2009-04-18 そんなわけないだろ
『星の王子様』の最初にうわばみの絵が出てくるでしょう?
あれ、私よ。
飲み込んでいるのはゾウじゃないけれど。
私の肉体なんか好きにしてもいいわ。
だからあなたの脳蓋をこじあけて、
その海馬に眠る知識を頂戴。
ペダンチックな会話が終われば、ベッドの中にて
私の肉の上を這う指を舌、
腰に回された腕に塞がれたヴァギナ。
気づかないだけでしょうけれど、
私はヴァギナにはえた歯で噛み付いている。
いつかそれを噛み切る瞬間が訪れるでしょう。
教えてあげないけれど。
そう、何でも大切なことは教えてあげない。
あなたには何も教えてあげないわ。
私の脳みそにぱんぱんに詰まった知識、
その片鱗を見せて欲しい?
何も教えてあげない。
知りたいことは教えてあげない。
どれだけ切に願っても。
対価を頂戴。
あなたには何も期待していないわ。
別にいいの。
知らないことは罪じゃない。
知ろうとしないあなたは愚かだけれども。
私より知らないことは当然のこと。
私より6年も短いあなたの生。
でも致命的な私に教授するものがない。
私はいつでも知恵の実を食べるがごとくに男の精を吸ってきた。
その知識と引き換えに、私を好きにすることが出来たのよ。
だからそれを……」
そこまで愛される自信、その傲慢さはどこから生ずるか、甚だ不思議だね。
無知蒙昧さは底知れない。
どこまでお前は愚かなのか。
もはや恋愛を動機とするなどと、
恋愛ばかりを描くなどと、
どこまで私は成長のない女ではない。
残念だったねぇ。
何人もの男と閨をともにして、
何人もを踏みつけて、
逆に踏みにじられ、
いつしか漂白されたこの精神は、
もう、
そこについてこれない君は取り残されてしまった。
2009-04-17 マニアの受難
『平家物語』、アマゾンで探す限りでは「これかな」と思うものは決まっている。
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/07
- メディア: 文庫
でも本屋で手にとって見てみたいので、どうせ近所の本屋にはないことがわかっているのに、
しつこく探して回っている…成果などない。
引きこもりになって2ヶ月。
そう思い、綿密な旅行計画を立てたのだが、
体力も落ち、精神的な磨耗も激しい。
知識は広がっているが、私は机上であれこれやっているだけなのは阿呆だと思っているので、
実際に現地を訪れたいのだ。そうなのだ。
知人にどんなに勉強してもそこまでの知識は得られないと思われる、
素晴らしい海馬の持ち主がいるが、書物の中の世界だけで満足しているので、
ちっともうらやましいと思わない。
その知人みたいな人間は好きではない。
また、幾つかのSAに停車し、そこでお土産を見るのも楽しみだ)で、
もちろん屋島に行きますよ!
この計画を立てたとき、ついでに壇ノ浦にすっごく行きたくなった。
平家ゆかりの厳島神社(広島旅行の話をしたら、それしか知らないという理由で
テーマも絞らずにこの名を挙げた人がいたが、
そういう旅行は嫌いなので、彼と一緒に旅行はしないと決めた)は計画から外したのに、
壇ノ浦へはすっげー行きたい。
宗像信仰なんて水軍研究には欠かせないのに、厳島より壇ノ浦が魅力的。
わだつみの都を目指して飛び込む描写が叙情的で素晴らしいからだよね。
しかしここからは遠すぎる。
名古屋までは高速バスでそれほど遠くはないが、京都となると辛かった。
銀河鉄道999が表紙を飾っているのを見て、
思わず買いそうになった…があんなペラペラの紙の雑誌が結構値段がしたので止め。
時刻表の旅をするのも良かったかもしれない。
記紀の旅だ。
素晴らしい。
実際に人間と関わっていくことは私には難しい。
wild sideを歩いて行くのだろう。
それでも私はその人間が築いてきた時間の蓄積の中では生きていける。
過ぎ去ったものの堆積の内で、死者たちと仮初めの対話。
2009-04-08 トリック・スター
ビョルン・アンドルセンを柱の影から見守ると、
生臭い潮風がまだ肌に冷たく過ぎていく。
皮膚に粘りつく感触に頬を噛む。
あの巻き毛を掴めたら、そう願う。
夜になると木炭を放り込んだ赤ワインに胡椒入りの蜂蜜を加え、
甘ったるさにうんざりしながら咽喉に流し込むの。
横たわった寝台は三角形。
私一人で占領するトライアングル。
辟易するほどにまとわりつくなら、爪先に少し、
あなたの場所を分けてあげてもいいかもしれない。
退屈で単調なメールなんかに返事をする気も起きなかった。
2009-02-19
私の視覚が呼び覚まされる。
今日の午後、決行される。
イニシエーションとして痛みを伴うのは仕方がないことなのか。
それは必然としての痛み?
首が長い。
目頭から鼻にかけてのラインが美しいと思っていたが、
顎から首にかけてのシルエットも目を見張るものがある。
もっと鮮明に見たいものがある。
22センチ高い場所からの眺めは、私には背伸びしてもわからない。
もう難しい単語を振りかざして、
衒学的に振舞うことが面倒になっている。
私の知識なんて浅い。
浅い知識を、いや、ないものを、さもあるように単語ばかり空回りさせて、
私は浅はかだ。
彼はさかさまになって下から私を見上げて、
視点を変えて楽しんでいる。
あなたが図書館から借りてきた澁澤龍彦の「うつろ舟」に
さかさまになって眠る鳥のことが書いてあったね。
その本はずいぶんと昔に読んだので、内容をすっかり忘れてしまっていた。
私の本棚にはあるのだけど。
私の頭はがらんどう。
それでも私の書庫にある小難しい蔵書が君には眩しい?
がらんどうを叩けばカランカランと音が響き渡って木霊する。
その曇りのない音を聴いて私は、書き留める。
■欲望ディスプレイ
http://d.hatena.ne.jp/automate_tomo/20081216
12月にはこんなことを書いていたというのに、
私はいつのまにか彼を恋人と認識していて、
現在の恋愛感情に疑問も抱かない。
「やっと二人きりになれた」と君は言うけれど、
本当に二人きりになるためにはまだ些か壁がある。
「他の女を抱いてみたいと思ったことないの?」
「なくはないけれど、別にいい」
他の女を抱くのなら、今のうちにして欲しい。
私のことが好きだけれど、好奇心から他の女を抱いてみた、と
今なら許せるから。
他の女はどうだったか、感想を訊いてみよう。
好奇心を実行することは裏切りではないけれど、
私が惨めな気分にならない今のうちに実行して頂戴。
まだ、今なら笑ってあなたを踏み躙れるから。
2009-02-16
■まぐわい
荒々しく私の口の中に突っ込まれ、
放出される精液を直に飲み込むと、
生臭い苦さが咽喉を粘性を伴って通り抜ける。
ペニスはそのまま勃起し、
私はその根元に指を沿わせた。
再び組み敷かれ、男の下で脚を開く私は、
押入れの戸の隙間に視線を固定したまま、
声を上げるけれど、
痛いのか何なのか、麻痺している。
あなた、異界への扉を開きたくて、
私の股に顔を埋めるの?
あなた、私のどこかにそれがあると信じているのね。
それは正解。
でも私をひっくり返したところで、見つけられるかしら?
そんなところを弄ったって駄目よ、
自分で探しなさい。
答えは私だから。
私は気紛れだから。
私を抱きしめても、私はあなたのものにならない。
あなたは私に追いつけない。
私を取り込もうと力を込めているのね。
それでも私は流動する。
次の瞬間には向こう側にいるわ。
手が届く?
■共作
エスキースは幾らでも描ける。
源泉は枯れることを知らず、私は自分の中に確かなものを見る。
それでもエクリチュールは別の行動。
衝動だけで描けるほど単純ではなくなってしまった、
年老いた私にはあなたの若いだけのリビドーが目映い。
それなら私と手を組んでみない?
彼を伸し上げるために私が書かなければならない。
煽動して先導して船頭になる。
そうね、私、あなたより6歳上なのよ。
出会った時には22歳だったあなたも今年、25歳になるのね。
自分の「初めて」は総て私と体験したものだというのに、
私のどこにだって先駆者がいて、自分だけの手付かずの部位を見つけたくて仕方がない。
君は私の初めてに触れようとして何度も私をオルガスムにやる。
私を所有したくて堪らないのね。
でも、大丈夫よ。
安心して。
それに触れたままでいて。
連れて行ってあげる。