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発信箱:オタク首相=与良正男(論説室)

 同じ土俵に上がりたくないが、どうも勘違いしているようだから書く。先の記者会見で麻生太郎首相がファッション誌を取り出し、「表紙の顔を見て名前が言える人?」「あゆ(浜崎あゆみ)、香里奈、エビちゃん(蛯原友里)といわれる人」などと得意げに語ったという一件だ。

 イチローが安打数の日本プロ野球記録を更新した時には水島新司さんの野球漫画「あぶさん」に話を転じ、「あぶさんっていくつ? 答えて」と記者団に尋ねて、「何だ、新聞記者っていうのはアレだねぇー」と上機嫌だった。

 私はあゆとエビちゃんしか分からなかった。あぶさんも年齢までは知らない。だが、「首相なのだからもっと別の知識や教養も身につけてほしい」と嘆きたくなったのは私だけではないはずだ。

 言いたいのはそれだけではない。アニメや音楽、ファッションなどが日本文化の底力だという首相は「2020年には20兆~30兆円の産業に育成したい。販路開拓や資金提供を一体的に行う組織を創設する」とも会見で表明した。

 あまり新聞は読まないという首相は、さぞかし新聞記者は古臭いと思っているのだろう。でも毎日新聞の社説でさえ(!)、例えば04年9月、「文化競争力を強化するには」と題してアニメなどのオタク文化を論じ、「日本文化の輸出競争力は彼らに支えられている面が大きい。もっとオタクに学ぶべきではないだろうか」と書いている。特段、新しい発想でもないのだ。

 支援は大いに結構だが、新組織とか言って役所がこうした分野に口出しし過ぎると魅力がうせるのが常。もしや、新たな天下り組織でも作るつもりか、と突っ込んでみせるのが今風の議論であろう。

毎日新聞 2009年4月23日 0時02分

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