ちなみに、村上実業の登記には、村上本人がずっと取締役として名を連ねている。公務員の兼業禁止規定に反する可能性も考えたが、村上が通産省在籍中に実質休眠となっていたのならば、大げさに騒いでもどうなるものでもあるまい。たぶん、「村上のルール」の中では問題ない行為だったのだろう。
83年、卒業と同時に、旧通商産業省に国家公務員一種資格で入省。同省在南アフリカ日本大使館一等書記官、通商政策局経済協力部アジア太平洋地域協力推進室課長補佐大阪APEC担当、通商産業研究所法令審査委員、生活産業局サービス産業企画官を歴任。M&Aにかかわる法整備や運用基準の策定を自ら行った。99年7月、株式会社M&Aコンサルティングを設立。代表取締役となる。
現在の家族構成は妻と中学生の長女、小学生の次女、長男に加え、0歳の次男と合わせて6人家族。子だくさん、ということで、M&Aでは悪名が高いが、少子化対策では実例を示して案外いい政策が出るのかもしれない。自宅は六本木ヒルズだったが(現在も使用中)、渋谷区南平台に実質村上名義の自宅を所有するという。
ちなみに、独立時に村上のファンドの大株主となり、現在もさまざまな交流があるといわれるオリックス・宮内義彦社長とは通産省時代から親交を深めた。通産省時代はM&Aの法律整備を行ったと公言する村上だが、ルールを作って自分がその恩恵に与るというのは、日本人が持っている謙虚さや美徳というモラルとは程遠い。
ただ、村上にそんな「モラル」などという言葉は通用しない。後述する法律の穴を突いた株の買占めなど、まさに法律を作った当事者が一番知っている手段で買占めを行っている。大体、モラルがあれば、公僕であった通産省時代に国民の税金を使って飯を食いながら、自らは退職後のための法の抜け道を作っていたと思われるようなことはしないだろう。
(つづく)
|