奈良県立奈良病院(奈良市平松)の産婦人科医2人が、夜間や土曜休日の宿日直勤務に対し低額の手当ですませるのは違法として、04、05年の割増賃金など計約9230万円を支払うよう求めた訴訟の判決が22日、奈良地裁であった。坂倉充信裁判長は、県に時効分などを除く計約1540万円の支払いを命じた。宿日直勤務を時間外労働と認めた初の判断とみられる。
判決などによると、同病院は県内外からハイリスクの妊婦らを24時間受け入れている。原告は04、05年に1カ月当たり6~12回の宿日直勤務をした。勤務時間は宿直が午後5時15分から翌日午前8時半、日直が土曜休日の午前8時半から午後5時15分だが、その前後も恒常的に勤務が続いていた。
判決は原告らの宿日直勤務が「分娩(ぶんべん)の回数も少なくなく帝王切開も含まれる。救急医療もまれではない」として労働基準法上、割増賃金を払わなくてよい「断続的労働」とは認めなかった。割増賃金の根拠となる労働時間について「待機時間も労働から離れることが保障されているとはいえない」と宿日直開始から終了までが労働時間に当たると認めた。
原告側は、自宅で待機する「宅直」も労働時間に含めるよう主張したが、判決は「病院の指揮命令下にあったとは認められない」として請求を退けた。【高瀬浩平、阿部亮介】
毎日新聞 2009年4月23日 東京朝刊