京都市東山区の建仁寺から今年1月に十一面観音座像を盗んだなどとして三重県四日市市の会社役員が逮捕、起訴された事件で、京都府警や京都地検が盗まれた仏像の価格設定に困っている。窃盗事件では通常、起訴状で盗品の時価を明記して被害の重大さを表すが、寺側が「仏像は信仰の対象であり値段などつけられない」としているためだ。京都地検幹部からは「求刑に悩みそう」との声が上がっている。
阿部逸男被告(59)が、建仁寺の他、東寺(同市南区)からも昨年12月に不動明王立像を盗んだとして、2件の窃盗罪で起訴された。同10月に山科区の毘沙門(びしゃもん)堂から毘沙門天立像を盗んだ容疑でも再逮捕されている。いずれも文化財指定されていないが、十一面観音座像は江戸時代、不動明王立像は平安時代後期の作品とされ、共に「寺宝」だ。毘沙門天立像も鎌倉時代初期の作と伝わる。
地検や府警によると、寺側は「金銭的価値など考えたこともない」と回答。専門家に鑑定依頼することもできるが、「業界」での価格は幅がありすぎるためやめ、2件の起訴状では「時価不詳」とした。
同種事案の数少ない例としては、奈良・法隆寺や東京・浅草寺などで仏像18体を盗んだとして、住所不定の男が窃盗罪などに問われた事件で、時価合計が約5000万円と算定されたケースがある。懲役5年6月の求刑に対して奈良地裁葛城支部は07年12月、懲役3年の実刑判決を言い渡した。起訴後に価格を出すことも可能だが、今回は寺側の意向が強く、検察側もあきらめ気味。求刑をどうするのか、悩みは増すばかりという。【熊谷豪】
毎日新聞 2009年4月11日 15時00分(最終更新 4月11日 15時00分)