2009年4月25日 12時58分 更新:4月25日 13時21分
豚インフルエンザの人間への感染とみられる事例が発生したことで、厚生労働省や農林水産省などは対応に追われた。【清水健二、奥山智己】
25日に会見した厚労省の難波吉雄・新型インフルエンザ対策推進室長は「正しい情報に基づいた冷静な対応をお願いしたい」と呼び掛けた。全国の検疫所に対しては、多数の死者が出ているメキシコからの入国者についてサーモグラフィー検査などで健康状態のチェックを徹底するよう要請したことを明らかにした。
検疫所でインフルエンザ感染が確認されればウイルスの型を確定させる検査に入る。来週には、数時間以内に確定できる態勢を国立感染症研究所に整えるとしている。
米国やメキシコへの出国者には、マスク着用や手洗い、うがいの励行などを求める文書を空港で配布する。外務省のホームページでも海外渡航者向けの注意喚起を始めた。
政府の新型インフルエンザ対策行動計画によると、海外で新型インフルエンザ発生の疑いが生じれば世界保健機関(WHO)の宣言がない段階でも、関係閣僚会議を開いて行動計画に基づく「第1段階(海外発生期)」の態勢を取る。その際、発生国から航空機の到着は成田▽関西▽中部▽福岡--の4空港、客船は横浜▽神戸▽関門--の3港に集約され、発症が疑われる入国者は隔離される。発生国からの外国人来日はビザ発給が制限され、発生国への出国についても渡航延期の勧告が出される。
ただし、今回のケースで検出されているウイルスは従来あるH1N1型で、警戒されている鳥インフルエンザ(H5N1型)とは異なる。厚労省の担当者は「H1N1でも感染力や毒性が非常に強ければ新型インフルエンザと定義されるが、まだ判別がつかない」と話している。
一方、農水省は24日夜、動物検疫所に対し、家畜用の豚の輸入時に熱やせきなどインフルエンザの症状が見られたら精密検査するよう指示した。
農水省によると、豚インフルエンザは通常弱毒タイプなので、豚がかかっても1週間程度で自然に治り影響はほとんどない。このため家畜伝染病予防法の監視対象外で、国内でのこれまでの発症状況は不明だ。感染した豚が輸入されても殺処分を命令できない。
24日時点で家畜用の豚の輸入はないが、08年、米国から品種改良のため約160頭が輸入された。メキシコからは過去4年間は輸入がないという。