4月22日の中医協
中央社会保険医療協議会(中医協)は4月22日、診療報酬改定結果検証部会と総会、診療報酬基本問題小委員会を開いた。検証部会では、昨年度に実施した「病院勤務医の負担軽減の実態調査」など5特別調査の報告書取りまとめに向け議論したほか、昨年度に引き続き「後発医薬品の使用状況調査」を今年度に実施することを決めた。総会では、医科と歯科を合わせ85件の医療機器の新規保険適用(1日から)などの報告があり、いずれも了承された。小委では、基本診療料のうち初・再診料、入院料等をめぐる議論に入った。初・再診料では、前回の診療報酬改定で外来管理加算に導入された「5分要件」をめぐり、診療側と支払側が激しいやりとりを交わした。
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検証部会が昨年度に実施したのは、「病院勤務医の負担軽減の実態調査」「外来管理加算の意義付けの見直しの影響調査」「後発医薬品の使用状況調査」「後期高齢者にふさわしい医療の実施状況調査1」「後期高齢者にふさわしい医療の実施状況調査2」の5調査。
「病院勤務医の負担軽減の実態調査」の結果では、1年前に比べ医師の勤務状況が「改善した」とする回答よりも「悪化した」との回答が多いことが明らかになっている。
このため遠藤久夫委員(学習院大経済学部教授)は、「勤務医の負担の深刻さが裏付けられている。引き続きこのことは大きな診療報酬上の政策目標になり得るだろう」と指摘。
また、調査結果について「診療報酬改定以外にも、さまざまな医療政策に有効に使える」と評価した。小林麻理委員(早大大学院公共経営研究科教授)は、この調査を継続する必要があるとした。
一方、外来管理加算については、昨年度の改定で「懇切丁寧な説明が行われる医学管理」や「診察に要する時間として、医師が実際におおむね5分を超えて直接診察を行っている」などの要件が加わったが、「外来管理加算の意義付けの見直しの影響調査」では、患者の55.8%が「時間の目安は必要でない」とし、「必要」の33.8%を上回った。牛丸聡委員(早大政治経済学術院教授)は、「患者は何を欲しているのか、実証結果から把握することが重要」と述べた。
調査結果によると、「治療方針についての説明」を毎回実施すると答えたのは病院で15.5%、診療所で17.6%だったのに対し、患者側では「通院ごとに実施してほしい」が共に46.9%に上った。遠藤委員は「どちらが適切なのかという問題はあるが、医療サイドと患者サイドでギャップが見られる」とした。
※【「改定以外の医療政策にも有効」】をご覧ください。■電子請求化の義務化猶予「緊急避難的な措置」
一方、総会で新規保険適用が了承された85件の医療機器は、医科では区分A2(特定包括)が41件、区分B(個別評価)が27件、歯科では区分A2が1件と区分Bが16件だった。
医科の区分A2では、終夜睡眠診断装置(U)の「脳波計 EEG−1200シリーズニューロファックス」(日本光電工業)、区分Bでは、デンプン由来吸収性局所止血材の「アリスタAH」(泉工医科貿易)など。
歯科の区分A2では、デンタルエックス線撮影装置の「オージェシリーズ」(朝日レントゲン工業)、区分Bでは、歯科充填用材料の「ジーシーフジV」(ジーシー)などの保険適用をそれぞれ了承した。
また、9日の先進医療専門家会議で先進医療に承認された「内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術」と「歯科用CAD・CAMシステムを用いたハイブリッドレジンによる歯冠補綴」の報告もあった。
このほか「ドキシル注20r」は、新規に追加された効能「がん化学療法後に増悪した卵巣癌」に使用した場合の標準的な費用の約38.6万円が、同薬品を使用しない症例の薬剤費(DPC算定で3万3893点、1点10円)を上回るため、出来高算定にすることが決まった。
総会の終了間際、勝村久司委員(連合「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)が、▽米バクスター社の骨髄移植キットの製造中止に伴い、中医協の合意事項にない特例として、3月25日の総会で保険適用を認めた米バイオアクセス社製の代替品「ボーンマロウコレクションシステム」で事故が発生した▽レセプトオンライン化の義務化期限延長が決まった−の2点について、事実関係を確認した。
代替品による事故について、厚労省側は「新聞報道は把握しているが、詳しい状況については担当企画課に問い合わせ、次回までに報告したい」と述べた。
また、レセプトのオンライン請求については、レセプトコンピューター導入済みの薬局と400床未満の病院がこの4月に義務化期限を迎えたことを説明した上で、「3月末時点で集計したところ、2600弱の薬局と、220病院で準備ができていないことが確認できた」と明らかにした。このため、地域医療への影響を考慮した「緊急避難的な措置」として省令を改正し、オンライン請求の義務化を猶予する方針を示した。
※【「ドキシル注20r」の新効能を出来高算定に―中医協】もご覧ください。
■藤原委員「予想を上回るマイナス」、対馬委員「対象範囲が違う」
小委では、診療側の藤原淳委員(日医常任理事)が、前回の報酬改定で「外来管理加算」に新たに加わった「5分要件」の撤廃を主張した。
藤原委員は、外来管理加算で「時間の目安」が必要だと思うかどうかを聞いた患者への質問で、「必要でない」が55.8%と、「必要だ」の33.8%を上回った点や、要件の見直しに伴い診察までの待ち時間が長くなったとする回答が、病院で43.5%(「大いに当てはまる」16.4%、「やや当てはまる」27.1%)、診療所で37.4%(「大いに当てはまる」14.6%、「やや当てはまる」22.8%)に上る点を指摘。さらに、「患者側も診察内容の変化を実感しているわけでもない」として、5分要件の撤廃を求めた。
藤原委員はまた、要件の見直しに伴う診療所への影響額が、当初想定していた約240億円を大幅に上回る804億円に達したとし、厚労省側の見解を求めた。これに対し、厚労省保険局の佐藤敏信医療課長は、「(外来管理加算という)一つの診療報酬の項目のみで、診療所全体の収入は議論できない」とし、影響額の試算が可能になるのは、医療費の明細書(レセプト)を集計する「社会医療診療行為別調査」の結果がまとまる秋ごろになるとの見通しを示した。
対馬忠明委員(健保連専務理事)は、「前回の改定の時には、カテゴリー別に議論した。(厚労省が示した当初想定額の)240億円というのは、あくまで(高齢者を除く)若人の議論。(藤原委員の主張する金額とは)対象範囲が違っている」と指摘。佐藤課長も「結論から申せば、高齢者を除く若人の部分で240億円程度の減額になると試算していた」と応じた。
西澤寛俊委員(全日本病院協会)は、要件見直しの影響額について「(高齢者と若人に)分けて議論したかあやふやだ。データを基にあらためて説明していただきたい」と要求。藤原委員も「正直、若人だけなのか認識していなかった」と述べ、資料を提示して説明するよう求めた。
この日の小委では、中医協の診療報酬改定結果検証部会が実施した「外来管理加算の意義付けの見直しの影響調査」の速報値を基に議論した。
厚労省側は速報値を踏まえた外来管理加算をめぐる現時点での論点として、▽外来管理加算の見直しにより設定された「懇切丁寧な説明」等の項目や頻度が妥当だったか ▽外来管理加算の意義付けの見直しにより、患者の療養上の疑問や不安を解消するための取り組みが推進されたか ▽「懇切丁寧な説明」等に要する5分という時間の目安を設定したことは妥当だったか。また時間の目安以外に、「懇切丁寧な説明」等を評価する適切な指標があるか−を挙げた。
対馬委員は「支払側からすると、外来管理加算は患者にとって最も分かりにくい」と指摘。分かりにくさを解決する具体策の例として、外来管理加算を再診料に含めることを挙げた。
また、藤原委員は「“3時間待ちの3分診療”というのは、診療所や中小病院に当てはまることではなく、大病院に当てはまる事項だ。(今回の見直しの考え方が)そういうことを認識した上でのものであったか。そこには大きな疑問を感じる」と述べた。
小島茂委員(連合総合政策局長)は、今後の議論の進め方について「外来管理加算を初・再診料の中でどう位置付け、その上で5分要件をどうするかということだと思っている」と提案した。■「入院基本料について議論を」
この日は、基本診療料のうち入院料等についても意見を交わした。
厚労省側は検証部会の調査結果を踏まえた論点として、▽病院勤務医の負担軽減に対する取り組みは十分に行われているか▽医師・看護師等の業務分担は進んでいるか。また、業務分担を進めることで負担は軽減したか▽連続当直を行わないシフトを組むことや、当直後の通常勤務に対する配慮は十分に行われているか▽さらなる負担軽減を図るにはどのような要件が必要か−を挙げた。
西澤委員は「今回の議論は、あくまで調査を基に3加算(「入院時医学管理加算」「医師事務作業補助体制加算」「ハイリスク分娩加算」)についてのみのものだ。それも大切だが、より大切なのは入院基本料そのものだと思う。できるだけ早くそちらに入っていただきたい」と訴えた。
また対馬委員は、厚労省が示した論点について「要件をつくればいいというのではなく、(診療報酬上の)別の項目を設けるべきだという議論や、今の項目の単価を上げるべきだという議論もあるかもしれない。診療報酬だけではおのずと限度がある。国の予算対応など、それ以外のさまざまな対応の一環として、わたしたちが何をできるのかという見方もある」と述べ、多角的な視点から検討する必要があると主張。山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)は、勤務医の負担を軽減する上で、薬剤師との役割分担が重要になるとの認識を示し、この点についての踏み込んだ議論を求めた。
※【「5分要件」の撤廃を主張−中医協で藤原委員】もご覧ください。
更新:2009/04/24 21:33 キャリアブレイン
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