|
☆★☆★2009年04月22日付 |
|
今月末から始まるゴールデンウイークの旅行客は国内、海外とも昨年を上回る見込みという。何が不況だろう。まあ、余裕のある方々はこの際大いに消費して景気を浮揚してほしいものだ▼仕事が減って時間的に余力が生まれた企業の中には、この際だから長期休暇にしてしまおうと、十日間以上を休みにしたところもあると聞く。生来が貧乏性だから、こんなに休みがあったら毎日をどう過ごすのだろうと他人事ながら気にかかってしまう。実はひがんでいるのかもしれない▼「働き蜂」とヤユされながら、せっせと生産にいそしんできた勤勉民族は、休みの過ごし方が苦手である。「習い性」というやつだ。仮に一週間の休みがあるとすると、その消化にもってこいなのが旅行だが、この時期どこも混雑するのが玉にキズ。近隣をブラブラするか、家でごろごろしているか、いずれ選択肢は少ない▼ブンヤ稼業は連休を許してくれないので十日はおろか、一週間の休暇も夢また夢である。交代で飛び石休暇を取るぐらいが関の山だが、これが国の基盤に沿った民族性の結果だろうと思う。つまり働かなければ食えない少資源国家の宿命として「遊べない」民族を生んだのだろう▼フランスでは一カ月もバカンスが取れるのに、日本ではなぜできぬのかという素朴な疑問に老爺は答えた。「海外で“荒稼ぎ”して富を蓄えてきた国と、労働が最大の資源である国との差だろう」と。それ以外説明がつかぬではないか。 |
|
☆★☆★2009年04月21日付 |
|
三陸鉄道の開業二十五年を祝う式典が宮古市であり、その祝賀会の席上で運輸、文部、財務大臣などを務めた「塩爺」こと塩川正十郎氏と会話をする機会を得た▼八十七歳という高齢を感じさせないかくしゃくぶりで、ダンディかつ大変な健啖家だった。もう引退はしているが政界の内情についてはアンテナを張っているはず。こちらも記者に戻って質問してみた。「今後の政局はどうなりますか?」「うん、七月解散だろうね」この卦がどう出るかは今後のお楽しみ▼選挙の結果については自民、民主おあいこ、いずれにしても過半数はとれまいという占いだったので、政界の再編成は大いにあるかどうかを質すと、「それは大あり」とのご託宣。そして一言「最近の議員はサラリーマン化している。骨がない」と切って捨て「ではさようなら」と愛敬を残して去っていった。枯れたようでまだ生では食えなさそうだ▼式には三鉄ゆかりの沿線各自治体から、引退した元首長たちも出席していて、フィルムのコマを戻したような錯覚にとらわれたが、これら「OB」が語る思い出話を聞いていると、確実に時間が流れていることを痛感させられた。大船渡高校が春の選抜に出場した時から四半世紀が経っているのである▼あの頃の当地はダブルの喜びであふれ、まだ景気も良かったのでみんなが将来に夢を抱いていた。それが今は下りだけの一方通行。早く上りの「ダイヤ」も組んでほしいもの。 |
|
☆★☆★2009年04月19日付 |
|
世界のイチロー≠ェ、またやってくれた。日米通算の安打数で、張本勲氏の持つ日本記録を更新する三千八十六安打を放ち、十八日は一般紙もこぞって一面で扱った。もはや超人の域の彼でさえ、先のWBCではあまり打てなかった▼しかし、みな「やってくれるだろう」と信じていた。その通りに、優勝決定戦で決勝の2点タイムリーを打った場面は、記憶に新しい。同じWBC組の松坂投手は、大リーグ開幕から二試合連続KOで故障者リスト入りした▼イチローも、そこからのスタートで記録を塗り替えたわけだが、この二人を考えると一度心も身体もピークに持っていった反動を思わざるを得ないし、そこまで本気にならなければ勝てないのがWBCだとも知らされた。数字がすべての世界では、勝利数の多い松坂投手が最優秀選手に輝いたが、内容では岩隈投手を推す声もあった▼とはいえ、仮に最後の場面で打てなくても、イチローこそ侍ジャパン≠フ陰の最優秀選手だったと思う。なぜなら、北京五輪で星野ジャパンが惨敗した時、「WBCはリベンジ(復讐)の場ではない」と、全く新しい体制で戦う覚悟を促したからだ。アジア予選から、率先垂範の練習姿勢もあった▼それでも野球発祥の地らしく、米大リーグにはまだまだ上がいる。最多安打男のピート・ローズには四千二百五十六本の記録があるという。だが、イチローはまだ三十五歳。「彼なら、またやってくれるだろう」と、日本の野球ファンはみな思っている。 |
|
☆★☆★2009年04月18日付 |
|
この時期を一口で表現するとしたら「桜花爛漫」の四文字に尽きるだろう。日本列島がことごとくピンクに包まれ、その下では「花より団子」で花見の宴が繰りひろげられる。外国人からみたら異様な光景だろうが、これが日本人の「まっとうな」姿か▼その「花より団子」だが、それは桜を愛する心があってのことで、だからこそ桜前線のうつろいや開花予想が「国民情報」として流されるのである。「国花」だからこそだ。ワシントンのポトマック河畔に東京市から贈られた桜並木が満開になった模様が先日のテレビで放映されていたが、その「花見」に数十万人が訪れるというのは、その美しさ抜きに語れまい▼驚いたのはこの花の気温に敏感なことである。先週の初め、つぼみが色づいてきたなと思っていたら、その翌日あたりあっという間に開花した。そして行く先々に桃色、いや桜色のタペストリー(装飾織物)が天空を背景に掛けられているのである。思わず息を呑む美しさとはこのことだろう。チューリップ畑も菜種畑もいい。しかし桜花の前には敵しない▼本居宣長の「敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花」は、そんな日本人の原点を述べたもので、「拡大解釈」され「悪用」されたという説もないではないが、もっと素直に読むべきだろう。この「山桜花」を山桜のことと捉えるべきか、それとも山と桜と分けて考えるべきか浅学にして知らない▼しかし山桜の楚々とした姿もそれなりだが、心を動かすのはどちらか。などと考えていると「団子」いや晩酌が気になりだしてきた。 |
|
☆★☆★2009年04月17日付 |
|
「辺幅を飾る」というのは、決していい意味に使われない。辞書を引くと「身なりや外見を立派に見せる」「見栄を張る」とあるように、中身を隠す古来からの便法の一つとしてよかろう▼だが、社会人ともなれば最低限の身だしなみは必要だ。就職の面接でジーンズにTシャツでは門前払いされるのがオチ。だからこそ昨日まではヤンキー(不良少年、青年)風のスタイルで通していても、面接ではリクルート(就職用)スーツを着用と一大“変身”するのは、辺幅を飾るのではなく、生活の知恵というものだろう▼以前、面接に立ち会った時、入り口の脇である応募者が持参の「面接用」に着替えていたと聞いてあきれたが、辺幅以前にこれは常識、心の持ちようの問題で、これでは採用しないで下さいと訴えるのと同然だろう。事実、この光景は目撃されていてこちらにはすでに耳打ちされていた▼辺幅は飾りたいが、あいにく先立つものがないからいつも着たきりスズメの当方は、ブランドものはおろかテーラーメードもまれ。ほとんど「ブランコ」で通している。それもたいていが「お仕着せ」で、しかも原産地は「外国」、というより途上国がほとんど。しかしこれで後ろ指をさされることもないから、満足している▼そのお仕着せ提供者である息子が買ってくれた百円ショップのネクタイが汚れたので、注意書きを無視して洗濯をしてみたら、ものの見事に“分解”していた。その「天晴れ」なこと桜の散り際を見る思いだった。 |
|
☆★☆★2009年04月16日付 |
|
春四月、北国気仙も桜花爛漫を迎えたところで、四月にちなんで四にまつわる言葉を探してみた。まず、「四月一日」と書く苗字があり、ワタヌキと読ませている。本来の綿貫なら合点がいく。四月一日は綿入れの着物を脱ぐ時節柄なわけだ▼苗字が出たところで、家紋にも触れると「四つ目紋」がある。布を染める時、つまみやすいように結んでおくと、目のような丸い染め残しができる。それをデザインしたのが目結い紋。源平合戦における宇治川の戦いで、ライバル梶原影季との先陣争いに勝った佐々木高綱が愛用▼高綱は四男のため、特に四つ目紋は佐々木氏一族の誇りとなった。中には十六目紋もある。その心は「四×四=十六」。獅子は百獣の王であり、十六目紋には最高家格の意が秘められている。大相撲では、各力士が互いに「四股」を踏む。もともと、強くて丈夫という「醜」が語源とか。そのため、シコを踏むことは邪気を払う儀式と説明される▼今も伝えられているかどうか、山口県が昭和六十年代にまとめた教育心得に「子育て四訓」がある。「乳児はしっかり肌を離すな/幼児は肌を離せ、手を離すな/少年は手を離せ、目を離すな/青年は目を離せ、心を離すな」▼黄色い帽子をかぶった新一年生たちが、元気に登校を始めている。大船渡市の猪川小や末崎小では双子や三つ子の入学も話題となった。今は、その安全と健やかな成長を見守りたいが、来年はぜひ「四つ子」も期待したいものだ。 |
|
☆★☆★2009年04月15日付 |
|
メディアでさんざん叩かれたので、いまさら後追いするまでもなかろうが、呆れてものも言えないという実例を見せつけられると、信じられないという以前に情けなさが募ってこちらも一言呈上▼東京都下水道局が新調した職員の作業服にワッペンを縫いつけることにした。ところがそのデザインが「内規違反」だというので、作り直した。その費用がなんと三千四百万円ナリ。それを知った石原都知事は「くだらねえ完全主義だ」と憤慨したとか。しかし、そんな「お役所仕事」を温存させた責任が知事にないとは言えまい▼知事は税金の使途について厳しくあたってきたはずだが、少なくともこれだけの金額を支出するには、知事決裁というものが必要だろう。その決裁も受けずに作り直すという裏に潜むものは何かを考えねばならない▼つまり率直に物を言えない空気というものがそこにはなかったかということである。これは単純にお役所の「杓子定規」と片づけられぬものがある。それは責任を問われることを恐れるあまり自己増殖する隠蔽、隠匿体質というものを「石原天皇」ですら改善できなかったということであるまいか▼「内規違反を犯してしまいました。作り直したらいいでしょうか?」とお伺いを立てれば、知事の性格からして「くだらん。そのままでいい」となるはずだ。だが、当事者たちは「後難」を恐れて切り出せなかったのだろう。このような体質にメスを入れない限り、「石原青竜刀」は「“怪”刀乱麻」の切れ味しか帯びまい。 |
|
☆★☆★2009年04月14日付 |
|
「日本の常識は世界の非常識」と言われるようになって久しいが、外国船が目の前で海賊船に襲われそうになった時、日本船もしくは日本向けの船舶でないという理由で救出、援護できないという非常識は、特大の「?」だ▼言うまでもなく、これが現行国内法の規定。ソマリア沖に自衛艦二隻を配備したはいいが、武器使用上の制約はともかく、自国船だけの保護でこと足りるという考え方はまさに「一国平和主義」の最たるもの。これでは世界中から尊敬されるどころか、軽蔑されるだけだろう▼どこをどうすればこんな解釈が出てくるのか、小欄にはさっぱり分からない。国際法であれ国内法であれ、その根本をなすのは個人法人を問わずその生命、生活、財産その他の安全を守ることであり、海賊にその安全を脅かされる事態になった船舶が目の前にいる以上、知らんぷりなど人道上絶対許されることではない。まさか人道より法というわけではあるまい▼このため、政府は海賊対策の法整備を急ぎたいとしているが、野党にはなぜか反対の声がある。そうしている間にも外国船舶からも自衛艦に護衛の要請が相次いでいるという「現実」が伝わってきている。当たり前だろう。そんな事態を想定しないで国内法の縛りに拘っている政治家たちがいること自体が不思議というものだ▼「人命は地球より重い」としてハイジャッカーの要求に応えた首相がいたが、それは「超法規的措置」だった。それならば、人道のためにこの措置を応用することだ。それが国として首尾一貫というものであろう。 |
|
☆★☆★2009年04月12日付 |
|
昨年の「平泉の文化遺産」世界遺産登録延期は、藤原氏による黄金文化を支えた気仙地区としても残念な報だった。が、価値が否定されたわけではなく、それを証明し、万人が納得するに足る調査研究さえ進めば登録はいずれ可能と受け止められた▼とはいっても、その証明が難物。関係者の対応を見守っていたところ、さきごろ世界遺産推薦書作成委員会が当初九つだった構成資産を五つに絞り込むことで意見を集約した▼すなわち、中尊寺、毛越寺・観自在王院、無量光院跡、金鶏山、柳之御所跡とし、残る白鳥舘遺跡、長者ケ原廃寺跡、骨寺村荘園遺跡、達谷窟の四つを外して、登録へ再挑戦するのだとか▼主題を「浄土世界」と「十二世紀の政治・行政上の拠点」の複合案から、より浄土世界を強調した案が適切との結論によるもの。国際記念物遺跡会議(イコモス)の審査が厳しくなっており、五つに絞って登録を確実にとの外国専門家意見も踏まえたという▼国史跡でもある四つは、平泉を構成する重要な資産。切り捨てたわけではなく、後年に追加する段階的な方法で登録を目指すことになるようだ▼世は「選択と集中」の時代。証明が難しいものにいつまでもこだわり、世界に理解を得られないまま次回再び延期となれば、事実上登録への道が閉ざされかねない。小欄としては、今回はこれでやむを得ないと思う▼四資産の関係者の心情を慮りつつ、景観や自然の保全、住民意識の高揚、通訳・ガイドの養成など、当面する課題の解決に意を注いでほしい。 |
|
☆★☆★2009年04月11日付 |
|
春は別れの季節。人だけでなく、サケ稚魚たちも巣立ちの時を迎えている。本県沿岸の主力はシロサケだが、秋口に回帰が本格化するため「秋サケ」の名で呼ばれる。その秋サケは、北から南下する親潮分枝に乗って回帰してくる▼しかし、本県沿岸には暖流があり、沖合には暖水塊が居座ることもあって、漁は海況に左右される。一昨年は県北沿岸が主漁場となったのに、昨年は県南の気仙沿岸が大豊漁となった。このサケの話をするのに「サケて通れない」のは越後(新潟県)村上の三面川▼今では母川回帰≠ェ常識のサケだが、それを発見したのは村上藩士の青砥武平次なる人物だという。武平次は、三面川にそ上するサケを観察する中で回帰性を確信。自然ふ化を促すため、「種川の制」を考案した▼これは川にバイパスを設け、帰ってきたサケの産卵を助ける世界初の自然ふ化システムとされる。明治期には、米国式の人工ふ化技術を日本で最初に採り入れたのも村上で、今日その技術の上にふ化放流事業が大々的に展開されている。春のこの時期は、放流された稚魚たちが川下から湾内へと進み、母川のニオイを脳裏に刻み込んでから長い航海へと旅立つ▼だが、三陸沿岸での回帰率は3%前後。日本海側の三面川に至っては、0・2〜0・3%程度だという。成長に、旅立ちは不可欠。サケ稚魚の回帰も、そして古里を離れる若者たちにも母なる川≠忘れず、一回りも二回りも大きくなって戻って来ることを念じたい。 |
|