「感染拡大防止は難しい」−米CDC
豚インフル、米国で拡大するおそれ
【ニューヨーク24日内藤毅】メキシコの首都メキシコ・シティなどで感染者が相次いでいる豚インフルエンザに対し、米疾病対策センター(CDC)は24日、米メディアに対する記者会見を行った。同局は、米国内でも感染拡大が迫っており、すでに防止することが難しい段階に入っていると語った。
この日、CDCのリチャード・ベッサー局長代理は、メディアにカリフォルニアとテキサスで発見された8人の豚インフルエンザ感染に対し、メキシコと同じく人から人への感染である可能性が高いと語り、「懸念が拡大している」と述べた。
今回、発見されたインフルエンザ・ウイルスは、鳥と豚、ヒトのインフルエンザ・ウイルスが混合した新種。鳥インフルの遺伝子特性は北米大陸で、豚インフルは北米やヨーロッパ、アジアなどで広く見られるウイルスの特性を持っていると言う。
ベッサー氏は、メキシコでの感染者14人から採取したサンプルのうち、半数が今回の豚インフルと同じA型H1N1型と判明。メキシコで感染拡大しているものと、同じ株である可能性が高いと見られる。しかし、死亡者が出ているメキシコの症例とは違い、発熱と嘔吐、下痢と言った比較的軽い症状のみで、いずれも快方に向かっている。
CDCは予防ワクチンを国内に配布する準備も進めているが、すでに感染爆発が起こる下地ができている可能性もある。備蓄してあるワクチンも今回の豚インフルに特化したものではなく、「遺伝子が適合する」株であるため、どれだけ効果があるか分からない状況だ。ベッサー氏は、「(予防接種や隔離などによる)感染拡大への対策を打つには、遅きに失した可能性も」と語っている。
一方、米政府はメキシコなどへの渡航制限・中止勧告は出していないものの、感染が報告された地域などを特定。風邪のような症状が出た場合、速やかに医療機関で診察を受けるよう、薦めている。
メキシコのインフルエンザ感染は3月から見られるようになった。首都メキシコ・シティなど主に都市部の青年・壮年層に多く見られ、すでに千人が感染。このうち、68人が死亡している。このうち、豚インフルに感染していることが明らかになったのは20人で、メキシコ・シティでの死亡者は13人にのぼる。
メキシコのフィリペ・カルデロン大統領はこの日、臨時閣僚会議を行い、対策を討議した。メキシコ・シティではすでに、大学を含む教育機関や図書館、政府系の劇場、博物館などを緊急閉鎖されている。
2009/4/25 22:11