余録

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余録:「世襲制限」の攻防

 「衆議院世襲ばかりの貴族院」は万能川柳の「かっぱんだ」さんの句である。政治家の世襲は川柳子の心の琴線に触れるようで、「坊ちゃんの首相続いてこの世相/春の小川」「少しずつ小粒になっていく世襲/吉田健康」などなど辛らつな句も多い▲一方「要するに弱者も世襲制なのね/めばちこ」の句も出る世相である。格差が固定していく社会の息苦しさに人々の不安は募る。そこで閣僚の3分の2が2世という政界が、流動性や活力を失う日本社会の象徴と受け取られても仕方ない▲こんな世の空気を感じ取るならば、与党からも国会議員の世襲に歯止めが要るとの声が出てきて当然だ。自民党の菅義偉選対副委員長が政権公約に議員の世襲制限を盛り込むよう提唱したのをきっかけに、にわかに注目された世襲問題だ▲こうなれば世襲議員が少なく、身軽な野党・民主党だ。さっそく党として「現職の3親等以内の親族は同一選挙区から立候補しない」との内規を公約にする方針を固め、自民党との違いを打ち出した。「自民党の世襲政治は死に至る病だ」とは菅直人代表代行の先制パンチである▲これには「立候補制限は憲法違反だ」「世襲排除は不合理」といった自民党内の閣僚やベテラン議員の反発の声もいきおいとげとげしくなる。だが自民党内では世襲制限を求める中堅・若手も少なくない。ことは世代間論争の色彩も帯びる▲ただ資金管理団体や後援会を親族が継ぐ選挙を見れば、「得票にハンデつけたい世襲議員/影無」とひねりたくもなろう。社会に競争原理の導入を強いてきた近年の政治を思えば、政治ももう少し厳しい競争原理を採用してはどうか。

毎日新聞 2009年4月25日 0時15分

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