海上自衛隊イージス艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故で、横浜地検は21日、衝突時に当直士官だった長岩友久・前水雷長(35)(3佐)と、衝突前の当直士官、後瀉(うしろがた)桂太郎・前航海長(36)(3佐)の2人を業務上過失致死罪などで横浜地裁に起訴した。
事故原因を究明した横浜地方海難審判所の1月の裁決(確定)は、前航海長について「事故との因果関係は認められない」としたが、横浜地検は、航行責任者2人のミスが重なったことが事故につながったと判断したとみられる。船舶などの衝突で事故前の責任者が、刑事責任を問われるのは異例。
海難審判の裁決は、長岩前水雷長が別の船の動きに気を取られて清徳丸の動静監視を十分に行わなかったことや、清徳丸の針路を避けなかったことなどを事故原因と認定した。
これに対し地検は、後瀉前航海長が見張り員を艦橋内に入れるように指示し、右前方に漁船群を確認したのに継続的な測定をせず、航行に支障はないと判断していた点などに注目。衝突の17分前からの5分間、長岩前水雷長に「前方の漁船群は危険なし」と引き継いでおり、こうした対応が、長岩前水雷長のミスとも合わさった「過失の競合」となり、事故原因になったとみている。2人は昨年6月、業務上過失致死などの容疑で書類送検されていた。
海上幕僚監部によると、艦船の衝突事故を巡り海自隊員が起訴されるのは、30人が死亡した1988年の潜水艦「なだしお」と遊漁船「第一富士丸」の衝突事故での元なだしお艦長以来となる。
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