ディズニーの知能 > 官僚の知能 【村中】

( 平成21年03月06日 )

投稿者: 村中  


常識のある人は、自分を世間に合わせようとする。 非常識な人は、世間を自分に合わせようとする。 ゆえに、非常識な人がいなければ、この世に進歩はありえない。 劇作家ジョージ・バーナード・ショー

日本の常識はディズニーの非常識です。 したがって東京ディズニーランドは、官僚によりつくられた常識に合わせるのではなく、世の中を自分たちに合わせようとしてきました。

つまり、官僚たちの発想と逆の発想で 「 夢と魔法の王国 」 の国家運営を行ってきたということです。

その結果が、朝日新聞の12月30日一面二面のこの記事の内容です。

<引用開始>
そして今、日本は「未曾有の」なる言葉が飛び交う苦境にある。経済ばかりではない。首相は立て続けに政権を放り出し、霞が関は年金問題の不始末その他でいかにも頼りなく、良くも悪くも日本を回してきた「お上社会」はお上総崩れで立ち行かない。

安心、安全、質の良さ。ディズニーというブランドは、お上が失ってしまったものを一手に引き受けている感がある。今や公的機関の色さえ帯び、その信頼度は群を抜く。

書店には「ディズニーに学べ」式の本が並び、ディズニー主催の企業や団体向け研修会に官庁職員も来る。
<引用終了>

官庁職員が研修を受けても何も理解できないに違いありません。 それほどディズニーの知能と官僚の知能には大きな差があります。

一つだけ例に取ります。 それはシンドラーエレベーターの死亡事故の原因究明についてです。 事故からすでに2年半が経とうとしていますが、未だに捜査は続いています。

常識的に考えてみてください。 ディズニーランドで同様な事故が起き、2年半も事故原因が究明されないなどということが許されると思いますか。

このように、両国の行政力には雲泥の差があるのです。
「 日本の官僚は優秀である 」 とよく言われますがディズニーからみると、日本の官僚は高校生くらいのにしか思えません。

今回のこの投稿は、いろいろな分野で官僚の無能ぶりとディズニーの有能さについて書こうと思っていました。 しかし、止めました。 なぜならば、大前研一氏の著書「 知の衰退 」 にこの文を見つけたからです。

<引用開始>

21世紀の「勝ち組」は「集団IQ」の高いところだ。「集団IQ」とは「集団知」のレベルの高さを表す指標のことだ。日本人は、個々の人を見るとIQが高く、世界に伍してやっていける人もいる。

ところが、集団になるとなぜかIQが著しく低下し、グローバル化の中で取り残されてしまう。特に、地方自治体や国など公共の団体などの集団は、世界でも例をみないくらい、考える力が低い。

かつては、こうした分野こそ世界に賞嘆されていた。ところが、今では周辺諸国からさえ、軽んじられている有様だ。しかも集団IQをあげる努力すらしない。その大切さに気づいてさえいないのだ。
<引用終了>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4334975607

まさに我が意を得たり、です。 ディズニーの集団IQと公務員集団の集団IQのレベル差は歴然です。

また、今日のこの状況を予測していた経済評論家の内橋克人氏も、昨今は再び論客として登場しています。 内橋氏はいつもこのように警鐘を鳴らしています。

「 世界の歴史は愚かな連中が勇気を持ち、賢い人たちが臆病だったようなキライがいくらもある。 これは正しいことではなかった。 勇気のある人たちが賢く、賢い人たちが勇気を持ったときに、初めて人類の進歩、人間社会の幸せがあるのだ。 逆の時に人間の幸せがあるはずはない。」

私は大前氏や内橋氏、そしてディズニーの示す 「 方向 」 に日本全体がベクトルを合わせることにより、日本は再興すると信じて疑いません。

官僚を信じず、正しい結果を生み出しているディズニーランドに学ぶべき時が来ている、私はそう確信しています。

さて、それではどうしてこのような国になってしまったのでしょうか。

BCとAC、ビフォア ・ ゲイツとアフター ・ ゲイツに分けられるように、日本はビフォア ・ TDLとアフター ・ TDLに分けられると私は考えています。

TDLがもたらしたものの大きさに外部の人間は全く無頓着でした。 勉強不足でした。
以前にも書きましたが、日本経済新聞社は 「 TDLの成功理由はQC活動 」 というデタラメ記事を堂々と社説に掲載しました。
http://www.rondan.co.jp/html/mail/0802/080211-11.html

経済学者は 「 アメリカの時代は終わった 」 などと論じていますが、全くの見当違いであると私は思います。 確かに数年間は、アメリカ経済は低迷するでしょう。 しかしながら、いずれアメリカは復権すると私は見ています。

なぜならば、日本人とアメリカ人の間には問題解決能力の大きな差があるからです。
大前研一氏がいう集団IQにおいても歴然とした差があると私は見ています。 東京ディズニーランドで長年アメリカ的な問題解決方法をたたきこまれた私がそういうのですから間違っていないと考えます。

この点、つまりディズニーランドやアメリカから何も学んでこなかったことがこの国を不幸にしたのです。 特に防災面においてはその被害は甚大です。 東京都はニューヨーク市などの防災システムに学んだなどという話は全く聞こえてきません。

参考
東京都のマンホール内増水事故調査報告書では事故は再発する
http://www.rondan.co.jp/html/mail/0809/080902-22.html

もう一つは、内橋克人氏のような90年代から 「 このままでは雇用が破壊される 」 「 社会のきずなが断たれる 」 と警鐘を鳴らしてきた人の意見を聞き入れなかったことです。

私はこのような世の中になることは予測していました。 予測できた理由は元慶応大学教授の故小此木啓吾氏の著書 「 モラトリアム国家日本の危機 」 という本を読み、ディズニーの世界と日本社会の違いを明確に把握したからです。

堺屋太一氏はこの本をこのように評しています。

<引用開始>
「モラトリアム・エリート」の横行こそ本当の危機」
今、日本はモラトリアムの危機に直面している。金融機関の支払い停止ことではない。権力志向のみ強いが責任は取ろうとしない「モラトリアム・エリート」の横行こそ危機、本当の危機だ。

小此木啓吾氏が「モラトリアム人間の時代」を発表してから早20年、日本はまさしくその予言どおりになっている。国家としてのアイディンティティが失われただけでなく、モラトリアム二世の出現によって、モラルなき世の中になってしまった。

金融破壊、官僚の倫理的退廃、少年犯罪の過激化など、現代の世相を精神分析的に解明した論旨は実に明確、「父親不在」の明日を憂える心情は痛烈だ。多くの人々に読んで欲しい一冊である。
<引用終了>

小此木啓吾氏はこのような警鐘を鳴らされています。

「 おカネの運用に不慣れな日本の大衆は、千二百兆円もの虎の子のおカネを、言葉巧みにどんどん巻き上げられてしまうのではないか、というのが本音の部分で誰もが抱く不安である。」

10年以上前の平成10年7月に発刊された本です。 この頃に官僚の倫理的退廃を問題視していれば、今日問題になっている労働行政の退廃なども防ぐことができたものと私は考えます。

最後にもう一度結論を書きます。 ディズニーランドはいわゆる 「 護送船団 」 に入らなかったから成功したのです。

官僚は優秀だという固定観念を捨て、官僚と距離を置き、正しく動き、正しい結果を生み出しているところから学ぶ。 このことこそが、日本を再生させる最善の方策であると私は考えます。

さて、数日前までこの投稿を論談への最後の投稿にし、今後は出版や執筆活動などを通じて、日本社会をより良い社会にしていく活動をしていきたいと考えていましたが、状況が変わりました。

言うまでもなく、状況の変化は小沢一郎民主党代表秘書の逮捕によるものです。 私は、この国には政権交代が必要と考える論者の一人です。 私は民主党員ではありませんが、民主党の議員とはよく議論します。 また、民主党の議員に限らず、共産党の首長候補の選挙を支援したこともあります。

できるだけ中立な立場で今後もこの論談に投稿していきたいと思います。 もちろん、論談の維持発展のための寄付行為も行っていく所存です。

今日も、長文をお読み頂きありがとうございました。