<90年代から新型インフルエンザに興味を持ち、臨床医をしながら国際学会に出席、世界の議論を聞いてきた。日本では、強毒型鳥インフルエンザウイルス「H5N1型」だけが新型に変異するとの誤解がある。その誤解を正そうと、講演や報道を通じて訴えている>
H5N1型が人に感染するようになり、10年近くたっても新型には変異していない。新型インフルになる可能性は低くなっている。欧米で鳥から人への感染が確認され、死者も出ているH7やH9も警戒する必要があると、世界では議論されている。
新型が発生すれば数年以内に国民全員が感染するだろう。だが、新型はSARS(新型肺炎)とは違う。季節性インフルエンザの延長で、抗生物質と人工呼吸器で治療できる。スペインかぜ(1918年)による死者の95%以上はインフルエンザに感染し、免疫力が落ちて併発した細菌性肺炎が原因だったと最近分かった。重症化しやすい高齢者には、H5N1型をもとにしたプレパンデミック(大流行前)ワクチンより肺炎球菌ワクチンを接種してほしい。
また、流行時に特定の医療機関が一時的に感染者を診る「発熱外来」は日本だけの対策だ。休診を考える病院もある。欧米のようにすべての病院で対応しなければ被害は防げない。【聞き手・関東晋慈】
==============
■人物略歴
東京都出身。慶応大医学部卒。インフルエンザ研究で博士号を取得。日本鋼管病院小児科長を経て02年から現職。06年度に世界保健機関(WHO)鳥インフルエンザ薬物治療ガイドライン委員会委員を務めた。
毎日新聞 2009年4月21日 東京朝刊