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国別対抗戦2009、終了 「どうもありがとう 東京」

Evanben904s 「どうもありがとう 東京」
 国別対抗戦最終日、エキシビションのフィナーレ。選手たちが客席に向けてプレゼントを投げる場面で、アメリカチームのエヴァン・ライサチェクとベンジャミン・アゴストが、感謝のメッセージを記した横断幕を持って、ゆっくりとリンクを一周した。
 おそらく選手たちが自発的に考えて、用意してくれたメッセージだろう。こんな選手の行動を見たのは、どの都市の試合でも、どんな規模の大会でも、まったく初めてのことだ。

 史上初めての公式チーム戦。大人の事情からすれば、日本のフィギュアスケート人気、観客動員数をかんがみて、東京で開催されることとなったのだろう。ほんとうならば日本チームが優勝することで、お客さんが最高に盛り上がる、そんな筋書きが、最良のものとして予想されてもいただろう。
 しかし勝ったのは、4種目にわたってバランスの取れた戦力を誇る、アメリカ代表チーム。それでも日本のお客さんは、一年かけて自分のものにしたライサチェクの挑戦的なプログラム、その集大成のような演技に、大喜びだった。来年は日本女子の脅威になるかもしれないふたり、キャロライン・ジャンのひとつひとつのポーズを氷上に刻みつけるような魂のこもった滑りに、レイチェル・フラットの、良く鍛えられているだけでなく、見る人の興奮を呼び起こすムーブメントに、大喝采を送った。キス&クライで陽気にはしゃぎまくる姿を見て、今まで以上にチームUSAに親しみを感じたりもした。

 そんなお客さんに対して、初代チャンピオン、アメリカチームから送られた「どうもありがとう」の言葉。私たちはこれを、誇りにしていいと思う。
 外国人選手たちは、いつもインタビューのたびに、日本が大好きだ、日本での試合が一番気持ちよく滑れる、などといってくれる。日本のメディアに応えているのだから、多少のリップサービスもあるのかな、と思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
「日本人選手が滑った後に、彼と競っている僕が滑ったというのに、お客さんは僕の点数に対して『低すぎる!』って態度を見せてくれたんだよ。こんなうれしいことってあるかい?」
「日本のお客さんって、あんまり大声を出して観戦はしないよね。でも、みんながスケートを楽しみつつ、自分の思いをそれほど強く表現しようとはしないことを、僕たちは知っているから。それに、日本のお客さんが深くこのスポーツを理解して、僕らに対して敬意を持ってくれていることだって、知ってる」

 史上初めての国別対抗戦は、大成功だった。もちろん一番がんばったのは、世界選手権直後という強行スケジュールを押して、いい試合を見せてくれた選手たち。でも、この試合を盛り上げ、選手たちの士気を支えたのは、間違いなく日本の観客たちだろう。
 世界選手権終了後、一部ファンがお気に入りの選手を愛するあまりに暴走し、その言動にたくさんの人が傷つくことになった。選手たちを支えることを仕事とする人々が、業務に支障をきたすことになるなど、あってはならないことだ。国別対抗エキシビションへの参加を断念せざるを得ない海外選手が出てくるなど、あまりに悲しいことだ。いったいこの国のスケートファンは、どうなってしまったのか……そんな気持ちにもなった。

 それでも、「どうもありがとう、東京」。この言葉を受け取る資格が、やはり日本のスケートファンにはあったのだ。選手が強いだけでなく、ファンが競技をを理解して、愛してこその、スケート大国。そう定義するならば、自国選手だけでなく、全選手たちの本気を引き出した日本のファンは、一流だ。その誇りを、いつまでも忘れないでいたいと思う。
 いつまでも、仮に現在の人気選手が引退してしまい、スケーターたちに元気がなくなることがあっても。私たちファンが元気ならば、きっとスケート人気は続く。きっといつまでも、今大会のような素晴らしいイベントを、私たちはこの目で見続けることができる。
 
photo/Masami Morita   text/Hirono Aoshima 


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