きょうの社説 2009年4月23日

◎改正産活法が成立 適用企業の線引きは厳格に
 世界的な金融危機で一時的に業績不振に陥った企業に、公的資金を活用して資本注入す る改正産業活力再生特別措置法(産活法)が成立した。欧米各国は自国の自動車やハイテク企業などへの公的支援を急いでいる。高い技術を持つ日本企業についても、資金繰りを助け、経営を後押しする仕組みが必要であり、産活法は、日本経済の安定に大きく寄与するだろう。

 ただし、良く効く薬には強い副作用もある。資本注入後に破たんすれば、政府が補てん することになり、国民負担として重いツケが回ってくる。保護主義を助長し、企業のモラルハザードにつながる恐れもある。企業の選定は透明性を確保し、適用するかしないかの線引きも厳格であってほしい。

 産活法で出資を受ける企業として、日立製作所やNEC、パイオニア、エルピーダメモ リなどの名が取りざたされている。いずれも日本を代表する総合電機や半導体の大手であり、高い技術を持ち、多くの従業員を雇用している。こうした日本の産業政策上、重要な企業に適用するのであれば、国民の理解は得られるはずだ。

 逆に適用に慎重であってほしいのは、米国におけるGMやクライスラーのようなケース である。両社は金融危機以前から高コストの問題を抱え、構造的な赤字体質を引きずっていた。規模があまりにも巨大で、簡単にはつぶせないという事情があるにせよ、これまでの米政府の支援は「延命」に過ぎず、法的整理の可能性が高まっている。

 産活法の適用を受ける企業は、本業が黒字体質で、企業を存続させる経済的、社会的な 意義付けが必要だ。本来なら淘汰されてしかるべき赤字体質の企業が、国の支援で生き残り、他の健全な企業の経営を脅かすようなことがあってはならない。政府は制度運用のルールを厳守し、透明性を高める努力を求めたい。

 資本注入を受けた企業は、資金繰りが楽になり、高収益部門への新規投資や不採算部門 の整理などに取り組めるようになる。資本注入をテコに収益力を高め、市況変動にも耐えうる財務基盤を築いてほしい。

◎金沢検定受験料補助 郷土学ぶ意欲を後押し
 金沢市が、「ジュニアかなざわ検定」で九十点以上の好成績を挙げた児童生徒に対し、 より難易度が高い「金沢検定」の受験料の一部を補助することを決めたのを歓迎したい。補助金額よりも、制度を設けて受験を後押しすることに意義がある。これを機に、子どもたちがジュニアかなざわ検定を足がかりにして金沢検定に挑戦するという流れが定着することを期待したい。

 金沢検定では、一昨年、昨年と続けて十代の初級合格者が出ており、一昨年は小学六年 生も合格を果した。昨年の十代以下の初級受験者百二十四人のうち、合格したのは一人であり、「狭き門」ではあるものの、決して不可能な挑戦ではないのである。仮に残念な結果に終わったとしても、高い目標を目指して、郷土をより深く知ろうと努力した経験は無駄にはならないだろう。

 ジュニアかなざわ検定は二〇〇六年度にスタートし、三回目を迎えた昨年の受験者数は 初回の約一・八倍に増えている。夏休みの恒例行事として、定着しつつあると言ってよいだろうが、夏の終わりとともに学ぶ機運もしぼんでしまってはもったいない。市は、ジュニアかなざわ検定を通じて郷土への関心を深めた子どもたちの目を金沢検定にも向けさせるためにさらに工夫してほしいし、学校や家庭でも積極的に子どもたちの背中を押してほしい。

 「ふるさと教育」は、子どもの時だけのものではなく、大人になってからも学び続ける ことが大切だ。小学四年生から中学三年生までしか受験できないジュニアかなざわ検定と違い、金沢検定には年齢制限がないのだから、それに挑み続けることは、学ぶ姿勢を維持するための格好の動機付けになるだろう。

 金沢検定の受験者数は、昨年初めて三千人を超えた。金沢経済同友会の呼び掛けで発足 した「企業市民宣言の会」が、アクションプランの一つに盛り込んだ効果で企業の団体受験が増えたのが大きかった。これに子どもたちも加われば、「ふるさと教育」の熱気は一層高まるに違いない。