和歌山カレー毒物混入事件 最高裁が上告棄却、林 真須美被告の死刑確定へ
和歌山カレー毒物混入事件の発生からおよそ11年、最高裁は、無実を主張する林 真須美被告の上告を棄却した。
和歌山カレー毒物混入事件の遺族たちが21日午後、心境を語った。
遺族の鳥居 百合江さんは「そんな動機もわからないまま、あの子が逝ってしまったということは、とても受け入れることができません」と語った。
遺族の谷中 千鶴子さんは「今まで、この判決を聞くために過ごしてきたという感じです」と話した。
遺族の林 雄二さんは「仏壇に、きょう帰ってまず報告してやりたいのは、11年の長かった期間ですけども、刑が確定したと」と語った。
直接証拠がない中、最高裁は上告を棄却し、1審・2審に続き、死刑を言い渡した。
判決の日を迎えた21日朝、夫の林 健治さんのもとに、1通の手紙が届いた。
健治さんは「真須美から(の手紙)ですね。今までわたし、真須美の手紙なんて持ってませんもん。もう、こちらが打てども打てども、1つも返ってきてませんから」と話した。
裏には、ピンクの蛍光ペンで「HELP ME(助けて)」の文字があり、差出人は、林 真須美被告自身だった。
健治さんは「まだ(封を)破ってないので、中に何が書いてあるか知りませんけど。ここにマスコミが来ていることは、おそらく真須美は把握していることやろうし。かなりの気持ちが入ってると思うんですけど」、「とりあえず判決が出て、自分の思いをおたくら(マスコミ)にぶつけてですね。おたくらが帰ったあと、手紙を見てですね...」と話した。
そして午後3時、判決の時を迎え、最高裁は1・2審と同じく死刑判決を下した。
事件から、実に10年と9カ月、この最高裁の判断により、真須美被告の死刑が確定することになる。
事件が起きたのは1998年7月、夏祭りのカレーライスを食べた60人以上がヒ素中毒となった。
そして、当時16歳の鳥居 幸(みゆき)さん、当時10歳の林 大貴(ひろたか)君、自治会長の谷中考寿(たかとし)さん(当時64)、副会長の田中孝昭さん(当時53)の4人が死亡する過去に例のない事件へと発展した。
1998年10月、真須美被告は「2人の方がヒ素中毒であるとか勝手に報道する前にね、なんで事実確認・警察発表がなされてないのにね、どれだけの人が傷つき、迷惑を被ったか」と話していた。
逮捕された真須美被告は、その直前、安藤優子キャスターあてにたびたび電話をし、自らの主張を述べていた。
真須美被告は当時、「(1人でカレーを見張っていた時間があるのは本当?)見張られたというか、1人の方が帰って、ほんで次の方が来た時まで、本当に数分。(数分?)もう、20秒かなっていうくらいで。子どももみんないた」と話していた。
真須美被告は、一貫して無罪を主張し、動機は不明のまま、検察側は状況証拠を丹念に積み上げてきた。
事件からおよそ11年、真須美被告の自宅があった場所も様変わりしている。
被害者の賀川 司さんは「(向こうの景色は全部変わった?)これは違いますよね、公園になって。やっぱり、ここ(真須美被告宅の跡地)に来るのは、皆さん嫌がります。真須美被告の家ということもあるし、ヒ素が入っていたということもあるし、そういうのが、ちょっと引っかかるような気がしますよね」と話した。
事件は今も、地元の人々の心に暗い影を落としていた。
死亡した鳥居 幸さんの父親は「(部屋の中はそのまま?)ですね。あいつの乗っていた自転車は、古くなったけど置いてあるし。僕の中ではね(幸さんの死を)認めたくない」と話した。
21日の判決公判は、被害者の遺族も傍聴した。
その前で最高裁は、5人の裁判官全員一致の意見として、「死刑判決」を言い渡した。
犯行について、最高裁は「被告人が、調理済みのカレーの入った鍋のふたを開けるなどの不審な挙動をしていたことも目撃されていることなどを総合することによって、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度に、証明されていると認められる」としたうえで、犯行動機が解明されていないことが、犯人である認定を左右するものではないとした。
判決後、遺族の鳥居 百合江さんは「今でも、今でも(動機を)聞きたいです。なんでそういうことをしたのか。とても受け入れることができません」と話した。
死刑判決について、夫の健治さんは「こういう判断が出ることは、当初から予期していましたので。拘置所でそれ(判決)を聞いた真須美が、今どんな気持ちになっているか、まだ伝わっていないのか。わたし以上に悔しい思いで、きょうという日を迎えたと思いますね」と話した。
判決を受け、真須美被告は「わたしは、カレー毒物混入事件にはまったく関係しておりません。1男3女の母親として、このえん罪を晴らすために、これからも渾身(こんしん)の努力をしていきたい」とコメントした。
弁護側は、真須美被告の意を受け、再審請求を行う構え。
真須美被告は、判決のあとに「真犯人は別にいます」と、コメントであらためて強調している。
(04/21 17:21)