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遺伝子使わずiPS細胞 米独チーム、がん化リスク低減

2009年4月24日4時45分

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写真拡大新たなiPS細胞のつくり方

 遺伝子を使わずにマウスの新しい万能細胞(iPS細胞)をつくることに米独チームが成功した。遺伝子を使うと細胞ががん化する恐れがあり、使う遺伝子を減らす世界的な開発競争が続いていた。再生医療の実現につながる安全性の高いiPS細胞の開発に向けた大きな成果となる。

 開発したのは、米スクリプス研究所のシェン・ディン准教授や独マックスプランク分子医薬研究所のハンス・シェラー教授らのチーム。23日付の米科学誌セル・ステムセル電子版に発表する。

 京都大の山中伸弥教授らが最初にiPS開発に成功した方法は、ウイルスを使って4遺伝子を細胞に入れる。しかし、遺伝子を入れると細胞が持つ本来の遺伝子を壊したり、入れた遺伝子が異常に働いたりして、がん化する危険がある。遺伝子を入れずにiPS細胞を作ることができれば、がん化の恐れは低くなるが、方法は開発されていなかった。

 チームは山中教授らがiPS細胞の作製で使ったのと同じ4遺伝子から、たんぱく質を細胞外で大腸菌につくらせた。たんぱく質が細胞膜を通過しやすいように、分子の小さな物質につなげ、マウスの胎児細胞内に入れた。

 この細胞を約1カ月培養すると、形や性質が万能細胞に似た細胞ができた。それをマウスの受精卵に入れ、この細胞が心臓や肝臓、生殖細胞などさまざまな細胞になりうることを確認。チームは、たんぱく質(protein)の頭文字をとり、この細胞を「piPS細胞」と名づけた。

 iPS細胞は、病気やけがで失った臓器の細胞に成長させて移植すれば、拒絶反応のない再生医療につながると期待されている。しかし、今回の方法はまだ動物実験の段階で、ヒトの細胞でも可能なのかや安全や安定性の検証を重ねる必要がある。

 理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹グループディレクターは「ヒトで成功すれば、実用化に向けて、有望な選択肢の一つになりうる。研究開発の競争が世界中で速いスピードで進んでおり、遠からず、最良の方法がわかるだろう」と話している。(林義則)

     ◇

 〈iPS細胞〉 皮膚や肝臓などの細胞は、受精卵が細胞分裂を繰り返してできる。iPS細胞は、皮膚などの細胞に、受精卵のようにあらゆる細胞になれる能力を持たせた。受精卵から作る「ES細胞」も同様だが、受精が生命の始まりとの考え方もあり倫理面で問題が指摘されている。

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