車窓の風景といえば、のんびり走るローカル線沿線の風光明媚(めいび)な情景が思い浮かぶ。そんな景色とは縁のないような新幹線だが、記憶に残る印象的なシーンがある。
上京中、初めて明石海峡大橋を見た時だ。海側に座っていて目に飛び込んできた長大橋の大パノラマは大変な驚きだった。あの感動は今でも忘れられない。
今春オープンした新広島市民球場は新幹線沿いにある。スタンドの一部をカットして、球場内を見えるようにするなど、新幹線の乗客にアピールする設計にしたという。何といっても観光、ビジネスの大動脈。車窓から見た人をいざなう。うまいアイデアだ。
新刊「新幹線の車窓から」(栗原景著、メディアファクトリー刊)が東海道新幹線から見た百景を取り上げている。富士山や浜名湖といった景勝地だけでなく、変わった建物や看板などさまざま。伊吹山や掛川城など見過ごしていた名所にも気付かされる。
著者は、車窓を楽しむために「こだま」の利用を勧める。もちろん「ゆっくり走るから」だ。懐かしい列車の旅が味わえるという。
いよいよゴールデンウイーク。早いところでは、きょうから連休の企業もあるようだ。こだま号でゆったりした旅をしてみると、これまでとは違った車窓の風景が見えるかもしれない。