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毒物カレー事件:林被告の死刑確定へ…最高裁が上告棄却

林真須美被告
林真須美被告

 和歌山市で98年に起きた毒物カレー事件で、殺人罪などに問われた林真須美被告(47)に対し、最高裁第3小法廷(那須弘平裁判長)は21日、上告を棄却する判決を言い渡した。死刑とした1、2審判決が確定する。小法廷は目撃証言などの状況証拠を挙げ「被告が犯人であることは合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」と異例の言及をしたうえで「無差別大量殺傷の卑劣さ、残忍さは論をまたない。社会に与えた衝撃は甚大で刑事責任は極めて重大」と述べた。

 2審の事実認定を変えず死刑判決を維持する場合、最高裁は通常、量刑理由だけを述べる。社会を震撼(しんかん)させた一方で直接証拠の無い事件の特質を考慮して、事実認定の理由にも踏み込んだとみられる。

 弁護側は一貫して無罪を主張したが、小法廷は(1)カレーに混入されたものと組成上の特徴が同じ亜ヒ酸が自宅などから発見された(2)被告の髪からも高濃度のヒ素が検出され、付着状況から亜ヒ酸を扱っていたと推認できる(3)亜ヒ酸をひそかに混入する機会があったのは被告だけで、調理済みカレーの鍋のふたを開けるなど不審な挙動が目撃された--などの状況証拠を列挙し、有罪の根拠を示した。さらに「動機が解明されていないことは、被告が犯人との認定を左右しない」と述べた。

 そのうえで量刑の理由について「殺害された4人は何ら落ち度がないのに楽しいはずの夏祭りの最中で突如前途を絶たれ、無念さは察するに余りある。後遺症に苦しんでいる者もおり結果は誠に重大だ」と指摘し、「被告のために酌むべき事情を最大限考慮しても死刑を是認せざるを得ない」と結論付けた。

 林被告は1審で黙秘を続けたが、和歌山地裁は02年12月、死刑を言い渡した。2審では一転して被告人質問に答える形で無罪を訴えたが、大阪高裁は05年6月、被告側の控訴を棄却した。

 事件は98年7月25日、和歌山市の園部第14自治会の夏祭りで起きた。カレーを食べた67人が急性ヒ素中毒を発症し、▽自治会長の谷中孝寿さん(当時64歳)▽副会長の田中孝昭さん(同53歳)▽私立高1年の鳥居幸(みゆき)さん(同16歳)▽小学4年の林大貴(ひろたか)君(同10歳)の4人が死亡した。【銭場裕司】

 弁護団の話 この程度の証拠で有罪認定し死刑にするのは、無罪推定の原則に反しあまりにむごい。(被告は)再審に取り組み、無罪を証明したいと願っており、弁護人もその任を果たす決意だ。

 鈴木和宏・最高検刑事部長の話 適正、妥当な判決だ。

毎日新聞 2009年4月21日 15時12分(最終更新 4月21日 19時16分)

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