あやうい高所得者層

勝ち続けることができるか

現在、勝ち組である高所得層は、今後10年安泰でしょうか? かつての社会主義国では共産党員であったり、いわゆる特権階級(社会主義は階級社会ではないのだけれど、資本主義国と比べて一般大衆との格差が大きい)であれば一生安泰でした。社会主義国陣営の崩壊により、旧共産党員のほとんどは路頭に迷うことになる(彼らはルーブルしか持っていなかった)のですが、この日本ではどうなるのでしょうか? 2006年7月に夕張市が財政再建団体を申請して、その後のリストラ策が示されているのは、対岸の火事でいいのでしょうか。高所得層であっても足元をよく見ないといけません。高い報酬は自分の能力によって担保されているのでなければ、高所得層から転落した場合、下手をするとホームレスになってしまう可能性すらあるのです。


10年後の日本(楽観シナリオ)

今後10年間、日本全体がどうなるのか、ニート・フリータ層の話で想定した極甘な未来より少し現実に近づけたい。2015年、日本は少子高齢化社会により、社会全体が時と共に縮小していく過程にあった。かつての経済大国は夕焼けのように消えつつある。1000万人の日本人が海外で稼ぎ、彼らの仕送りと海外からの観光客によって経済が回っていた。製造業の一部と、農林水産業と観光業は国際競争力を保っていたが、それ以外の産業は廃業か外国資本により買収され徹底的なリストラを迫られていた。その結果、所得格差は進み、年収1000万円以上の高所得層(1割)、500万円代の正社員層(2割)、300万円代の契約社員層(3割)、100万円代の低所得層(4割)という状況であった。かろうじて国家破産は現実化していなかったが、消費税は30%に達し、日本経済は低迷していた。老人国家日本は公務員・無職・学生・年金生活者と生活保護者によって財政はさらに悪化していた。このシナリオでも楽観シナリオなのですが、この水準で話を進めます。

(1) 製造業の場合
 日本の製造業は世界最高品質のモノを作り続けるが、国内生産から海外生産にシフトする動きは止まらない。日本での売上げが減少するため、日本に残存する社員を減らす必要がある。大企業の社員だとしても安泰ではない。代替不可能ならば300万円台の契約社員として生き残る可能性がある。
(2) 非製造業の場合
 衰退する日本で、売上げが減少スパイラスになる。円安が進むため輸入コストがアップする。厳しくなる競争を生き抜くため、製造業よりも厳しい人減らしが迫られる。仮に外国企業に買収された場合、看板は日本企業かもしれないが、中身は外国企業である。高いコストの社員がまっさきにコストカットのダーゲットとなる。
(3) 公務員の場合(教師や学者も含まれる)
 IMFが乗り込んだとき、実施されるであろうネバダ・レポート(日本再建プログラム)を再確認しましょう。国家破綻を避けるために腹をくくった場合、このプログラムが多少アレンジされて実施されることとなります。衆議院会議録情報 第154回 国会予算委員会 第10号として、ネバダ・レポートの要点が公開されています。五十嵐委員の発言から該当部分を引用します。

もしIMF管理下に日本が入ったとすれば、八項目のプログラムが実行されるだろうということを述べているのであります。 手元にありますが、その八項目というのは大変ショッキングであります。公務員の総数、給料は三〇%以上カット、及びボーナスは例外なくすべてカット。二、公務員の退職金は一切認めない、一〇〇%カット。年金は一律三〇%カット。国債の利払いは五年から十年間停止。消費税を二〇%に引き上げる。課税最低限を引き下げ、年収百万円以上から徴税を行う。資産税を導入し、不動産に対しては公示価格の五%を課税。債券、社債については五から一五%の課税。それから、預金については一律ペイオフを実施し、第二段階として、預金を三〇%から四〇%カットする。大変厳しい見方がなされている。 これはどういうことか。そのぐらい収支均衡というのは大事なんだ、経済を立て直すためには極めて大事なんだということを、世界の常識となっているということを示しているわけであります。

この発言がなされたのは、2002年02月14日です。今まで4年半以上の時間がありましたが、これほどきびしい政策は実行されていません。借金は相変わらず増えていますから、より深刻になっていると判断するのが妥当です。ことわざで「寄らば大樹のかげ」というのがありますが、強風で倒された巨木は内部が虫に喰われてしまい、空洞になっています。外見は堂々としていても実質が伴わないと、強風で倒されてしまいます。空洞とは何か? 国内の工場が海外に移転するのもそうですが、代替のきかない優秀な人が辞めたとか、仕事に対する意欲がなくなったのが理由となりましょうか。ソニーやトヨタなどで品質に関する深刻な問題が出てきています。ある組織が崩壊するのが間逃れない場合、能力がある人から先に去って行って、残る人はよほど義理堅い人か、組織の外では自力で立てない人です。自力で立てない人が組織から切り離された場合、再就職はきびしい。プライドが高く、所得水準は下げても就職先はみつかりません。職業安定所で紹介されるのは最低賃金水準であり、年収100万円代が大半です。就職先はみつからない。没落貴族のように、ここから先は転落の人生が始まります。しばらくの間は貯蓄を切り崩して対応できますが、底を尽きるまでそれほど時間はかかりません。家庭は崩壊し、住宅も手放す羽目になります。こういう厳しい状況のときに悪いことが重なるもので、病気になってしまうと、ニート・フリータ層と同じ境遇に立たされます。背広を着たホームレスになってしまう人もいるでしょう。高所得者はある意味、社会主義国の特権階級に似ています。自分が得ている高い報酬は何によって担保されているのか、よくよく考えなくてはいけません。組織にいた時は偉い肩書きがあっても、組織から外れたら、ただのおじさんなのです。

時代の変わり目で苦労する人々

時代が大きく変わる時、どういう人達が苦労したのか。1945年の敗戦から55年体制ができるまでの10年間を振り返ると、軍隊(公務員)の解散、財閥解体(大企業のリストラ)、復員兵が地方に戻って農業を始めた、公職追放(教師や学者の大量首切り)、100倍のインフレ、戦時公債と満鉄株の紙くず化などがありました。時代が大きく変わるとき、失業する心配がないと思われている、公務員・医者・教師・学者そして大企業の社員が、一番苦労しています。医者は患者が病院に行かなくなるからですが、その他の人達は、急激な変化に対して弱いからです。いまだに公務員の人気は高いのですが、財政難でまっさきに首を切られるのが予測できないのでしょうか? 理解に苦しみます。破綻した銀行員の方がマシだったと嘆く前に、本業以外の道を見つけるべきでしょう。時間はあまりありません。

橘みゆき 拝

【関連記事】
ネバダ・レポート(日本再建プログラム)について紹介しているHP
第154回国会 予算委員会 第10号 平成十四年二月十四日(木曜日)の議事録(衆議院会議録情報)
午後一時三分開議の後に五十嵐委員の発言があります。

アジア通貨危機

革命者

格差社会

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コメント

人のこと心配してるより自分のことだけ心配していた方がいい。人間というのは独立している存在でフリーターとかニートとか分類されるほど安っぽいものだとは考えていませんので。ブログで警告を発しても1人の人間の発言で何も変わりゃしないんだから。日本国憲法では13条で個人の尊厳・幸福追求権・公共の福祉について定めた条文がある。25条1項で生存権も定めている。机上の空論で高みから物を言っている暇が有ったら人の役に立つようなことを書いた方がいいと思います。個人は独立して思考するものです。

【参考:日本国憲法】
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第25条 ①すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

アメリカが作った憲法はソ連のようにそれが滅びた時にはどうなるのだろうか。

10年後の日本の「楽観シナリオ」を基に話を進められていますが、この「楽観シナリオ」はどのように弾き出されたのでしょう?

参院選を気にして、消費税の増税論議すら進まない、また雇用情勢も回復しつつある現状を見ると、私はこのシナリオが「楽観」シナリオとはとても思えません。
悲観的に考えても、ここまで増税、雇用の悪化は進まないと考えます。

「楽観シナリオ」を立てるのに使用したリソースを教えて下されば幸いです。

匿名さん、こんばんは。
今までうまくいっていたと信じている人は、今まで通りのやり方を続けます。外部環境が変わったらやり方の見直しをする必要があるのですが、どうにもうまくいかなくなると気がつくまで続けてしまいます。先のことを見据えて早めに路線変更ができる方は多くはありません。

陸遜さん、こんばんは。
ソ連が崩壊した時、東ドイツは社会の仕組みが根底から変化し、多くの方が苦労しました。スパイ活動をしていた外交官や市民を監視していた警察官などは、今までやってきた仕事が否定されてしまったのですから、たまったものではありません。日本も東ドイツのようにアメリカがひっくり返ったら一緒にひっくりかえりますから、数年間の混乱が治まった後は、今とまったく異なる社会に変化しているでしょう。憲法についてですが、宗教でいう経典とは異なりますから、時代の変化に応じて、そのつど修正していく形になります。

R.Hayaさん、こんばんは。

リソースは、素直にネバダ・レポートです。(消費税は高めに設定しました)
ネバダ・レポートが国会に取上げられたのは2002年2月です。2002年の時点で財政赤字を解消しようとすると、あれ位きびしい政策を実施する必要がありますよという提言でした。 財務省のHPで公開されている「国債及び借入金現在高」は、2002年3月末で約607兆3千億円、2006年3月末で約827兆5千億円です。わずか4年で220兆円も増えてしまいました。これでは、ネバダ・レポートよりも厳しいことをしないと財政再建はできません。楽観的未来といったのは、ネバダ・レポートに書かれていることを腹をくくって実施することになった未来を指しています。現状、そういう気配は全くありませんし、借金はどんどん増えていきます。自分たちの意思で解決せず、どんどん先送りすると、もうどうしようもなくなる時がやってきます。その際、実施される内容は、さらに厳しい内容となりますし、今以上に日本経済の体力は弱っているため、今は良くても、2002年に想定した悲惨な未来の方がましだったという事態となるでしょう。

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