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医学部なら地元を狙え!? 広がる「地域枠」[教育動向] 渡辺敦司 2009/04/23 15:00:00
新年度に入り、受験に向かって徐々に勉強に力を入れている、というお子さんもいらっしゃると思います。中でも難関である医学部を目指す高校生にとっては、早くからの準備が不可欠でしょう。ところで、社会問題となっている医師不足を受けて、今春の入学者から医学部の定員が増やされたことは、このコーナーでも何度か取り上げました。医学部の定員に関しては、全体が「広き門」となっていることだけでなく、注目すべき流れがあります。「地域枠」の拡大です。
地域枠とは、地元出身者や、地元以外でもその大学の所在地の地域医療を志す人のための特別枠です。文部科学省の調査(2008<平成20>年9月実施)によると2004(同16)年度は5大学の43人にとどまっていましたが、その後は急速に増加し、2009(同21)年度は47大学の704人に拡大しています。これは、総定員(8,486人)の8.3%、12人に一人に当たる数値です。 なぜ地域枠が拡大しているかというと、深刻な医師不足や地域偏在を是正するためには、地元の高校生を地元の大学で受け入れることが有効だ、との考えからです。 もともと数が少ないうえに「狭き門」である医学部は、受験生の側も、地元の大学に限定せず、全国レベルで志望校を選ぶ傾向があります。ですから、必ずしも入った大学のある地域に思い入れがあるとは限りません。また、研究面や医療の最新情報が得られることなどを考えれば、就職はどうしても都会志向になってしまいます。加えて、2004(平成16)年度からの「新臨床研修制度」の導入に伴って研修病院が自由に選べるようになったことが、他県への流出に拍車を掛ける結果となってしまった側面は否めません。ですから、明確な目的意識を持って将来の地域医療を担ってくれるような人材を、早くから確保しようとしているわけです。 実際、地域枠設定などの取り組みの結果、医学部入学者のうち県内高校出身者の割合は、2003(平成15)年度で30.1%だった全国平均が、2008(同20)年度には35.2%に上昇しています。県内高校出身者の割合が25〜30%の間くらいしかなかったのが、5年で50%台にまで上昇した県もあります。 こうした動きに呼応するように、高校側でも地元医学部を目指す対策に力を入れている地域が増えつつあります。門が広がる医学部の中でもさらに地域枠が狙い目、というわけです。 また、地元出身者向けに授業料減免や奨学金などを設ける大学側や自治体も増えています。 ただし、こうした制度を利用する際には、単なる合格のための一手段と考えてはいけないでしょう。忘れてはいけないのは、地域の医師として将来も生きていく≪覚悟≫です。「医者になりたい」だけでなく、「どんな医者になりたいか」も考えさせながら、明確な志望動機を持たせたいものです。 <参考> 医学教育に関する基礎資料(文部科学省「医学教育カリキュラム検討会」第1回)
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