2007-09-22
■[編集]原作ファンが支持するラノベマンガの作り方
今日は自宅で作家をカンヅメにする予定でしたが、プロットが遅れて来るのが明日になったので、一日家でネコと微睡んでいました。
さて。三木一馬がこのブログを見つけて宣伝してくれやがったせいで、検索してやってくる人がでてきました。
せっかくお越しいただいたのに読むものがないのは失礼ですので、予定を前倒しして多少なりと読める話を書こうと思います。
私は現在ライトノベル原作のマンガを6本担当しています(プロフィールをご覧ください)。いろいろ見たりやったりしてきた中で「これをやったらダメ」という経験則を4つほど発見しているので、これを紹介します。
(1)メディアミックスの都合で尺を決める
三等兵さんの「短・中・長編マンガの終わり方」というエントリに、小説本1冊はマンガの長編(3〜6冊)に相当するという話があります。
これは実際にそのとおりで、ライトノベル1巻に対してマンガ3巻分は最低かけないと、原作ファンが納得する密度のマンガは作れません。
アニメは1クールの作品でもライトノベル数巻分の内容を消化します。マンガになおすと10巻くらいになる分量です。これをアニメ放送の前後の掲載期間でまとめろとか、全3巻にしろとか言われてもどだい無理な話で、強引にやろうとすると省略だらけの原作ダイジェストに堕してしまいます。
最低でも1:3の比率は死守する。これは絶対です。
(2)リスペクトのない改編をする
原作物をやる時は原作ファンが買ってくれることをあてこんでいるはずですが、ファンを無視した改編をやりたがる人がいます。原作ファンは原作の話が好きだから関連商品を見るのであって、原作をだしに使った他人の自分語りなんぞは欲していません。
改悪された作品を、原作ファンは当然拒絶します。原作ファンから罵られる作品に新規の客がつくでしょうか? ついたとしてそれは原作ファンを犠牲にするに足るほどのものなのでしょうか?
原作ファンが称賛する。そしてそれを聞いた人が買って新たな顧客になる。それが原作物のあるべき姿です。
(3)絵で作家を決める
私が担当している笹倉綾人さんの「灼眼のシャナ」は、いろいろな人から「すごい! 似てる!」と言われますが、笹倉さんの絵はいとうのいぢさんに似ていません。連載を始めてから徐々に近くなっていっていますが、笹倉さん本来の絵柄はMARCYどっぐさんに近いものです。
ではなぜファンから似ていると言われるかというと、原作の絵ではなく空気が再現できているからです。
絵が似ているからとか、上手いからといった理由で作家を決めてはいけません。原作の空気をマンガで再現することのほうがずっと重要だからです。空気を描けない人間のマンガはすぐにメッキがはげます。
(4)1巻の内容を考えなしにそのままマンガにする
人気が出て連載が長期化してくると、原作やキャラクターのイメージが連載初期のそれとずれてくることがあります。
ライトノベルの1巻目は、それ単体でも成り立つように話を完成させなければなりません。また、作家が自分のキャラクターをまだつかめていないこともあります。
巻数が出ているシリーズをマンガ化する時は、シリーズのファンが改めて1巻の話を読んでも違和感を感じないように、そして初めて読む人がそのシリーズの持つ空気と面白さをきちんと体験できるように、話とキャラを調整すべきです。
何も考えずに漫然と序盤の展開をなぞるようでは編集者失格です。
この他にも細かいテクニックはいろいろとあるのですが、それは未来の自分にまかせることにして、今日はここまでにさせていただきます。