2009年04月20日 社説 


[週刊新潮誤報]

検証には第三者の目を


 これでは「自分には甘い」と言われても仕方がないのではないか。記者2人が殺傷され、すでに時効になっている朝日新聞阪神支局襲撃事件などをめぐり、「実行犯」を名乗る男性の告白手記を4回にわたって掲載した週刊新潮は、手記が誤報だったことを認め、今月23日号で編集長名の謝罪記事を載せた。

 週刊誌ジャーナリズムにとって前代未聞の不祥事である。

 どうして誤報に至ったかを説明しているが、一言でいえば裏付け取材の甘さが今回の誤報を招いたといっていい。大スクープを狙い、記者とデスク、編集長ら、通常と異なるごく少数のチームで進めていたことも要因だろう。取材過程で浮かんだ疑念を一つ一つつぶす作業を怠った。

 問題は手記掲載前に、週刊新潮の問い合わせに、当の朝日新聞社が証言を否定する回答をしたにもかかわらず、掲載に踏み切っていることだ。

 男性自身の証言内容にしてもそうだが、男性の挙げた関係者のマイナス情報を切り捨て、関係者のあいまいな情報を逆にプラスに転じて評価している。スクープ狙いのあまり、手記の男性やその関係者から綿密な裏付け取材をした形跡がみられないのである。

 編集長の謝罪は「こうして『ニセ実行犯』に騙された」と題し10ページにわたる異例の扱いとなっている。にもかかわらず、気になるのは「騙された」と自らを被害者の立場に置いていることだ。もし、他のメディアが同じような誤報をしたら、週刊新潮は「騙された」と同じトーンで記事にするだろうか。冒頭で「自分には甘い」と指摘したのはそういう意味だ。

 メディアは情報を記事にする過程で幾重もの関門を設けている。常に誤報の危険性をはらむことを認識し、防止の取り組みに力を注いでいる。それでも誤報を完全になくすことは容易ではない。

 誤報に気づいたときは速やかに訂正し、さらに重大な構造的な問題があると判断した場合は、積極的に第三者機関を設置して、自社の取材体制を外部の厳しい目にさらす必要がある。

 自らを厳しく検証する姿勢をとることが読者の信頼を回復する道につながるはずだからだ。

 週刊新潮の一連の対応からは週刊誌ジャーナリズムの取材の在り方を自ら厳しく点検する姿勢が感じられない。再発防止策まで具体的に挙げないことには読者の信頼を取り戻すことはできないだろう。

 週刊誌がこれまで新聞に先んじて疑惑を報じた例は珍しくない。疑惑の段階から果敢に記事にし、実際に事件になったケースもある。出版不況による雑誌の休刊が相次ぐ中で発生した今回の誤報は、このような週刊誌ジャーナリズムに大きな汚点を残した。

 マスメディアによる過去の重大な誤報事件では社長が辞任したり、番組そのものを打ち切ったりするなど厳しい対応が見られた。

 週刊新潮は今回、誤報の責任をどのようにとったのだろうか。読者が納得するようなけじめをつけてもらいたい。



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[毒物カレー事件]【04月23日】
[結核]【04月22日】
[未明離陸回避]【04月21日】
[週刊新潮誤報]【04月20日】
[学力テスト]【04月19日】
[消費者庁]【04月18日】
[調書漏えい有罪]【04月17日】
[痴漢逆転無罪]【04月16日】
[小沢氏進退問題]【04月15日】

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[給食費値上げ]【04月09日】

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