると一度心も身体もピークに持っていった反動を思わざるを得ないし、そこまで本気にならなければ勝てないのがWBCだとも知らされた。数字がすべての世界では、勝利数の多い松坂投手が最優秀選手に輝いたが、内容では岩隈投手を推す声もあった▼とはいえ、仮に最後の場面で打てなくても、イチローこそ侍ジャパン≠フ陰の最優秀選手だったと思う。なぜなら、北京五輪で星野ジャパンが惨敗した時、「WBCはリベンジ(復讐)の場ではない」と、全く新しい体制で戦う覚悟を促したからだ。アジア予選から、率先垂範の練習姿勢もあった▼それでも野球発祥の地らしく、米大リーグにはまだまだ上がいる。最多安打男のピート・ローズには四千二百五十六本の記録があるという。だが、イチローはまだ三十五歳。「彼なら、またやってくれるだろう」と、日本の野球ファンはみな思っている。

☆★☆★2009年04月18日付

 この時期を一口で表現するとしたら「桜花爛漫」の四文字に尽きるだろう。日本列島がことごとくピンクに包まれ、その下では「花より団子」で花見の宴が繰りひろげられる。外国人からみたら異様な光景だろうが、これが日本人の「まっとうな」姿か▼その「花より団子」だが、それは桜を愛する心があってのことで、だからこそ桜前線のうつろいや開花予想が「国民情報」として流されるのである。「国花」だからこそだ。ワシントンのポトマック河畔に東京市から贈られた桜並木が満開になった模様が先日のテレビで放映されていたが、その「花見」に数十万人が訪れるというのは、その美しさ抜きに語れまい▼驚いたのはこの花の気温に敏感なことである。先週の初め、つぼみが色づいてきたなと思っていたら、その翌日あたりあっという間に開花した。そして行く先々に桃色、いや桜色のタペストリー(装飾織物)が天空を背景に掛けられているのである。思わず息を呑む美しさとはこのことだろう。チューリップ畑も菜種畑もいい。しかし桜花の前には敵しない▼本居宣長の「敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花」は、そんな日本人の原点を述べたもので、「拡大解釈」され「悪用」されたという説もないではないが、もっと素直に読むべきだろう。この「山桜花」を山桜のことと捉えるべきか、それとも山と桜と分けて考えるべきか浅学にして知らない▼しかし山桜の楚々とした姿もそれなりだが、心を動かすのはどちらか。などと考えていると「団子」いや晩酌が気になりだしてきた。

☆★☆★2009年04月17日付

 「辺幅を飾る」というのは、決していい意味に使われない。辞書を引くと「身なりや外見を立派に見せる」「見栄を張る」とあるように、中身を隠す古来からの便法の一つとしてよかろう▼だが、社会人ともなれば最低限の身だしなみは必要だ。就職の面接でジーンズにTシャツでは門前払いされるのがオチ。だからこそ昨日まではヤンキー(不良少年、青年)風のスタイルで通していても、面接ではリクルート(就職用)スーツを着用と一大“変身”するのは、辺幅を飾るのではなく、生活の知恵というものだろう▼以前、面接に立ち会った時、入り口の脇である応募者が持参の「面接用」に着替えていたと聞いてあきれたが、辺幅以前にこれは常識、心の持ちようの問題で、これでは採用しないで下さいと訴えるのと同然だろう。事実、この光景は目撃されていてこちらにはすでに耳打ちされていた▼辺幅は飾りたいが、あいにく先立つものがないからいつも着たきりスズメの当方は、ブランドものはおろかテーラーメードもまれ。ほとんど「ブランコ」で通している。それもたいていが「お仕着せ」で、しかも原産地は「外国」、というより途上国がほとんど。しかしこれで後ろ指をさされることもないから、満足している▼そのお仕着せ提供者である息子が買ってくれた百円ショップのネクタイが汚れたので、注意書きを無視して洗濯をしてみたら、ものの見事に“分解”していた。その「天晴れ」なこと桜の散り際を見る思いだった。

☆★☆★2009年04月16日付

 春四月、北国気仙も桜花爛漫を迎えたところで、四月にちなんで四にまつわる言葉を探してみた。まず、「四月一日」と書く苗字があり、ワタヌキと読ませている。本来の綿貫なら合点がいく。四月一日は綿入れの着物を脱ぐ時節柄なわけだ▼苗字が出たところで、家紋にも触れると「四つ目紋」がある。布を染める時、つまみやすいように結んでおくと、目のような丸い染め残しができる。それをデザインしたのが目結い紋。源平合戦における宇治川の戦いで、ライバル梶原影季との先陣争いに勝った佐々木高綱が愛用▼高綱は四男のため、特に四つ目紋は佐々木氏一族の誇りとなった。中には十六目紋もある。その心は「四×四=十六」。獅子は百獣の王であり、十六目紋には最高家格の意が秘められている。大相撲では、各力士が互いに「四股」を踏む。もともと、強くて丈夫という「醜」が語源とか。そのため、シコを踏むことは邪気を払う儀式と説明される▼今も伝えられているかどうか、山口県が昭和六十年代にまとめた教育心得に「子育て四訓」がある。「乳児はしっかり肌を離すな/幼児は肌を離せ、手を離すな/少年は手を離せ、目を離すな/青年は目を離せ、心を離すな」▼黄色い帽子をかぶった新一年生たちが、元気に登校を始めている。大船渡市の猪川小や末崎小では双子や三つ子の入学も話題となった。今は、その安全と健やかな成長を見守りたいが、来年はぜひ「四つ子」も期待したいものだ。


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