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おなじみの顔ぶれに加え、これからの活躍が楽しみな4人の「ステップアップ組」、久しぶりの復帰となるベテランなど、バリエーション豊かなライダーが参戦するMotoGPクラス。どんなシーズンになるでしょうか。 |
'09 MotoGP Rd.1 カタールGP ここが見所!-前編
'09 カタールGP 4月11日〜4月12日開催
山田宏 (ブリヂストン モーターサイクルレーシングマネージャー)
0.はじめに
いよいよ2009年のMotoGPが今週開幕します。今年も今週のカタールGPから、最終戦の11月8日バレンシアGPまで、全17戦の戦いが繰り広げられます。何と言っても我々にとって今年の一番の違いは、タイヤがワンメークになって全チーム/ライダーに供給するという事です。2002年参戦から6年目の2007年に念願のチャンピオンを獲得し、昨年は2連覇を達成することができました。しかし昨年の夏ごろからタイヤに関して色々と議論された結果、紆余曲折ありましたが、結局2009年から3年間当社ブリヂストンのワンメークに決定しました。
今年は全ライダー18人にタイヤを供給します。昨年までは勝つのを最大の目標にしていたのですが、今年は我々も頭を切り替えなければなりません。安全で安定した性能のタイヤを公平に供給する。これが最大の使命です。そしてタイヤの性能差が無くなった分、より接近したレースが展開される事を期待しています。今年もライダーの移籍が多く、またコスト削減を目的にテスト日数、練習時間の短縮や、マシンに関するレギュレーションの変更もありました。
それではまず、今年の見所をまとめてみましょう。
1.マシン
昨年12月に、カワサキが09年のMotoGP活動を休止すると発表しました。ホンダがF1撤退を発表した少し後だったのですが、我々にとっても非常に残念なニュースでした。しかしその後色々な話し合いが持たれ、結局ワークスという体制ではないものの、1台のカワサキマシンを走らす事になりました。ライダーは昨年ドゥカティから移籍した、M.メランドリです。マシンは昨年後半に開発していた09年仕様のものになるようです。
参戦5メーカーの中で一番マシンが変わったと思われるのはドゥカティでしょう。GP9と言われるマシンは、外観はそれ程大きな違いはないのですが、フレームが鉄からカーボンに変更されています。その他日本の4メーカー(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)については、外観上それほど大きな変更は見られませんが、特にエンジンの仕様などが変わっているようです。排気音が変わったメーカーもあり、エンジンに関しては色々変更があるようです。
2.ライダー、チーム
今年は11チーム18人のライダーが出走します。ルーキーを含め新しいライダーが4人参戦します。まずGP250からステップアップした、我らが高橋裕紀選手!GP250参戦3年目の昨年は、ホンダのライダーが二人しかいない中で大健闘。表彰台3回を獲得しました。昨年と同じチームスコットからホンダRC212Vに乗ります。同じくGP250からKTMで昨年3勝を挙げたM.カリオ選手。今年はドゥカティのサテライトチーム、プラマックレーシングからの参戦です。同じプラマックレーシングから、昨年ドゥカティのテストライダーをやっていたN.カネパ選手。まだ20歳で今年のMotoGP最年少です。そして新しいドゥカティのサテライトチーム「フランシスコ・フェルナンド」からS.ジベルナウ選手。ご記憶の方も多いと思いますが、彼は2001年から2006年までGP500/MotoGPに参戦していて、9勝を挙げています。2006年はドゥカティワークスで走っていましたが、2年間休止の後今シーズン復活してきた36歳です。
その他N.ヘイデンがレプソルホンダから、ドゥカティチームへ。A.ドビジオーゾがスコットレーシングから、レプソルホンダへ。M.メランドリがドゥカティチームから、カワサキマシンのハヤテレーシングへ。T.エリアスがプラマックレーシングから、古巣のサンカルログレシーニホンダへ移籍をしました。
3.スケジュール
今年は中国GPがキャンセルになり、代わりにハンガリーGPが9月に予定されていたのですが、これも先月になってキャンセルになりました。開幕戦4月12日カタールGPから、最終戦11月8日バレンシアGPまで全17戦となりました。また従来9月に行われていた日本GPが、4月26日の第2戦へと変更になりました。
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今シーズンから、タイヤはブリヂストンのワンメイク。「安全で安定したタイヤを公平に供給する」ことを最優先に考えながら、世界最高峰の二輪ロードレースをサポートしていきます。 |
4.レギュレーション変更
(1)走行時間
各チームのコスト削減の為に、昨年まで金・土の2日間で、1時間の走行が各日2回の4回で計4時間の走行があったのですが、今年は金曜日の午前中の走行が無くなり、3回の走行が各45分へと短縮されました。240分の走行が135分へと半分近くの走行時間になったので、チーム/ライダーはいかに短時間でレースへのセットアップができるかがポイントになります。
(2)タイヤ
ワンメーク化により、「今年一番大きく変わったところはタイヤである」と言えるかもしれません。レギュレーションは、ドライ(スリック)タイヤに関しては、フロント、リア共に2種類のスペックを全員に供給します。この2種類のスペックは、我々が決めて全員同じです。本数に関してはフロントが各スペック4本の計8本。リアが各スペック6本の計12本で、1人20本のタイヤが割り当てられます。昨年まで用いられていた予選タイヤはありません。
ウェットタイヤに関しては、各レースにはフロント、リア共1スペックしかありません。ライダーはフロント、リア各4本ずつ使う事ができます。(但し予選まで全セッションがウェットの場合、追加で1セットが供給されます)
昨年のレギュレーションでは、ドライタイヤが1人40本で、種類に制限はありませんでした。フロント3〜4種、リアは4〜5種のスペックを、ライダー毎に好みに合わせて準備していたので、ライダー/チームにとっては大きく変わったと言えます。今まではマシンやライダーの特性を考えて、我々がタイヤを合わせて供給していたのですが、今年、タイヤは全員同じなので、マシンとライディングをタイヤに合わせないといけません。とにかくタイヤの性能をいかに100%引き出すかが鍵となります。
ちなみに各ライダーへのタイヤの割り当ては、公平を期す為にFIMから派遣された人達が行う事になります。彼らがタイヤを選んでバーコード入力し、どのライダー用か判るステッカーを貼ります。その間我々はタイヤに触る事なく、彼らからデータだけをもらいます。走行中はピットに1人チェックの人がいて、バーコードリーダーで割り当てられたタイヤであるかのチェックを行います。
(3)マシン他
コスト削減によるマシンのレギュレーション変更は、第11戦のチェコGP(8/16)から最終戦第17戦バレンシアGP(11/8)までの7戦で、ライダー1人が使用できるエンジンは5基までとされるのが大きな点です。その他現在使っている技術ではありませんが、電子制御サスペンション・ラウンチコントロールの類の禁止等があります。
またシーズン中のテストに関しては、レース後の月曜日に行われる事後テストが2日のみ(6/15カタルーニャと8/17ブルノ)に短縮されました。(チームによりますが、昨年は7〜10日間程度テストしていました。)そしてメーカーが行うマシンの開発テスト(GPライダー以外でのテスト)についても制限が加えられ、タイヤの使用数が1メーカー年間240本までとなりました。
《後編に続く》