林真須美被告の死刑が21日、事実上確定しました。
「主文、本件上告を棄却する」
1998年7月、和歌山市で行われた夏祭り会場でヒ素が混入されたカレーを食べた4人が死亡、63人が中毒になったカレー毒物混入事件。殺人などの罪に問われた主婦、林真須美被告(47)は、一審では完全黙秘、二審では無罪を主張し続けました。
犯行を裏づける直接の物的証拠がない中、真須美被告は一審、二審ともに死刑判決を受けていました。そして21日、最高裁は、カレーに混入されたヒ素と真須美被告の自宅から発見されたヒ素の特徴が同じことや、調理済みのカレー鍋のふたを開けるなどの不審な行動をしていたことなど状況証拠を総合すると、真須美被告が犯人であることに合理的な疑いを差し挟む余地はないとしました。
「地域社会はもとより社会一般に与えた影響も甚大で、被告人の刑事責任は極めて重大。第一審判決の死刑の科刑は、当裁判所もこれを是認せざるをえない」(判決より)
さらに判決では、被害者について次のように述べました。
「被害者はいずれも何ら落ち度がないのに、楽しいはずの夏祭りの最中、突如として前途を絶たれたものであって、その無念さは察するに余りある」(判決より)
「この判決を聞くために傍聴もしたし、自分なりに頑張ってきたつもりです。その瞬間には、すごくやっぱり涙があふれて」(娘を亡くした鳥居百合江さん)
「私どもの気持ちとしては、速やかな刑の執行を望んでます」(息子を亡くした林雄二さん)
また、犯行の動機が解明されていないことについても、真須美被告が犯人であるとの認定を左右するものではないと判断しました。
「今回の最高裁の判決も、一審のつくりあげていった有罪の証拠構造そのものを是認した上で、従って、死刑を言い渡した一審判決を支持したものですから何の問題もないと思います」(甲南大学法科大学院・渡辺修教授)
林被告の夫健治さんは、自宅で判決を知りました。
「こういう判断が出ることは、当初から予期していたんで」(林健治さん)
自ら最高裁に出廷したいと訴えながら認められなかった真須美被告。判決後面会に訪れた弁護士から上告棄却を知らされても、取り乱すことはなかったということです。
「無実なのに国に殺されたくない。だからあくまでも闘っていくと」(面会した林被告の弁護士)
4人の命が奪われた11年前の夏祭り。ヒ素を混入した動機は最後まで明らかにならないまま、真須美被告の死刑が確定します。(21日17:53)