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きょうの社説 2009年4月24日
◎県、金大が包括協定 地域医療の充実を連携の軸に
石川県と金大が締結した包括連携協定は、教育、環境、医療、産業振興など幅広い分野
にわたる協力強化が盛り込まれた。大学の知的資源を活用したい自治体と、地域貢献をアピールしたい大学側の思いが一致 し、全国的に同様の協定が広がっているが、本格的に手を組むからには、目に見える成果や地域の独自性も求められる。金大の豊富な人材や得意分野を最大限に生かすなら、まずは地域医療の充実を主軸とし、他県にまさる「官学」連携の実を挙げてほしい。 深刻な医師不足を背景に、県は今年度から金大医薬保健学域医学類に五人の「特別枠」 を設けて修学資金を援助するなど、大学が独自に進めてきた人材養成の分野に関与する取り組みが始まった。地域の医師供給源でもある金大は、医師不足問題のまさに当事者であり、県としても金大との密接な関係なくして医療行政を充実させることはできないだろう。 金大にとっても県内の医療体制充実や、住民の最も身近な関心事である病気予防、健康 管理などで人的資源や成果を還元していくことは、地域貢献の最たるものといえ、大学の存在感を際立たせ、信頼を高める取り組みとなる。 県と金大の包括連携協定締結に合わせて設立された連携推進会議では、里山・里海保全 やコンベンション誘致などの観光施策、教育施策など、県政の重要課題で意見が交わされた。いずれの分野も、すでに金大側から専門の教官が参画しているケースが多いが、医療・健康をはじめ、環境、観光などは学域を超えた幅広いテーマであり、個人的な協力を超えた全学挙げてのバックアップ体制も検討する必要がある。 金大が県と同じ方向をむいて地域の課題解決に取り組むことは、「教育」「研究」に加 え、「地域貢献」を大学存立の三本柱として定着させる絶好の機会である。総合大学としての金大に期待される役割は地域最大の「シンクタンク」としての機能でもあり、行政に的確な政策提言を行っていくには地域に目を向けた日ごろの活動が大事になる。大学側は学内の意識改革をさらに進めてもらいたい。
◎海賊法が成立へ 警護の「足かせ」外れる
海賊対処法案が与党などの賛成多数で衆院を通過し、今国会での成立が確実となった。
ソマリア沖で、自衛隊法に基づく海上警備行動として活動している海自の護衛艦二隻は、正当防衛や緊急避難の場合しか武器を使用できず、保護対象も日本関係船舶に限られていた。法案が成立すれば、船舶警護の重い「足かせ」が外れ、効果的な海賊対策が実行できるようになる。船舶のみならず、警護に当たる海自隊員の安全を確保するためにも武器使用基準の緩和は必要だ。海賊対処法案について、野党は「海自の活動がなし崩し的に拡大する」などと反対した 。外国船舶の保護と海賊への停船射撃のための武器使用が認められるだけなのに、大げさで的外れな反応である。ソマリア沖で活動する各国の軍艦が当たり前のように行っている警護活動が、護衛艦にもようやく認められるだけのことだ。 民主党は海賊対処法案に反対し、自衛隊派遣後の国会報告を国会事前承認に改める修正 案を提出したが、国会承認が必要な自衛隊の行動は、防衛出動や治安出動などの特別なケースであり、海賊抑止のための出動にはそぐわない。 また、民主党は海賊への対応を自衛隊ではなく、首相の下に「海賊対処本部」を置いて 自衛隊員に本部員の身分を併任させるよう求めた。次期衆院選後の連立政権をにらんで、社民党や国民新党などに配慮し、「自衛隊色」を薄めようとしたのだろうが、それこそ衣を替えるだけの姑息な手段である。自衛隊を日陰の身に置く発想にとらわれ、持てる能力を最大限に活用し、前線で汗を流す隊員の安全を第一に考える視点が欠けているように見えるのは残念だ。 海自の護衛艦は、三月末の活動開始以来、保護対象外の外国船舶から要請を受け、これ までに三回不審船に対処し、大音量を発しての警告などで任務を遂行した。ソマリア沖の海賊は各国の取り締まり強化に反発して武装を強化し、報復を叫んでいるとの指摘がある。停船命令を無視して突っ込んでくるような相手に備えるためにも早期成立を求めたい。
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