社説ウオッチング

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社説ウオッチング:小沢民主代表の進退 「辞任すべきだ」が大勢

 ◇「有権者を失望させた」--毎日

 ◇「党の統治能力も疑問」--朝日

 過去最悪の水準に落ち込んだ3月の日銀・企業短期経済観測調査(短観)。対立を回避して共同声明にこぎつけた主要20カ国・地域(G20)による第2回金融サミット(緊急首脳会議)。そして北朝鮮の「ミサイル」発射問題。内外の情勢が大きく揺れ動く中、日本の政治は漫然と時間だけが経過しているようだ。

 民主党など野党の攻勢が続いていた国会の様相が変わったきっかけは、もちろん小沢一郎民主党代表の公設第1秘書が逮捕・起訴された政治資金規正法違反事件だ。3月29日の千葉県知事選では、民主党など野党4党推薦候補が元衆院議員の森田健作氏に大差で敗北。報道各社の世論調査でも6割以上の人が「小沢氏は辞任すべきだ」と回答し、民主党の支持率も低下傾向にある。

 ◇政権交代にマイナス

 千葉県知事選などを受け、各紙は改めて社説で民主党を取り上げた。立場は異なるが総じて民主党への目は厳しく、小沢氏の続投を容認している社説は一つもない。

 「政権交代実現のためというなら、やはり、ここは小沢氏が身を引き、早急に新体制を作ることではないか」。3月31日の社説で再度指摘したように、小沢氏は早くけじめをつけた方がいいというのが、毎日の基本的な立場だ。

 理由は一貫している。小沢氏は起訴内容を否定しているが、少なくとも西松建設側は公共工事受注に際し何らかの期待があって献金したと供述している。便宜供与の有無はともかく公共事業に絡んでカネが動いたのは確かだ。

 「利権をめぐりカネと票が動く。これこそ政官業の癒着の本質であり、古い自民党の族政治そのものの構図ではないのか」「次の衆院選で首相をねらう民主党の代表が『古い自民党の体質そのままだ』と多くの有権者を失望させた責任は免れまい」

 小沢氏の秘書が起訴されたことを受けた3月25日社説で記したように、小沢氏の政治的責任はここにあるのではないだろうか。

 民主党に期待する声、政権交代を期待する声は依然、大きいというのも、再三、毎日が書いているところだ。

 小沢氏も次期衆院選で政権交代を実現するために「代表を続けることがプラスかマイナスか。国民の受け取り方次第だ」と会見で語っている。ならば、知事選や世論調査の結果を見れば、続投がプラスになっていないのは既に明らかであり、「進退問題を長引かせるほど期待は失望に変わっていくのではないか」(31日)というのが毎日の主張だ。

 ◇産経、一段強い批判

 朝日は25日社説で「小沢代表は身を引くべきだ」と大きな見出しを掲げ、31日は「何の見返りもなしに、あれだけ巨額の献金をしてくれる企業があるものだろうか。出所の怪しいカネまで受け取って、どんな政治活動をしようというのか。小沢氏の言葉をいくら聞いても、こうした基本的な疑問は消えない」と指摘した。

 続投を追認している民主党に対しても「対応があまりに鈍い」と批判し、「このままでは、党の統治能力そのものに深刻な疑問符がつく」と書いている。

 朝日と同様、25日に「小沢氏続投は通らない」とストレートな見出しを掲げた産経は、30日社説で「(千葉県知事選の)選挙中に小沢氏が最前線で指揮を執ることはなく、街頭演説にも立たなかった。代表続投が多くの有権者に容認されていないと自覚していたからだろう」「政治資金の透明化に積極的だった党のイメージは失墜した」と一段と批判を強めた。

 毎日と論旨が似ているのが日経だ。31日は「代表を続けることがプラスかマイナスか」という小沢氏の発言を同様に引用し、「その答えはすでに明らかだろう。小沢氏は厳しい世論を直視して、政治的なけじめをつける時が近づいているのではないか」と書いた。

 読売はかねて政治家の進退に関し「辞任せよ」といったダイレクトな主張はしない印象がある。千葉県知事選に際しても「最近の地方選挙で顕著だった民主党への“追い風”が、まるで吹かなかったようだ」「保守分裂という有利な状況にもかかわらず敗北したのは、小沢代表が事件後も続投したことなどによる民主党のイメージダウンが響いたということだろう」などの解説に多くを割き、自民、民主双方に「態勢の立て直しが迫られる」(30日)と注文をつけた。

 東京の千葉県知事選社説は森田氏への注文が主眼。ただ、25日社説では「世論は恐らく、小沢氏が感じているほど甘くない。思い切って代表を辞すことも決断すべきではないか」と書いている。

 ◇検察の捜査にも注文

 今回の事件は東京地検特捜部の捜査に対しても「公平・公正ではないのでは」など多くの疑問が寄せられているのが特徴的だ。

 毎日は25日、小沢氏の進退問題とは別に、捜査に関しても一本、独立した社説を掲載し、「(西松建設から)献金を受けた政治家側を洗いざらい調べてもらわなければ国民の納得は得られない」と与野党通じた捜査の徹底を要請し、「国民の疑念をぬぐい去るためにも、検察には節目節目で捜査の必要性を十分に説明してほしい」と求めた。

 捜査は今後、自民党側にも波及するのだろうか。進展次第で与野党の動きも、世論も変わっていく可能性がある。

 毎日新聞は「政治とカネ」の問題に関して、これまでも与野党問わず厳しい姿勢で論じてきた。日本の政治をどう透明にし、公正なものにしていくか。その視点を今後も貫いていくつもりだ。【論説委員・与良正男】

毎日新聞 2009年4月5日 東京朝刊

 

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