文部科学省の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が一斉に行われ、小学六年と中学三年の計約二百三十四万五千人がテストを受けた。岡山県内では計約三万七千人が参加した。
学年全員を対象に、国語と算数・数学の二教科で行われるテストは二〇〇七年から始まり、今年で三回目だ。これまで不参加だった愛知県犬山市が加わり、国公立は初めて100%参加となった。一方、私立の参加率は昨年を約5ポイント下回り、約48%と半数を割り込んだ。
文科省は、実生活と関連させたり文章での表現力をみるなど、知識の活用を目指す新学習指導要領を念頭に置いて出題したという。分析結果は九月をめどに公表する予定だ。学校間の序列化や過度な競争などを防ぐため、文科省は都道府県教委に対し、市町村別や学校別の結果公表を実施要領で禁じている。
しかし、昨年は大阪府や秋田県が一部を公表し、混乱が表面化した。今年は鳥取県教委が市町村別・学校別成績の開示を決めるなど、結果の扱いが再び論議を呼びそうだ。結果発表の仕方によっては、テスト重視の教育が再び過熱する懸念もぬぐい切れない。
全国学力テストは、子どもの学力低下が指摘される中、全国的な学習状況を把握し、課題を明らかにする狙いで始まった。過去二回とも「知識の活用に課題がある」との分析結果が公表されている。学力の実態、課題を浮き彫りにするという意味では、一定の役割は果たしたといえるのではないか。
テスト結果を客観的なデータとして活用することで教育指導や授業改善などに生かすことが求められるのは言うまでもない。しかし、県別の正答率など数値や順位が独り歩きしているのが実情で、「指導に生かす」といった目的はお題目にすぎないとの指摘もある。
学力テスト実施に当たっては今回も昨年同様、約五十八億円の費用が計上された。文科省は今後も全国一斉方式を続ける方針だが、膨大な予算と労力をかけて毎年継続する必要があるのだろうか。抽出調査に切り替えたり、全国調査は数年おきにするなど、そろそろ見直しが必要なのではないか。
全国連合小学校長会が昨夏、八百五十四校長を対象にした意識調査でもほぼ半数が全国一斉方式に疑問を呈した。求められるのは、教育現場が抱える学習環境状況の問題点や苦悩を解消するための有効な支援策を打ち出すことではないのか。
昨年二月に起きた海上自衛隊のイージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で横浜地検は適切な見張りを怠ったなどとして、衝突時と衝突前の当直責任者だった二人の三等海佐を業務上過失致死と業務上過失往来危険の罪で在宅起訴した。衝突時に操船していない乗組員が起訴されるのは異例という。
起訴状によると、衝突前の当直責任者は、清徳丸を含む漁船群を確認しながら動静監視を怠り、交代時に「漁船、停止操業中」などと誤った申し送りをした。衝突時の当直責任者は、引き継いだ内容の誤りを把握した後も海上衝突予防法で定める回避義務を怠り、漫然と自動操舵(そうだ)で航行した。こうした二人のミスが重なった「過失の競合」が事故を招き、清徳丸の二人を死亡させたとする。
今年一月に行われた海難審判の裁決では、衝突時の当直責任者のミスは認めたが、衝突前の当直責任者については事故との因果関係はないとした。にもかかわらず地検が二人とも起訴に踏み切ったのは引き継ぎ前の誤りが、その後の対応にも影響を及ぼしたとの見方であろう。
「あたご」の事故は行政処分が目的の海難審判から刑事裁判に場を移す。公判では、二隻が海上衝突予防法で定める衝突の危険がある位置関係になった時期や、二人の過失と衝突との因果関係などに対する判断が焦点となる。
国民を守るべき自衛隊の艦船が、ずさんな運航によって民間人の生命を奪ったことは許し難い。今回の起訴は、乗組員が緊張感を持ってカバーし合いながら艦船を安全に運航させる責務の重大さを、あらためて突きつけたといえよう。海自は重く受け止め、安全対策を見直し、再発防止に全力を注がなければならない。
(2009年4月23日掲載)