2005年7月7日(木) |
東北新幹線・新青森駅開業が迫る中、弘前市と県都を結ぶ重要な輸送幹線路・奥羽線が大きな後れを取っている。 奥羽線川部−青森間(約三一・一キロ)の複線化工事は運輸大臣認可を受けたが、一九八四年の新大釈迦トンネルが供用開始されて以来、凍結が続く。単線で運用がネックとなり、列車行き違いのための待ち合わせ時間が発生。冬季には列車一本がトラブルを起こせば、住民の足は重大な影響を受けてきた。 奥羽線複線化は旧国鉄時代からの悲願。既に新幹線開業の恩恵を受けた八戸市や、今後の青森市に比べ津軽の交通基盤は立ち遅れ、本県西側の振興策が取り残されている感もある。 複線化は第一義的には、旧国鉄から継承された鉄道事業者であるJR東日本が実施すべきものだ。東北新幹線の全線開業後には同路線の役割は一層、重要性を増す。均衡ある県土発展のためにも、新幹線の県都到着を最大限に生かすべきである。県をはじめ関係自治体に、JRとともに奥羽線対策を置き忘れることなく、しっかりと実践することを求めたい。 民間企業であるJRにとって採算性は最重要の課題。青森−弘前間の利用者は、九二年度の普通・快速列車の一日の輸送人員調査で七、二一四人。それが九九年度には六、一八〇人(輸送実績一〇〇対八六)と漸減した。JRは多額の投資を伴う複線化工事再開の状況にないとの認識とされ、新幹線の全線開通後は、列車の増結や増発で対応可能との意向ともいわれる。 青森−川部間の複線化は、大釈迦トンネル内が単線という弱点を抱え、県は二〇〇二年に「三百億円以上が必要」との試算を示した。工事再開には巨額な経費を要すが、このままでいいはずはない。 今、新幹線八戸駅開業を受け八戸・弘前間には「特急つがる」が走行中。弘前までおよそ百分。八戸から青森までは六十分余、さらに弘前まで三十分以上かかる状況で決して速くはない。今後新幹線が東京−青森を三時間でつなげば、青森−弘前間の迅速化が必要になる。 三十年近くにわたり、県に奥羽線複線化を最重点要望してきた弘前市だが、最近は「段階的にでも早期整備を」と要望。県も引き続き、待ち合わせ時間短縮を目指す「部分複線化」や、線形、路盤などの「軌道改良等」によるスピードアップ対策を検討する方向。新幹線全線開業時の利用増による増収も想定されるだけに、国を引き込んだ事業推進方法を具体化したい。 奥羽線をめぐって地域の住民や経済界には「新幹線・青森駅開業なら青森−弘前間をぜひ三十分以内に」「特急つがるは有効だが特急券が必要。青森−弘前間の快速は減り、今は一本。不便で非常に残念」「日本最高の人出を記録した弘前さくらまつりの花見客には、新幹線・八戸駅開業効果があった」「道路は延伸したが、夜間は列車が安心」との声もある。 長い間、国に陳情・要望を行ってきた自治体や議員団。セレモニー化した運動に消えた経費は膨大だ。北海道新幹線が着工した中で、あらためて県土の動脈、奥羽線を見詰めたい。 |