△久世と佐伯の会社物語??▽
相関図メイカーでちょっと遊んでみた。http://www.tolab.jp/sokan_make.php?id=8347692674708329
エルミタージュの面々を会社ドラマに放り込んでみたら、笑える結果が。
佐伯と久世がラブラブでやんの!
で、男ばっかりの会社なのに、やたらと久世がモテまくっている結果が。
これ、作った人って、腐女子???
すみません。ちょっと、今書いてる小説に詰まってるんです。
遊びたかったのよ。 |
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相関図メイカーでちょっと遊んでみた。http://www.tolab.jp/sokan_make.php?id=8347692674708329
エルミタージュの面々を会社ドラマに放り込んでみたら、笑える結果が。
佐伯と久世がラブラブでやんの!
で、男ばっかりの会社なのに、やたらと久世がモテまくっている結果が。
これ、作った人って、腐女子???
すみません。ちょっと、今書いてる小説に詰まってるんです。
遊びたかったのよ。 |
目次はこちら
間違いない。隣の女が何事かとこっちを見た。
俺は、留まろうとする足を叱咤して、そちらへと歩を進める。 「久しぶりですね。おじさん」 「隆大か?」 本当に久しぶりだ。俺が勘当になってからだから、十五年は逢っていないことになる。 背の低い隆継叔父は、嫌な目付きで俺を見上げた。 「ふん。よく、声なんぞ掛けられたな。相変わらず、男に尻振ってるらしい」 蔑むような視線に、身体が凍りつくのを感じる。 だが、ここで負ける訳にはいかないのだ。蔑むような視線は、俺の後ろに立つ総一さんと五実も含んでいる。 「それは…、」 誤解だ。と云う一言さえ、俺の喉元に張り付いたまま出ない。 しっかりしなきゃ。俺の所為で佐伯の兄弟まで誤解されてしまう。そう思うのだが、足まで震えてくる。 「弟の恋人に何か?」 「ヒロ兄に、えらく失礼なこと云ってくれたじゃん。おじさん」 俺の両肩を抱くようにして、総一さんと五実が、双方から歩み出た。 その暖かさに、ようやく足の震えが止まる。 「弟の恋人だ? お前らも、ホモ野郎のお仲間か?」 「うちの弟が、ゲイだろうが、それは関係ないでしょう。今、私が問題にしているのは、まるでヒロが誰とでも関係するかのような云い方をなさったことです。取り消してください」 総一さんは、俺を隆継叔父の視線から庇うように、俺の前に立った。 五実は、俺の背中を支えるような形で、隆継叔父を睨み付けている。 「お前らには関係の無いことだ。うちの恥だからな。そいつは」 鼻白んだ様に、隆継叔父が吐き捨てた。 「関係ないって? こいつは俺の恋人だぜ?」 耳元で囁かれた、聞き覚えのありすぎる声に、俺は振り向いた。今まで隣にいた五実を押しのけた佐伯がそこにいる。 「他人の恋人に云いたい放題もいい加減にしてくれよ?」 俺の肩をぎゅっと抱きしめ、佐伯は剣呑な目付きで、隆継叔父を睨んだ。秀麗な佐伯の顔が、静かな怒りを湛えているのは、独特の迫力だ。 隆継叔父は気おされたように、一歩下がる。 それを見て、俺もやっとこらえていた息を吐き出すことが出来た。 「叔父さん、俺のことは構いません。でも、俺がゲイになったのと、父さんや母さんは関係ありません。それだけ、云って置きたかったんです」 そう、本当にそれだけだ。 だが、あの頃の俺は、それだけのことが云えなかった。 親族会議の席で、父や母を責める叔父の言葉に一言も云い返せず、ただ黙ってうつむいていた。 従兄弟たちが、一方的な叔父の言葉に、怒るのさえ、まるで遠い国で起こっている出来事のようだった。 あのとき、俺が顔を上げていたら、何かが変ったのだろうか? 「じゃ、失礼します」 軽く頭を下げて背中を向ける俺に、隆継叔父は、フンと鼻を鳴らしただけだった。その態度に、思わず、余計な一言を投げかけてしまう。 「叔父さん、浮気はほどほどにしないと、純子ちゃん、悲しみますよ」 立ち去る隆継叔父の背中が、ぴくりと震えた。 ぎろりと俺を見た目が据わっている。 まずい。と俺は思った。この叔父は腕っ節自慢だ。 案の定、俺に掴みかかってくる叔父を、俺は一瞬どうしようと迷った。 柔道三段の俺が、叔父を投げ飛ばすのは簡単だが、叔父ももう年だ。 その叔父の足を、佐伯が軽く払う。 たたらを踏んだ叔父を、佐伯が支えた。 「年寄りの冷や水もいい加減にした方がいい。俺の隆大は強いですよ」 佐伯に支えられた叔父は、汚いものでもあるかのように、パンと佐伯の腕を払う。 だが、ここで騒動になって、不味いのは自分の方だと思い出したらしい。そのまま、無言できびすを返す。 一緒にいた女も、慌てて後を追って行った。
「ヒロ、大丈夫か?」
息を付いた俺の顔を、総一さんと五実が覗き込む。佐伯の腕は、俺の肩を、包み込むように支えてくれていた。 「大丈夫です」 俺は顔を上げて笑う。笑える。そのことが嬉しかった。 それまで、何ごとが起こったのかと、遠巻きにしていた野次馬も、ことが納まったらしいと知るや、クモの子を散らすように去っていく。 ロビーに残っているのは、俺たちの他は、ホンの数人だ。自販機の前にあるシートに座らされ、総一さんの指示で、五実がコーヒーを俺に持ってくる。 佐伯は俺の隣に腰を下ろした。 暖かなコーヒーを口に含むと、大分落ち着いてきて、総一さんが異常なほどの気遣いを示してくれていることが判る。 「総一さん、何故?」 問いただそうとした俺は、悠里の姿に口を閉ざした。 「何かあったんですか?」 「いや、大丈夫だ。ちょっとしたトラブルだ。もう片付いたよ」 「そうですか」 総一さんの隣にちょこんと座る悠里を見て、俺は全て理解する。悠里を見守る総一さんの目線は、先程まで俺に注がれていたものと同じだ。 悠里も似たような目に合ったことがあるのだろう。 レイプやいたずらをされた時、問題になるのが、二次的なレイプとされる、警察官の問いただしや、家族からの詰問だ。 俺は、相手はヤクザだし、証拠も残っていたので、明らかな被害者扱いだったから、警官には不信は感じていないが、家族からのまるで腫れ物に触るような扱いには参ったものだ。 その上、親族会議でのつるしあげが加わって、只でさえぼろぼろだった神経はささくれ立って、大の男の俺でさえ、一時期は、大勢の場所が怖かったくらいだ。 悠里がどんな風だったかなど想像が付く。 「強いな」 「え?」 ぼそりと呟いた俺の言葉を、佐伯が聞きとがめた。 「強いよ。お前の家族は。みんな地に足が付いてる」 「そうか?」 照れたように、佐伯が笑う。 「あら、こんなところにいたの? 食事に行くわよ」 宿のおかみさんと話していた、香澄おばさんが、今、気付いたかのように振り向いた。 多分、何が起こったかは聞いているだろうに、知らないフリをしてくれる。 その優しさに、俺はもうひとつ、勇気を貰った。
翌朝は一面の雪景色に覆われていた。
「うわ〜、どうりで寒いと思った」 「東京じゃお目にかかれないな」 五実の上げる喚声に、俺も同意する。 「お前は俺が温めてや…」 横合いから余計なことを云う佐伯の頭を、俺は思いっきり殴り倒した。 佐伯がその場でうずくまる。 「今日は近場でゆっくりしましょう」 「温泉めぐりでも行きますか?」 香澄おばさんの提案に、俺はプランを提示した。悠里がうなずけば、出発だ。
それぞれが準備に、部屋へと戻ると、佐伯が俺の手を引いた。
「お前、最近優しくないぞ」 俺は黙って佐伯を立たせ、唇の端にキスをする。 「照れ隠しだ。分かれよ」 真っ赤になった佐伯を置いて、俺は離れの外へと出た。 離れの廊下は、ガラス窓を隔てて、庭に面している。一面の雪景色が太陽に反射して、まぶしい光を放っていた。
俺はがらりと窓を開いた。
冷たい空気が廊下へ流れ込んでくる。 思いっきりそれを吸い込む。 ゆっくりと吐いた息が真っ白だ。 ぽつりと呟くのは、魔法の呪文。
「英次、愛してるぜ」
<終わり>
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次回イベントは、九州です。
お里帰りイベント。 本を売るより、友人たちと会って、美味しいごはんを食べる為に参加しているような気がします。 ↑トリメさん画の、このポスターが目印!
それに、無料配布本。夏のコミケの残り(発見しました)と、冬コミのアデイール×誠吾です。
サークルブースは、ハ23aです。
来られる方は、どうぞよろしく。 |
第三弾。何処が新年だといわれれば、そこまで。
「俺はもう行くぞ」
「ん…」 とにかく、眠かったリベアは、ベッドを抜け出す男がそう云うのに、聞いているのかいないのか、良く判らない返事を返した。 そのまま、夢の中をさまよっていたリベア・コントラが、西の宮の奥に位置する、蒼の魔術師の私室で目を覚ましたのは、蒼のソルフェースが声を掛けて出て行ってから、数時間は経ってからのことだ。 頑丈なだけが取り得の、粗末な木のベッドで、むくりと起き上がると、ごそごそと身支度を始める。 「まったく、何時まで盛ってんだか。あの野郎」 ソルフェースと『契約の契り』を結んで、数年になる。だが、若く美しい魔術師が、自分のような普通の男を相手にするのも、あと数年だろうと踏んでいた、リベアにとっては不本意なことに、その数年経った今でも、朝まで交わっていることも少なくは無い。 だるい身体を叱咤しつつ、部屋の隅に置かれた、瓶の水で身体を清め、服を身につけた。 腹は減ったが、もう厨房は昼の支度に掛かる頃だろう。 昼まで我慢できないことはないと、リベアは身体でも動かすつもりで、剣を腰に、庭へと出た。 「あら、リベア。今年は帰らないの?」 顔見知りの女魔術師・朱のモニクが、杖術の練習でもしているのか、庭で一人杖を振っている。 「ああ。去年で懲りた」 秋の収穫期が終われば、冬の納期を迎える。収穫したものから、領主に税を納め、残りを使って、一年を過ごす為の保存食を作ったり、春の市で売り出すための商品を作ったりするのだ。 冷たい寒気にさらされるこの納期は、外敵も攻めて来る心配も無く、騎士の半数が休暇をとり、実家へと帰るのが普通だ。 リベア自身は、これまでも休暇を願い出たことなど無かったし(国境騎士団時代は、それも重宝されたのだ)、第一騎士団に移ってからもそうするつもりだったのだが、さすがに貴族の子弟の多い第一騎士団では、『納期休暇は、交代で絶対に取れ』と命令されてしまったのが、昨年の話である。 仕方なく、実家へと帰ったのだが、『魔封じの剣の騎士』の帰還は、狭い村中に知れ渡り、皇女を助け出したときの冒険譚を、隣町からまで来た連中にせがまれるのには、まいってしまった。元々、そう口は上手くない方だ。 しかも、リベアの母親は、リベアのかせぎを堅実に弟たちの教育に使っているらしく、昔と変らぬ狭い住居に、数十人もの人々が押しかけるのは、迷惑にしかならないだろうと、早々に、実家を辞して、城下に戻ったという経緯がある。 「で、今年は、ソルフェースの居候なの?」 「ここなら、無理やり押しかける連中はいないしな」 「王宮の奥の魔術師の宮だもの。確かに安全だわ」 低く高く詠唱の声が響く。音として聞き取れはするものの、何を云っているのかはまったく不明なソレは、魔術の詠唱だ。 安らかな気持ちを引き出す、聞き覚えのある音に、リベアは耳を澄ます。 「ソルフェースの詠唱だわ。珍しいことね、納期の祈りにあんな大掛かりな魔術を使うなんて」 納期の祈りと云うのは、新しい年を迎えるために、家の戸口に飾る南天の枝に、魔術師が魔よけを施すことを云う。 冬の厳しい寒さに引きこもる家の中に、魔物が入って来られないように、と施すものだが、この城下自体が大きな守護陣に護られていることを考えると、ほんの気休め程度でいいはずなのだ。
低く高く、高く低く、繰り返し、まるで母親の胸で子守唄を聞いているような気持ちに惹かれるまま、リベアは西の宮の広場へと向かう。
広場では、南天の枝を握った、城下の人々が、まるで詠唱に酔うように、祈りを捧げている。 中心にいるのは、詠唱を唱える蒼のソルフェース、その人だ。
ふっと詠唱が止んだ。閉じられていた紫紺の瞳が、じっとリベアを見つめる。
すっとその手がリベアに向かって差し出された。 「焔の剣の騎士よ。剣を」 何かに魅入られたように、リベアはその瞳から目が離せない。しかも、何故か自分が腰に下げてきたのは、普段使いの厚刃の剣ではなく、『魔封じの、焔の剣』だった。 剣を抜く。 年に数回しか使わない筈の剣は、いつもリベアの手によく馴染んでいた。 リベアの抜いた焔の剣を、捧げ持つように、また詠唱が始まる。 焔の剣から、水竜がゆっくりと身体を起こすように、頭をもたげたかと思うと、ソレは瞬く間に大きさを増し、上空を旋回すると、また、焔の剣の中へと戻った。 ぱちりと鞘へと剣が戻される音で、リベアははっと顔を上げたが、その時には、広場中が水を打ったような静けさを湛えていた。 ソルフェースがそっと唇を、リベアの唇に押し当てる。 その口付けに、抵抗できないほど、魅入られている自分を、リベアははっきりと自覚していた。 「焔の剣の騎士の護りも、祈りにくわえられた」 ソルフェースが、広場に向かって宣言する。広場中が喚声に包まれ、リベアは囲まれる中から、ほうほうの体で逃げ出した。
ソルフェースの私室に戻っても、リベアの中のざわつきは納まらない。
水の竜はソルフェースの半身。それを収めた剣を、リベアは無意識にかき抱いていた。 「駄目だ。捕まった」 蒼の魔術師の紫紺の瞳が自分を捉えた瞬間。リベアは何も考えられなかった。 いや、あの魔術師の詠唱を子守唄のように感じている時点で、もう捕まっているのかもしれない。
今夜もあの魔術師はここへ素知らぬ顔で帰ってくるのだろう。
そうしたら――――。 魔物と契約を結んだ人間の行く末など決まっている。それでも……。
<おわり>
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初詣ネタ短編二つ目。
ツンデレメガネ久々の登場。つーか、魔窟小屋のお題では、普遍なカップルになってきたような。
残り香より。
「初詣?」
「ああ。行こうかと思うんだけど」 思うんだけどと云われても、小さな田舎町だ。この町にあるそんなところは、たかが知れている。 「去年はお寺に鐘をつきに行っただろう? 今年もやるんだよな?」 「うん、あれは青年団の役割のごたるモンやから」 たかが百八つ。されど百八つ。町の年寄りや子供たち、後は観光客を動員しても、百八人は無理だ。足りない分は青年団の連中でつくのである。 「その後に、お前とお参り出来る様なトコって無いのか?」 「う〜〜ん。お稲荷さんなら、何処でもあるけんど。周りに明かりが無かやろ? どっかに足とられたら、怪我するが」 とにかく、関東育ちの一之瀬には理解できないだろうが、ココはものすごい田舎だ。 東京みたいに、三が日の前から、掃除を整え、小さな稲荷神社に明かりを点しておくなんてことは、まず無い。 あっても、精々、ロウソクが灯っている程度だ。 「大きな社なんか、町には恋神社ぐらいしか無かが」 恋神社というのは、クヌギ山の山頂にある花菱神社のことだ。古い恋人たちの伝説になぞらえて『恋神社』と呼ばれている。 バレンタインイベントやらの町興しの材料にした故か、いつの間にか『恋愛成就』の神様と崇められている。もちろん、若い観光客の半分はこの社もお目当てだ。 初詣などに行けば、九割がたはカップルだろう。 確かに花菱神社ならば、新しく建替えも済んで、ちゃんと夜中でもお参り出来る様にはなっているが。あの神社に男二人で初詣に行くのは、ちょっと気が引ける。 「そうだな。朝になってから、俺一人で行ってくる」 俺のためらいが伝わったのか、一之瀬は寂しそうに呟いた。 「何で、そげん、二年参りに拘ると?」 「いや、二年参りに拘ってる訳じゃないんだ。絵馬を奉納したいと思って」 「絵馬?」 「ああ。これから、お前とずっと、ここで生きていきますって、誓いの絵馬を、な」 「高良」 俺は思わず、一之瀬を名前で呼んでいた。そこまで考えてくれていたんだ。 「お前のばあさんがいれば、その人に誓ったんだろうけど、それも出来ないだろう?」 もちろん、ばーちゃんが死んだから、俺はここに帰って来たんだから、生きているばーちゃんに一之瀬が会うことは無かっただろう。でも、そう思ってくれたことが嬉しかった。 「絵馬の奉納はしたいけど、お前を好奇の目に晒したい訳じゃ無い。大晦日なら、青年団の連中は、そのまま酒盛りだろう。お参りに行っても、夜の闇に紛れてしまえば、お前と二人で奉納できると思って」 確かに、こんな田舎で、俺と一之瀬がそういう仲だと知られるのが得策だとは思えない。 「いいよ。恋神社なら、巫女にさえ顔を見られなければ、見つかる心配も無いだろう」 巫女だけは、地元の学生バイトだが、奉納しているところを見られなければ、それでいいだろう。
「はちじゅういちー、はちじゅうにー」
鐘が鳴るたびに、青年団が声を張り上げる。 冷たい闇を裂くような、冴え冴えとした鐘の音が、小さな町中に響き渡った。 寺の境内では、つき終わった孫連れのじーさんばーさんや、観光客が、振舞われる甘酒やお汁粉で、身体を温めていた。 地元連中は、この後、寺中にある小さな稲荷神社をお参りして、帰途に着くだろうし、観光客のうちのカップルは、寺の参堂を抜けて、恋神社へと向かう筈だ。 「ひゃくよんー、ひゃくごー」 あと、三つ。一之瀬が引き綱を引く。 「ひゃくろくー」 目線で呼ばれて、俺は近づいて行った。さすがに青年団とは名ばかりの、中年団には疲れが出はじめ、九十を越した辺りから、一之瀬が一人で鐘をついている。 「いいか。しっかり持ってろよ」 俺の手に引き綱を握らせ、一之瀬が上から支えた。 「ひゃくななー、ひゃくはーちー」 最後の鐘がゴーンと残響を残して、辺りを静寂に落とす。 残響が消えるのと同時に、周りから拍手が起こった。 「あけましておめでとう!」 「良いお年を」 お互いに挨拶を交わして、三々五々に消えていく。残って、酒盛りを始めるもの。家族と共に稲荷神社に参るもの。そのまま、帰っていくもの。 俺と一之瀬は、帰る連中から、少し距離を取り、いなくなったのを見計らって、恋神社への道を辿った。
一之瀬が絵馬を買う横で、俺も一つ購入する。
「鮎?」 「俺も、商売繁盛でも願おうかと思って」 俺は、家の土間を改装した、小さな喫茶店をやっている。不自然では無い筈だ。 第一、この神社自体は、元々は恋愛成就の神様ではなく、子宝や、病除け、商売繁盛などの神様なのだ。 あちこちで絵馬に願い事を書くカップルたちの姿が見える。俺たちもそれぞれに場所を見つけて、慣れない筆ペンに四苦八苦しながら、願い事を書き付けた。 「俺は先に奉納してくる」 そう云う高良の手にした絵馬には、癖のある、だが、力強い字が絵馬の真ん中に記されている。 『一生、共にいられますように 一之瀬高良』 俺がうなずくと、一之瀬は絵馬を奉納場所へと結びに行った。 見つかっても、思っている人がいると云えば済む。そのうち、多くのカップルの絵馬に紛れて忘れられていく筈だ。 俺も書き上げて、絵馬を結ぶ。 「鮎。お前ッ?」 見つけた一之瀬が真っ赤になったが、俺はそ知らぬふりで、そのまま町への道を降りていった。
『二人でずっと生きて行きたい あゆ』
まず、一之瀬以外に、この名前を俺だと思う相手はいないだろう。俺の名前は「あゆかわひさし」と云うのだから。 お前だけじゃない。俺だって、お前との未来を誓いたいんだ。
<おわり>
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開設日: 2005/10/29(土)