東アフリカ・ソマリア沖の自衛隊の活動を念頭に置いた海賊対処法案は14日、衆院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りした。現地では海上警備行動に基づき、海上自衛隊の護衛艦が既に活動を開始。法案は「現行法の不備」(防衛省幹部)を補おうと、武器使用基準緩和や護衛対象の拡大などが盛り込まれた。15日に衆院海賊・テロ対策特別委員会で本格的な質疑が始まる。与党は月内の衆院通過を狙う一方、当面は修正協議などで野党側の出方をうかがうことになりそうだ。【仙石恭】
政府は3月に海上警備行動を発令、海上自衛隊の護衛艦2隻が同30日から民間船の護衛を始めた。新法案は海警行動をベースに、主に3点を付け加えた。護衛対象を日本関係船舶から「すべての船舶」に拡大。武器使用基準を一部緩和し、「警告に従わず接近する海賊船への射撃」を容認する。海警行動では規定がない国会への事後報告も義務付けた。
既に、護衛対象外の外国船舶から護衛艦が救援を要請される事案が相次いで発生。政府内には「制約の多い海上警備行動の出しっぱなしは、不測の事態を招きかねない」(防衛省幹部)と危機感がある。麻生太郎首相は14日の答弁で海警行動を「当面の応急措置だ」と強調し、法案の早期成立を求めた。
一方、民主党は14日の外交防衛部門会議で、国会の事前承認義務付けの他、政府が設置する「海賊対処本部」に所属する形で自衛官を派遣するなど4点の修正案を了承した。
政府側には「思ったより海賊対策は国民の支持を得ており、全否定はしづらいはず」(高官)と民主党の「足元」を見る向きもある。一部修正についても「事前承認にすればいい」(防衛省首脳)と前向きな声も出始めており、野党に対し余裕さえのぞかせている。
毎日新聞 2009年4月15日 東京朝刊