01 詐欺師たちのプロフィール

立崎泰(たちざきとおる)

 昭和20年札幌市生まれ。若いころは杉山と名乗っていたが、両親の離婚によって母の姓である立崎(崎は山+立+可)を名乗るようになる。このころから企業乗っ取りに手を染め、破綻させた会社は100社を下らないと言われている。みずからを「公家の末裔」と名乗り、その証拠として家宝の「国宝級の美術品」を見せて相手を信用させるが、この美術品は20年ほど前にとある旧公爵家から詐取したものだ。

 立崎の手口は、事業話を持って優良企業の社内に入り込み、経理を掌握して横領や背任を繰り返すというものだ。被害に遭った企業のひとつでは、メインバンクの口座から何度にもわたって立崎自身や愛人の銀行口座に不正な送金がされていた。ある意味大胆といえるが、徹底的に証拠隠滅を行うから犯罪の証拠を押さえるのは容易ではない。

 もうひとつ、立崎の犯行に特徴的なのは、徹底した信用破壊工作だ。事実、乗っ取られた企業のトップは立崎によって「無能な経営者」との噂をばらまかれ、取引先の信用を失って事業は破綻に追い込まれる。たとえ詐欺に遭ったと訴えたところで、巻き込んだ取引先の証言を得るのは困難だ。今回、私たちの取材によって初めて、立崎が破綻の元凶であることを知った関係者も多かった。

中村暢孝

 昭和20年生まれ。西友の幹部社員から関連会社社長を歴任し、ポッカコーポレーション相談役に就任。子会社のポッカクリエイト社長に在任中、不明朗な取引で会社に多額の損害を与える。ポッカ在職中からぱちモルガングループ各社の代表を務めている。

 中村がいつから詐欺に手を染めたのかはわかっていない。しかしポッカクリエイト時代の損害の一部は、ぱちモルガンと共謀した特別背任とされる。

 中村の手口は、金融機関からの融資話を持って企業に乗り込み、経営陣を外部情報から遮断したうえで、その企業や取引先の名前を利用して投資詐欺を行うというものだ。2003年には中国版権ビジネスを始めると称して十数億円を集めた。現在は台湾からの電子部品輸入事業への投資を募っているようだ。

柳沢博

 元安宅産業社員。安宅産業が破綻した後、妻不二子の勧めでフラワービジネスのベンチャー「ロイヤルフラワー」を設立する。同社はバブル末期に急成長し、フラワーアレンジメントスクール開設や海外からの花の輸入、百貨店チェーン買収などを進め、一時はベンチャービジネスの鑑と言われたこともある。全日空商事やポッカコーポレーションなどとも共同でビジネスを進めたが、バブル経済の崩壊とともに破綻。莫大な借金を抱えて逃げ回る生活が続いたという。

 借金まみれとはいえ、柳沢の生活は派手だったようだ。セミプロ級といわれるゴルフの腕を持ち、ジェフ山口らプロゴルファーとも親交がある。関係者の話によると、柳沢が行くゴルフ場では支配人もキャディも彼を大歓迎していたという。柳沢は有名企業の取締役など資産家をゴルフ場に招待し、こうした歓迎ぶりを見せつけたうえで「ゴルフ場買収のあかつきには役員にする」としてぱちモルガンの株式を売りつけていたことがわかっている。

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