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ラノ漫 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-09-28

こちらスネーク、潜入に成功した

[]マンガ雑誌の落日(3)少子化・難解化・子ども向けマンガの減少は、マンガ衰退の原因か?

多摩坂です。「オススメ漫画“一作品”だけ挙げれ」と言われたら、杉元伶一加藤伸吉の「国民クイズ」を挙げます。

国民クイズ (上巻) (Ohta comics)

国民クイズ (上巻) (Ohta comics)

国民クイズ (下巻) (Ohta comics)

国民クイズ (下巻) (Ohta comics)


さて。現在発売中のサイゾー10月号がマンガの特集をしております。

サイゾー 2007年 10月号 [雑誌]

サイゾー 2007年 10月号 [雑誌]

個人的にはこの記事の中で使われている「コミックスマンガ誌の推定販売金額の推移」のグラフ吉田豪氏のマンガ家本解説、あとは田中圭一さんの手塚タッチの解説マンガあたりは面白かったのですが、マンガ市場縮小の原因についての分析記事がちょっとどうかなと思うものだったので、今日はこれについて書いてみます。


「10年連続でマイナス成長!! お先真っ暗!? なマンガ産業研究」と題した記事では、マンガ衰退の原因を「少子化」「マンガの難易度の上昇」「低年齢層に向けた作品の減少」の3点に求めています。


要約すると「ただでさえ子どもが減ってきている上に、マンガ子どもたちがついていけないほど難解化し、子どもが楽しんで読めるマンガを描く人もほとんどいなくなってしまったので、下の世代の新規読者の獲得ができていない。これがマンガ業界低迷の最大の要因だ」ということらしいです。


真っ先におかしいと思う点としては「新規読者の獲得ができていないことは、売り上げが増えない原因を説明はできても、売り上げが大きく落ちる原因を説明はできない」ということです。10年間で1000億円のマイナスという、市場規模の急激な縮小を説明したいのならば、新規読者ではなく既存読者が離れたことに原因を求めなければ説明がつきません。


マンガが難しくなって子ども向けの作品が減っているというのは、本来小中学生をメインターゲットとしている少年誌、特に三大週刊誌についてはそのとおりかもしれません。今の三大週刊誌は、マンガの文法を知らない子ども外国人にいきなり読ませても、読み方がわからないということが起こりうると思います。


しかしながら、この言説には少年誌より下の児童誌、今なお100万部の部数を誇るコロコロコミックや、プレコミックブンブンといった雑誌に対する視点が欠けていると思います。児童誌はマンガをはじめて読む読者のことを想定した、各話で独立して読むことができる、単純明快な作品で構成されており、難しいとかわからないといったことはないはずです。問題は「マンガが難しい」ことではなく「入口にうまく誘導できていない」ことにあるのではないでしょうか。


さて。サイゾー批判はこれくらいにしまして、ここからは若人をマンガ雑誌)に取り込む手法・手順について考えたいと思います。


まず大切なのは、幼少期に子ども本人ではなく、親の側に児童誌を買い与えるきっかけを作ってやることではないかと思います。まずここをクリアしないと、幼少期の刷り込みとしてのマンガ体験や、マンガを読む下地といった基礎が作れません。


ここを達成でき、子どもが次号も読みたいという雑誌が作れているならば、以降は子どもがねだる、あるいはおこづかいで買うという「マンガ誌を定期購読する」「日常的にマンガを読む」という習慣を根付かせることができます。


習慣が根付いたところで他の週刊誌や月刊誌にステップアップ。ここで大切なのは、面白さよりもむしろ移行する雑誌がより「大人っぽい」「かっこいい」ことではないかと思います。この点については現行の雑誌は問題なくクリアできていると思うので、たぶん心配はいりません。


習慣とは根強いものですので、ここまで誘導することができれば当分の間は惰性で雑誌を定期購読してくれるようになります。財政的な事情、あるいは前々回の記事のような心境の変化で定期購読をストップしたとしても、ここまで出来上がっていればその時々の気になった作品を単行本で買ってくれるようになっているでしょう。


若人を取り込むためには、なにはなくともまずは入口の充実を。そこからすべてが始まると考える次第です。

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