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きょうの社説 2009年4月22日
◎全国学力テスト 継続実施へ改善を重ねたい
小六、中三を対象に実施された全国学力テストが三回を重ねたことで、見直しを求める
声が広がってきた。多額の費用に見合う効果が見込めないとして廃止を唱えるのは、あまりに性急で短絡的すぎる見方としても、毎年実施し、学年全員が受ける必要があるのか、といった疑問点については今後、論点を整理すべき課題でもある。テストは国語、算数・数学の二教科で実施されてきたが、他の教科、学年にも拡大すべ きとの声もある。わずか三回で抜本的に変えるのは問題が多いが、見直し論議で大事なのは、子どもたちの学力向上につなげる視点である。 学力テストを機に、学校現場や教委で教育改善の工夫や努力が引き出されたことを考え 合わせても、客観的なデータを全国レベルで比較できる学力テストの意義は大きい。継続実施へ向け、見直すべき点は改め、よりよい制度にしていきたい。 石川県教委は今年度、金大の教員や優秀教員らで構成するプロジェクトチームをつくり 、正答率の高い学校の指導方法なども研究し、「学力向上プログラム」を作成する。富山県教委でも「とやま型学力向上プログラム」で研究拠点校を拡大するなど独自の取り組みを充実させている。過去二回の学力テストで全国平均を上回った両県だが、現状に満足せず、学力向上策を次々に打ち出す姿勢は評価できる。 全国の分析結果は九月をめどに公表され、三回の実施で相当のデータが集まることにな る。それらをどう検証し、現場に生かしていくか。活用する側の能力や工夫も試される。 昨年は大阪府や秋田県などで結果公表をめぐるトラブルも生じた。都道府県が市町村の 意向を無視して強引に公表に踏み切れば無用の混乱が生じ、自治体間の対立はテストを生かそうとする意欲にも水を差しかねない。 文部科学省の学力テスト実施要領は、市町村教委や学校が自らの判断で公表することま では禁じていない。石川、富山県では金沢、白山、富山、南砺の四市にとどまっているが、自主的に公表する自治体はもっと増えてよいだろう。
◎林被告の死刑確定 動機不明の幕引きは残念
毒物カレー事件で殺人罪などに問われ、一、二審で死刑判決を受けた林真須美被告の死
刑が確定した。被告宅で見つかったヒ素とカレーに混入されたヒ素を同一とする鑑定や、被告が一人でカレー鍋を見張っていた時間帯があるとの住民証言など、客観的な状況証拠を綿密に積み重ねて下された判断である。ただ、犯行の動機や目的については、ついに明らかにされなかった。事実調べの最後の 場とされる控訴審で解明されなかったのだから、予期されていたとはいえ、犯罪史上に残る無差別殺人の動機が未解明のままに終わるのは残念というほかない。遺族や被害者は、やりきれぬ思いだろう。 一、二審を通じて、動機を解明しないまま殺意を認定した判決には、司法関係者からの 批判もあった。しかし、那須弘平裁判長は、「被告が犯人であることは、状況証拠を総合することで、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に証明されている」と述べたうえで、「犯行動機が解明されていないことは、被告が事件の犯人であるとの認定を左右するものではない」と指摘した。 林被告は一審では黙秘を通し、二審では「ヒ素を混入する機会も動機もなかった」とし て無罪を主張した。検察側は科学鑑定によるヒ素の同一性の識別、目撃供述の信用性、保険金詐欺に絡む殺人未遂疑惑や地域住民とのトラブルなど動機に近い部分を含めて、状況証拠によって固めねばならなかった。入手困難なヒ素が被告宅にあり、それを一連の殺人未遂事件で使うなど犯罪性向が強い性格などを照らし合わせると、有罪の立証は合理的で、十分な説得力を持つ。林被告以外に犯人が存在するという偶然はまず考えられない。 検察側は、住民の冷たい態度への反感、「激高」が犯行のきっかけであるとした。証拠 採用されたテレビのビデオ録画では、真須美被告らが付近住民への不満を語る場面があったが、これは検察側の主張をある程度裏付ける内容だった。動機の解明に結びつく証拠だっただけに、もっと掘り下げても良かったのではないか。
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