"If it can happen, it will happen." 「起こる可能性のあることは、いつか実際に起こる。」 "Everything that can possibly go wrong will go wrong." 「うまく行かなくなりうるものは何でも、うまく行かなくなる。」
前回のコラムで、大震災がまもなくやってくること、大震災の後、日本の社会は新たに生まれ変わることを書きました。1995年の兵庫県南部地震(阪神大震災)の被害は10兆円、2004年の中越大震災の被害は3兆円でした。首都圏直下地震では100兆円と予測されています。東京一極集中も、この地震で地方への回帰のきっかけとなるでしょう。
地震ハザードステーションで公開されている30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図(基準日2007年1月1日)を見ると、北海道の根室地方、宮城県の女川半島、東海地方から四国までの太平洋側が高い確率となっているのは、前回のコラムで紹介しました。
出典:防災科学技術研究所
原子力発電所の場所を日本地図に書いてみます。2つの図を比べると、日本の現状が見えてきます。
宮城県の女川原発、静岡県の浜岡原発、愛媛県の伊方原発について、30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が高くなっています。わざと危ない場所に作っているようにも見えますが、狭い日本で原子力発電所に適した土地はこのあたりにしかないということだと好意的に受け止めましょう。震度6弱といえば、宮城県沖地震での女川原発、能登半島沖地震での志賀原発、中越沖地震での柏崎原発が受けた揺れと同水準です。幸いなことに、チェルノブイリ原発事故やスリーマイル島の事故みたいに放射能漏れを伴う深刻な事故は発生しませんでした。日本の原発は旧ソ連やアメリカの原発と違って、地震に強いのでしょうか? 冒頭のマーフィーの法則ではありませんが、最悪の事態を考慮すると、それを上回る事故が起こるという経験則から、大地震によって、原子力発電所が制御できなくなってしまい、大量の放射性物質が敷地の外に出てしまうというケースを考えたい。
大地震+原発事故=原発震災
原子力発電所の事故に対する備えと、大震災に対する備えは単独のものとしては電力会社、地方自治体、国レベルで存在します。ですが、両方同時に起こることは想定されていません。原発の事故が起こっても、道路や通信などのインフラが正常に動いていれば、想定したマニュアルに沿って行動できます。さすがに大規模な放射能漏れを伴う事故の場合は、大勢の人達を避難させないといけないので、手間や時間がかかりますが、道路や鉄道は使えます。一方、大地震が発生した場合、原発が緊急停止するなり、きちんと制御できていれば、放射能漏れがありませんから、全国から大勢の人達が復旧のために来ます。原発事故や大地震が単独で発生した場合、万全ではないにせよ、その時点で最善の方法で、事態に対処できます。では両方が同時に起こったら?? 東海地震、東南海地震、南海地震が同時に発生して、太平洋沿岸は津波による被害が甚大、震源地に近い浜岡原発が、同時多発に発生したトラブルにより制御不能に陥ってしまったら、さてどうなるのか?? チェストップ浜岡原発のサイトで、浜岡原発がメルトダウンした場合、どのように放射能が拡散するのかのシミュレーションが掲載されています。季節風の関係で、冬は北風が吹きますが、それ以外の季節は西からの偏西風に乗って、関東地方へ広がっていきます。
ストップ浜岡原発のサイトに、原発震災についての解説や、生き延びるための方法、原発技術者の話など掲載されているため、時間がある時に、内容をみて、自分はどうしたらよいのかを考えていただきたい。原発事故を生き延びるどうすればいいのかを、まとめると、以下のとおりである。細かいことについては、検索エンジンや、ストップ浜岡原発のサイトがリンクしているHPを調べると良いでしょう。
【原発震災の対策】
1.TVやラジオ、ネットでニュース速報を確認する。
ヘリコプタからの映像が望ましい。電力会社が提供している放射線量の測定データ速報は停電や故障により提供されない可能性がある。水蒸気による煙が原子炉の入っている建物から出ているか否かをチェック!
2.浜岡原発に近い人達(静岡県東部地域)は、できるだけ遠くに避難する。
車は無理。風向きを見て、原発から風下に引いた直線に対して直角の方向に逃げること。雨が降っている場合は、室内に待機する。濡れタオルを何枚も重ねてマスクとして使うと良い。放射能を含んだチリに接触しないよう、帽子をかぶり、ゴーグルで目を守り、手袋をする。暑くても長袖長ズボンなどで肌を覆う。気密性が良いものがベターである。
3.浜岡原発からある程度離れている場合は、部屋に籠城する。
数日以内に避難しないといけないかもしれないが、外に出るよりは、家にこもっていた方がいいだろう。
(1) 放射能に汚染される前に水を大量に確保する
(2) 食料は日持ちをするものを普段から容易する 餅は温めれば食べられる。
(3) 外気が入ってこないように窓、換気扇に目張りをする。
(4) 子供、女性の場合、甲状腺をヨウ素で飽和させることにより、ヨウ素131による被害を防止する。ヨウ素剤、トロロ昆布を食べよう。
(5) 大人はビールを飲むといいらしい。ロシアのデマだと思うが、チェルノブイリ事故の際、ビールなどのアルコールを飲んだ男性は飲まなかった人よりもマシだったらしい。(本当かどうか確認する術はありませんが、情報程度で)
(6) 外出する場合は、レインコートをかぶり、防塵マスクを用いる。濡れタオルでも半分程度に抑えられる。
(7) 避難に備えて、最低限持っていくものをリュックに入れておく。
情報の棚
【お薦めの本】
「放射能で首都圏消滅 -誰も知らない震災対策-」
著:古長谷 稔(食品と暮らしの安全基金) 三五館 (C)2006 ISBN4-88320-350-6
「原発事故 -その時、あなたは!-」
著:瀬尾 健 風媒社 (C)1995 ISBN4-8331-1038-5
【お薦めリンク】ストップ浜岡原発のサイトでの解説がわかりやすくて良い
原発震災が起こったら・避難の手引き
原発放射能の基礎知識
東海地震にヨウ素剤を!
チェルノブイリ事故とスリーマイル事故からの教訓
事故からの教訓 (1) 事故は思いがけないことから起こり、予想外の経過をたどる。 (2) フェイルセーフ、フールプルーフはあり得ない。 (3) 事故の際の現場担当者は、信じられないほど楽観的である。 (4) 事故の通報は遅れる。 (5) 関係者はあらゆる手を尽くして事故を秘密にする。 (6) 事故の影響は過少評価される。 (7) 経済性のためには、少々の安全は犠牲にされる。 (8) 被害者は、因果関係がはっきりしないのをいいことに切り捨てられる。
私から追加。(9) 住民に対する避難計画は遅れる。(10) IAEAは原発を推進する団体である。(11) 真実は忘れた頃にこっそり公表される。 ・・・やり切れませんね。
橘みゆき 拝
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