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社説1 危機脱却なお見えぬ日米の金融機関(4/24)

 米大手金融機関の2009年1―3月期決算が出そろった。証券化商品の損失減少や証券売買の復調で業績は改善したが、米景気の悪化で融資の焦げ付きが膨らむ危険も大きく危機脱却とは言い難い。日本の3メガバンクも保有株式の値下がりなどで09年3月期に最終赤字に転落する見通しだ。金融収縮が世界景気を圧迫する脅威は薄れていない。

 米金融機関の1―3月期は経営危機に直面したシティグループが6四半期ぶりに黒字転換した。JPモルガン・チェースも前年同期比の減益率が昨年10―12月期より縮小し、収益悪化に歯止めがかかった。

 貢献したのは証券部門の復調だ。ゴールドマン・サックスは金融市場の変動をとらえて債券や為替などの売買収益が四半期で過去最高となり、全体の利益も黒字に復帰した。株価回復を追い風に増資に踏み切り、公的資金返済にも言及している。

 一方、銀行部門は不振が続く。個人や企業に対する融資の不良化が進み、バンク・オブ・アメリカの貸倒引当金は前年同期の2倍に膨らんだ。米景気指標は一部に下げ止まりの兆候があるが、経済の正常化とはほど遠い。失業率の上昇や倒産の増加が続けば新たな不良債権を生み、貸し渋りに拍車をかけるだろう。

 米銀が不良資産の損失を確定し、切り離し、必要な資本を注入することが貸し渋りの克服には不可欠だ。米政府は景気悪化で金融機関の財務内容がどの程度傷むのかを査定しており、来月にも結果を公表する。

 だが、資本注入の原資となる公的資金枠は当初の7000億ドルから1000億ドル強に減っている。資金枠が足りなくなっても米議会が追加拠出を認めるかどうかは不透明だ。財政赤字の急増や公的支援を受けた保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の巨額賞与問題で公的資金投入に対する米世論の抵抗が根強いためだ。米銀の損失処理が先送りされる恐れもあり、先行きの不安はぬぐい去れない。

 警戒すべきなのは米国発の不安だけではない。国内では、みずほフィナンシャルグループが09年3月期に最終損益が5800億円の赤字になったようだと発表した。農林中央金庫や野村ホールディングスも巨額の赤字決算が見込まれる。

 保有する証券化商品や株式の価格下落に加え、取引先企業の業績悪化による不良債権処理がのしかかっている。資本増強などの対策を講じなければ、信用収縮が景気の足を引っ張り、不良債権がさらに膨らむ悪循環の構図は残ったままになる。

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