短編小説 『ニート・ニンジャ 麺毒斎』(5)
「あんたら女をなんやと思っとるんや! ゼニがあらへんとかわけわからん理屈で勝手にさらってメイドにするっちゅうとかイカれとるでホンマ!」
「止めるんだ、お嬢ちゃん!
今は放っておいて官憲に報告したほうが良い!」
「止めるんだ、お嬢ちゃん!
今は放っておいて官憲に報告したほうが良い!」
「嫌や!」
野次馬のハゲた小太りのおっちゃんが止めるのも聞かず、棒立ちになっている西洋人どもへつかつかと近寄ると、挑戦的に拳を突き出して、体から正義の炎を燃え上がらせる。
今ワイは最高に輝きまくっとるでええええ!
「あんたらみたいなスカタンはなあ! 麺毒斎師匠の一番弟子! 世界にその名を轟かす(予定の)スーパー・ニンジャ住吉カネがメタンコにいわしたる! ゴッド・ブレス・ワイ! あんたらには冥土以外に逃げ場は無いから、そのつもりでいるんやな!」
その挑戦を受けるように、例の裏切りメリケンがなよなよした足取りで前へ出てくる。
「フォッ! フォ! 異教徒の分際で神に祈るとは独創的なサムライ・ガールデース! 慈悲で教えてさしあげますがネ、髪を金色に染めても東洋人の猿そのものな骨格は直りませんヨ!」
「豆腐に言われとうないわ! ちっとは骨んあるメリケンかて思ったんがえらい間違いやったで! 豆腐に骨があるわけないっちゅうねん! 自分にツッコミや! ボケ! イワシ!」
「みどもはアメリケンではありませんよ。女王陛下の……」
「んなこと聞いとらんわ黙っとれイカ野郎! そのどんくさい女置いていかん言うんやったらワレもまとめて領事館のサムソンはんところへ突き出してお仕置き逆さづり鼻血ブー垂れの刑にしたるから覚悟せいっちゅうんや!」
「ウェイト・ミニッツ! お待ちなさーい! 早口すぎて何を言ってるのかわかりまセーン!」
「ソーメン頭やから聞き取れへんのや! チュル! チュル! ワイの地元じゃこれがコモンセンスや!」
豆腐メリケンへ向かってまくし立てていると、その横から大柄な西洋人が出てきた。
最初に侍をいじめていた筋肉ムキムキな奴だ。
ふてぶでしい動きとムカツク面は健在で、脇にはいまだに女を抱えている。
「このお方もいちおう女? なのか?
連れていくか? 予備の分もいるザマスだろ?」
「邪魔なだけだろう。こんなうるさいのが側に居っては一日も安らかに眠れんぞ」
「フン。じゃあ黙らせて差し上げるだぜ」
連れの男との相談が終わると、問答無用でおカネに歩み寄ってくる。
警戒感がまるで無い。落とした荷物をひょいと拾い上げるような気楽さに見えた。
「ホールド・アップや!」
おカネの反応は脊椎反射並みに早かった。
懐に両手を突っ込むと、中からある物を引っ張り出し、指にはさんで前へ突き出す。
筋肉メリケンは動きを止めると、おカネが持っているものをにらみつけた。
「ホワイ?」
筋肉がつぶやくと、後ろで見ていた豆腐が小馬鹿にした声で言った。
「シュリケンですネ」
その通り。十字型で真ん中に穴が開いている、掌ほどの大きさの鉄の刃。
ニンジャがこれ持ってないとかウソやで。
「何でございますか、シュリケーンというのは」
「敵に投げつける武器デース」
「あれをか? あれで人を殺せると思ってるのでございまするか?」
「ブォホ! ケーンさん、いくら東洋人らしいへっぽこな武器だからと言っても、そんなに笑ったら失礼デース! 1インチの虫にも5%の魂と言いマース!」
「HAHAHAHAHA!」
[続く]
野次馬のハゲた小太りのおっちゃんが止めるのも聞かず、棒立ちになっている西洋人どもへつかつかと近寄ると、挑戦的に拳を突き出して、体から正義の炎を燃え上がらせる。
今ワイは最高に輝きまくっとるでええええ!
「あんたらみたいなスカタンはなあ! 麺毒斎師匠の一番弟子! 世界にその名を轟かす(予定の)スーパー・ニンジャ住吉カネがメタンコにいわしたる! ゴッド・ブレス・ワイ! あんたらには冥土以外に逃げ場は無いから、そのつもりでいるんやな!」
その挑戦を受けるように、例の裏切りメリケンがなよなよした足取りで前へ出てくる。
「フォッ! フォ! 異教徒の分際で神に祈るとは独創的なサムライ・ガールデース! 慈悲で教えてさしあげますがネ、髪を金色に染めても東洋人の猿そのものな骨格は直りませんヨ!」
「豆腐に言われとうないわ! ちっとは骨んあるメリケンかて思ったんがえらい間違いやったで! 豆腐に骨があるわけないっちゅうねん! 自分にツッコミや! ボケ! イワシ!」
「みどもはアメリケンではありませんよ。女王陛下の……」
「んなこと聞いとらんわ黙っとれイカ野郎! そのどんくさい女置いていかん言うんやったらワレもまとめて領事館のサムソンはんところへ突き出してお仕置き逆さづり鼻血ブー垂れの刑にしたるから覚悟せいっちゅうんや!」
「ウェイト・ミニッツ! お待ちなさーい! 早口すぎて何を言ってるのかわかりまセーン!」
「ソーメン頭やから聞き取れへんのや! チュル! チュル! ワイの地元じゃこれがコモンセンスや!」
豆腐メリケンへ向かってまくし立てていると、その横から大柄な西洋人が出てきた。
最初に侍をいじめていた筋肉ムキムキな奴だ。
ふてぶでしい動きとムカツク面は健在で、脇にはいまだに女を抱えている。
「このお方もいちおう女? なのか?
連れていくか? 予備の分もいるザマスだろ?」
「邪魔なだけだろう。こんなうるさいのが側に居っては一日も安らかに眠れんぞ」
「フン。じゃあ黙らせて差し上げるだぜ」
連れの男との相談が終わると、問答無用でおカネに歩み寄ってくる。
警戒感がまるで無い。落とした荷物をひょいと拾い上げるような気楽さに見えた。
「ホールド・アップや!」
おカネの反応は脊椎反射並みに早かった。
懐に両手を突っ込むと、中からある物を引っ張り出し、指にはさんで前へ突き出す。
筋肉メリケンは動きを止めると、おカネが持っているものをにらみつけた。
「ホワイ?」
筋肉がつぶやくと、後ろで見ていた豆腐が小馬鹿にした声で言った。
「シュリケンですネ」
その通り。十字型で真ん中に穴が開いている、掌ほどの大きさの鉄の刃。
ニンジャがこれ持ってないとかウソやで。
「何でございますか、シュリケーンというのは」
「敵に投げつける武器デース」
「あれをか? あれで人を殺せると思ってるのでございまするか?」
「ブォホ! ケーンさん、いくら東洋人らしいへっぽこな武器だからと言っても、そんなに笑ったら失礼デース! 1インチの虫にも5%の魂と言いマース!」
「HAHAHAHAHA!」
[続く]