'09 MotoGP Rd.1 カタールGP ここが見所!-後編
'09 カタールGP 4月11日〜4月12日開催
山田宏 (ブリヂストン モーターサイクルレーシングマネージャー)
《前編のつづき》
続きまして、'09 開幕戦「カタールGP」の見所です。
5.カタールGPについて
中東のカタールでは2004年からレースが開催され、今年が5年目です。昨年MotoGP史上初のナイトレースが開催され、今年もカタールが唯一のナイトレースです。もの凄い数の照明塔があり、十分にコースは明るくなっていて、マシンの色が映えて綺麗です。
カタールという国は、アラブ首長国連邦の北にある半島で、人口約100万人で面積が秋田県とほぼ同じという小さな国です。カタールの首都ドーハから車で30分くらいの、砂漠の中にロサイルサーキットがあります。一周5.38kmのコースは、平均速度は170km/hで中高速サーキットと言えます。ストレートは1068mもあり、最高速は昨年ドゥカティが334km/hを記録しています。上海が無くなった今年は、ムジェロに次いで長い直線です。ストレート以外では、かなりテクニカルで、難しいコーナーもあります。ここの路面は、できた当初は非常に滑りやすかったのですが、年々良くなり、ラップタイムも向上しています。コースが砂漠の中にあるため、通常最初の走行時には路面が非常に汚れています。そしてレースは夜11時にスタート!通常朝9時スタートのプラクティスが、夜7時からで、通常2時スタートの予選が夜11時からと、金曜日から完全に夜型のスケジュールになるので、ライダーの体調管理も難しそうです。
また周りが砂漠の為日没後はどんどん気温が下がります。昨年は3月第2週で、約1ヶ月早かったので、今年は昨年より少し温かくなると思います。
◆以下、昨年2008年のカタールGP(Rd.1)のレースリザルトです。
■ MotoGPクラス 第1戦 |
ロサイル サーキット
3月 9日
Fine/Dry
5.38km×22周=118.36km |
決勝出走:18
/完走:17
|
Pos. |
No. |
Rider |
Tyre |
Team |
Machine |
Maker |
Laps |
Time |
1 |
1 |
ケイシー・ストーナー |
BS |
ドゥカティ・コルセ・チーム |
デスモセディチ GP8 |
ドゥカティ |
22 |
42:36.587 |
2 |
48 |
ホルヘ・ロレンソ |
MI |
フィアット ヤマハ チーム |
YZR-M1 |
ヤマハ |
22 |
42:41.910 |
3 |
2 |
ダニー・ペドロサ |
MI |
レプソル・ホンダチーム |
RC212V |
ホンダ |
22 |
42:47.187 |
4 |
4 |
アンドレア・ドビジオーゾ |
MI |
JiR チームスコット MotoGP |
RC212V |
ホンダ |
22 |
42:49.875 |
5 |
46 |
バレンティーノ・ロッシ |
BS |
フィアット ヤマハ チーム |
YZR-M1 |
ヤマハ |
22 |
42:49.892 |
6 |
52 |
ジェイムス・トーズランド |
MI |
テック3 ヤマハ |
YZR-M1 |
ヤマハ |
22 |
42:50.627 |
7 |
5 |
コーリン・エドワーズ |
MI |
テック3 ヤマハ |
YZR-M1 |
ヤマハ |
22 |
42:51.737 |
8 |
65 |
ロリス・カピロッシ |
BS |
リズラ スズキ MotoGP |
GSV-R |
スズキ |
22 |
43:09.092 |
9 |
14 |
ランディ・デプニエ |
MI |
LCRホンダ MotoGP |
RC212V |
ホンダ |
22 |
43:09.590 |
10 |
69 |
ニッキー・ヘイデン |
MI |
レプソル・ホンダチーム |
RC212V |
ホンダ |
22 |
43:14.941 |
|
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Pole Position: ホルヘ・ロレンソ
フィアット ヤマハ チーム/YZR-M1/ヤマハ
|
Fastest Lap: ケイシー・ストーナー
ドゥカティ・コルセ・チーム/デスモセディチ GP8/ドゥカティ
1:55.153
168.193km/h
14周 |
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■ロサイルサーキット 5.38km×22周=118.36km
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6.予選、決勝の見所
3月の1日〜3日までカタールで冬季テストがありました。その時は初日に何と雨が降りました。カタールでの雨は勿論過去に経験が無く、ウェットタイヤは準備していたのですが、コースが汚れた上に雨が降って、あまりのコンディションの悪さに結局誰も走りませんでした。
テストの2日目、3日目は十分なテストができたのですが、その時のトップタイムはC.ストナー、2位にJ.ロレンゾ、3位がV.ロッシという順位でした。
このコースはタイヤにも厳しいコースですが、夜のスタートで気温も上がらない為にタイヤの使い方も簡単ではありません。温まりやグリップを取るならソフトなのですが、耐久性を考えると厳しいのです。前回のテストではレース距離の耐久性も確認していますが、ミディアムスペックでは問題ない結果でした。ただ路面が汚れていてコンディションが悪かったので、今週は条件が変わる可能性があります。今回もテストの時と同じソフトとミディアムのスペックを持ち込みます。今年はワンメークタイヤによって予選の進め方も変わると思われます。今までは予選終盤に、予選タイヤを履いて1周だけのタイムアタックを、タイヤの数だけ(通常2〜3本)するのが普通だったのですが、今年は予選タイヤが無くなったので、いつアタックするのかはっきり判らないかもしれません。
また予選タイヤでのアタックは基本的に1周しかチャンスがなかったので、上手く行った時とそうでない時の差が大きかったのですが、今年の予選結果はほぼそのときの実力が出ると思います。ですから今年は予選結果でレースの展開を予想しやすくなるのではないでしょうか?
このコースはパッシングポイントが比較的多いので、多少グリッド位置が悪くても挽回可能です。ここではC.ストナーが2連覇していて、先月のテストでもトップタイムだったので、彼を軸にV.ロッシ、J.ロレンゾ、スズキの二人(C.バーミューレン、L.カピロッシ)辺りが注目でしょう。
7.タイヤ
前にも書きましたが、今回のレースにはフロント、リア共にソフトとミディアムの2スペックを持ち込みます。先月のテストで既に使っているので、チームは性能を理解していると思います。但し、その先月はMotoGPクラスしか走行しなかったので、路面コンディションも悪かったのですが、今週はもう少し路面コンディションが良くなる筈ですし、気温も先月よりは高くなるので多少変わる可能性はあります。先月のテストでは、気温も15℃程度まで下がったのですが、今の所天気予報を見ると最低気温は20℃程度となっています。
いずれにしてもタイヤは全員同じなので、いかにタイヤの性能を100%引き出すマシンセッティングにするかが勝負です。
ちなみに今年のタイヤは形状、構造は1種類で、コンパウンドを変えて全17戦を対応します。今の所フロントは4スペック、リアは7スペックで全戦をカバーする予定で、スペックに関しては、昨年の実績をもとに全員がどこでも乗れるように、許容範囲を広くするような改良をしています。そのため我々は2008年の終盤から、今年のスペックに取り掛かり、昨年の最終戦バレンシアGPの翌日からすぐにテストに入りました。昨年11月に2回、今年の2月から3回のテストを実施し、全員から今年のスペックの支持を得ています。
昨年は12人のライダーに対して、毎レース1000本〜1200本のタイヤを持ち込んでいたのですが、今年は18人に対してドライ用が360本、ウェット用が180本に予備を入れて600本程度と、かなり持ち込む数は少なくなっています。
今年も話題満載の2009年シーズンがいよいよスタートします。我々も今までと全く違う状況なので、別の意味で緊張しています。
今年は全員ブリヂストンを履いているので、誰を応援していいのか判りません(笑)!「必ず誰かが勝つので、プレッシャーは少ないんじゃない?」と聞かれる事がありますが、そんな事はありません。「安全で安定したタイヤを公平に供給する」という事はそう簡単なことではないのです。タイヤとサービスに対して、トラブルや不具合が無ければ良いのですが、何かあったらレースそのものを台無しにしてしまう可能性もあります。MotoGPを背負っているという意味では、昨年まで以上のプレッシャーがあるのです。今年は毎レース無事に終了して、白熱した良いレースが展開される事を期待しています。
カタールGPの決勝は4月12日(日)です。ご期待下さい。