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まちぶら

近衛通(左京区)

2009年03月16日

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京都大薬学部付属薬用植物園の内外では、ウメが白い花をつけていた

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発見2

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 学生が集う京都大を東西に横切るが、どこかひっそりとして、懐かしさが漂う。別れ、そして出会う春はもうすぐだ。

●近衛通●
 荒神橋東詰付近の川端通から、吉田東通まで東西を貫く。平安京の近衛大路が今の出水通にあたり、その東側の延長線上に位置する。

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◇静けさと懐かしさと◇

■発見1 花満ちる薬用植物園

 近衛通の南側には、京大薬学部の付属薬用植物園が広がる。2カ所に分かれた計約3千平方メートルの園地に、生薬などに使う約300種類の植物が育てられ、教育や研究に使われている。「有毒植物もある」と普段は鍵がかけられているが、園長の伊藤美千穂准教授(39)に特別に入れてもらった。

 どんな恐ろしい植物が生えているのかと思いきや、伊藤さんは「この時期は、ウメやサクラ、アンズなどの花が咲きます」。

 花や実を楽しむ印象が強いが、昔は薬用として使われたという。「梅肉には胃腸薬や滋養強壮の成分が入っています。乾かしたサクラの皮や、アンズの種の中の胚乳(はいにゅう)部分を抽出すれば、せき止め薬になります」

 黄色い花を咲かせるサンシュユやミツマタも春先を彩る。「春に活動が活発になるハチは、黄色を見分けられるからです」。園内の温室には東南アジアや中国原産の沈香(じんこう)や桂皮(けいひ)も植えられている。

 伊藤さんは「相手が生き物なので年末年始もなく世話が必要。台風や冷え込む日は休みも返上です」と苦労を語りつつ、「園は遺伝子資源を保存する役割も担っています」。

■発見2 「食堂」は文書館書庫

 楽友会館は1925年、京大創立25周年記念事業として建てられた。スパニッシュ様式の建物は、当時の前衛的な建築家で建築学科助教授だった森田慶一が設計。現在も2階が講堂や研究室として使われている。

 1階の入り口の左手に「喫茶食堂」の看板を見つけた。京大大学文書館の西山伸准教授(45)は「今でもたまに、『やっていないんですか?』と訪ねてくる年配の方もいます。楽友会館で結婚式を挙げた卒業生もいて、ここから料理を出していたようです」。今は文書館の書庫として使われている。

 鍵を開けてもらうと、広々としたホールに棚がずらり。事務書類のファイルなどが所狭しと並べられていた。帰り際、西山さんが偶然ドア付近のスイッチを押すと、看板から「じりじり」と音がした。「喫茶食堂」の緑と白の文字照明が浮かび上がった=写真。「私もつくとは思いませんでした」と、西山さんもびっくり。

 西隣の4階建ての「近衛館」にも、保存年限が過ぎた文書が京大の各部局から送られてくる。「毎年1万冊くらい運ばれてきます。京大の歴史がぎっしり詰まった貴重な史料です」

■発見3 近衛元首相の下宿先

 近衛通の東の突きあたりの吉田東通を北に進むと、重森三玲(みれい)庭園美術館=写真=に行き着く。昭和を代表する作庭家で、東福寺方丈庭園などを手がけた重森三玲(1896〜1975)が戦時中、吉田神社の社家・鈴鹿家から購入し、住まいとしていた。

 書院の前には、徳島産の青石を配した枯山水の庭があり、石組みにこだわった三玲としては珍しく、桜が2本植えられている。三玲の孫で同館長の重森三明さん(43)は「晩年の三玲が、家族に自分のことを思い返してもらいたいと植えたそうです。毎年3月末ごろから、見事に咲きます」。

 三明さんによると、鈴鹿家が近衛家の援助を受けていた縁もあり、京都帝国大学に通っていた若き日の近衛文麿・元首相が下宿していたという。美術館は事前に予約(075・761・8776)すれば、有料で見学できる。

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◇小路上ル下ル◇

■エビ人気

 近衛通から北上すると、京大会館の地下にレストラン「このえ」がある。料理長は、前身の楽友会館の食堂から勤めている小谷光弘さん(55)。大きい有頭エビのエビフライセットが人気だ。「楽友会館のころ、洋食はまだ珍しかった。『学生時代にはあこがれだった』と話す医学部の先生もいます」

■小鉢好評

 鞠(まり)小路通との角にあるのが京大生協南部食堂。麦が3分の1ほど入ったご飯にとろろをかけた丼が定番。種類豊富な100円以下の小鉢も好評だ。レジ担当の津川美栄子さん(58)は「バランスのよい食事を心がけている学生が目立つ気がします。健康への関心が高い若者が多いからでしょうか」

■職人の技

 革工房クレエは京大薬学部の門前にある。西川宏さん(69)が店を出して25年。ペンケースやポーチ、ヨーロッパの家を思わせる大型のハウスバッグまで、すべて手縫いだ。「10年以上は持ちます。遠方の人から修理の依頼もあります」。京大の合格記念にカバンを買っていく人も多いという。

■記録8年

 日替わり定食が人気なのが風媒館。夫の高田紀雄さん(66)が料理、妻の清子さん(60)がデザートを主に担当。夜は午後10時45分までで、遅くまで研究に励む京大院生らが毎日のように訪れるという。約8年間分の日替わりを写真とともに保存。「これ食べたと、懐かしがるお客さんもいます」

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◇立ち寄りスポット・味自慢◇

■映像ステーション

 昨年11月に開館した京大稲盛財団記念館の1階にある。アフリカなどでのフィールド研究の記録など、映像16本や記録映画2本が無料で見られる。日、月、祝日休み。問い合わせは京大総合博物館(電話075・753・3272)へ。

■京大相撲部

 京大稲盛財団記念館の東隣に、現在部員5人の相撲部のけいこ場がある。練習は月、水、木、土の週4回。もっか部員募集中。見学も可。

■近衛の石庭

 近衛中の前に、石を敷いて庭園に見立てた「近衛の石庭」がある。山下綾子教頭(52)らが育てた葉ボタンなどを並べ、木製の簡易ベンチもある。「お年寄りが東大路通のバス停まで出る途中、一息つきながら楽しんでもらえれば」

■銀座湯

 近衛中の南側で80年ほど続く銭湯。3代目の吉本照一さん(77)は「戦前、南側の通りに店がたくさん並んでいたので命名したそうです」。学生の利用も多く、日替わりの薬草風呂が人気。月曜定休。電話075・771・0620

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