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コラム

染谷正弘氏による連載コラム。住まいのお役立ち情報や話題の街の文化・周辺環境などをご紹介します。

街の記憶:麻布十番・・・山の手の下町、都心の人気スポット入

つい最近まで麻布十番は、都心のど真ん中にありながらもほとんど陸の孤島だった。その麻布十番が、いまおもしろい。特に、麻布十番商店街。安くておいしいワインと上品な蕎麦が仲良く同居しているような雰囲気がとてもいい。

その昔、麻布十番商店街の人たちは日比谷線新駅の開業に反対し、そのかわりにできたのがいまの六本木駅だそうだ。その結果、六本木界隈は大変な賑わいをみせ、都心でも有数の繁華街に発展する。それを横目で見ていた麻布十番商店街の人たちは、おおいに悔やんだという。

でも、その陸の孤島になったおかげで麻布十番商店街は、よくある駅前商店街とは全く違う知る人ぞ知る都心の人気スポットへと成長していく。山の手で国際色豊か、しかも下町情緒があって心地よい程度に賑わう味わい深い商店街になった。

それが、2000年(平成12年)に営団南北線、都営大江戸線・麻布十番駅の開通、2003年(平成15年)に六本木ヒルズがオープンするや、麻布十番は一躍脚光を浴びることになる。そして、山の手のおしゃれな下町商店街へと、麻布十番商店街は一段と磨きがかかった。

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地下鉄『麻布十番駅』の4番出口を地上に出ると、小さな待合い広場がある。そこから六本木ヒルズに向かって600mほどの通りが、麻布十番商店街だ。

商店街に入り少し歩くと、すぐ右側に『スターバックス』が見えてくる。その店先の白いテーブルで犬を連れた普段着の外人がコーヒーを飲んでいる光景は、麻布十番商店街ならではのものだろう。

その真向いが、人気の焼き鳥屋『あべちゃん』。夏ともなれば縁台が歩道にはみだし、焼き鳥の煙とコーヒーの香りが渾然一体となってこの一画は、パリのオープン・カフェ顔負けの賑わいとなる。

その先に、老舗蕎麦屋『総本家・永坂更科・布屋太兵衛』が大きな看板とともに店を構えている。麻布十番には、同じ名前の蕎麦屋がほかにもう2軒ある。『麻布永坂・更科本店』、『総本家・更科堀井』だ。いずれの店も、老舗で更科系蕎麦の本家だと自称、というより主張していて面白い。それぞれ蕎麦の味も店の雰囲気も違うから、蕎麦好きの方はて食べ比べてみるといいだろう。

『総本家・更科堀井』まで行くと、六本木ヒルズのタワーが見えてくる。その隣にあるのが、たい焼き屋『浪花屋』。明治42年の創業だという。この店の屋号にも総本家という冠が大きく付いていて、一個のたい焼きにもなぜかありがたみがわいてくる。蕎麦を食べて、デザートにたい焼きの立ち食いがおすすめコースだ。

たい焼き屋の向かいが、あの知る人ぞ知る『麻布十番温泉』。鉱泉は、ミネラル成分を含んだ褐色無味無臭の重曹泉、500m地下からくみ上げられているという。ちなみに、温泉の湧く銭湯が南麻布にもう一軒『竹の湯』があり、東京のど真ん中に温泉が2軒もあってうれしい気分になってくる。 麻布十番商店街には、まだまだおもしろい店がたくさんある。慶応元年(1865年)創業の豆菓子の店『豆源』、世界水草レイアウトコンテストでグランプリを受賞したアクリウムショップ『GINSUI』、家族連れ外人客の多いラーメン店『萬力屋』、餃子と麻婆豆腐がおいしい高級中華店『登龍』、そして焼肉屋もたくさんあって麻布十番は韓国料理のメッカでもある。

最後に、ポケットパーク『パティオ十番』にある『きみちゃんの像』を紹介しよう。野口雨情作詞のあの『赤い靴の女の子』の名前がきみちゃん。いまの十番神社あたりに孤児院があって、彼女は9歳でそこで亡くなったのだという。つまり、赤い靴をはいた女の子は、異人さんに連れられてアメリカには行かなかった。この像には、日本がいまだ貧しかった頃のそんな悲しいエピソードが込められている。

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染谷正弘染谷正弘(そめや・まさひろ)
建築家 DSA住環境研究室代表 文化女子大学講師
戸建住宅や集合住宅の設計を中心に、住まいづくり、街づくりにたずさわる。
「コミュニティーをデザインする」という発想のもと、大規模集合住宅のデザイン・プロデュースを数多く手がける。
(株)DSA住環境研究室:http://www.ds-architects.co.jp